16話.絶え間なく訪れる戦火
力なく人狼が崩れ落ちる。
暫くは何とか生きようと足掻いていたが、やがてその動きも小さくなって行く。
「ふぅ……」
魔法のストックは使ってしまったが取り敢えず勝つ事が出来て良かった。
残りの杖は4本。残り時間は15分位だから……今まで以上に考えて使って行こう。
ポッキリと折れてしまった杖を鞄の中にしまい、新しい杖を取り出して自分の手に持つ。
手の点数は……82。お、ちゃんと加算されているな。
……ゾワっ。
…と思ったのも束の間、俺は背後に強烈な威圧感、もといオーラを感じる。
強烈なオーラの先には、
「噓……だろ…」
先程討伐した人狼よりも一回り大きく、俺が倒した人狼の黒い毛とは対照的に純白の白い毛が生えた人狼が立っていた。
胸元の数字は……100。
「…っ!」
明らかに俺が敵う様な相手じゃ無い。
俺は白毛の人狼から背を向けて逃げる……が、
「ちっ!」
三匹の人狼が俺の行く道を遮る。
……不味い、完全に包囲される形になってしまった。
計四匹の人狼の群れはじわり…じわりと俺ににじり寄って確実に俺を狩りに来る。
対話は……出来なさそうだ。人狼達の眼光は鋭く、冷血だ。
「…やるしか無いか。」
俺はこの状況を打破する為に杖に力を込める。
【……
杖から作られた水が地面に落ち、その水を起点として濁流のように水が溢れ出す。
人狼達にはこの行動は予想外だった様で、前方二匹の人狼が水に流され、包囲に穴が出来る。
俺はその穴を見逃さずに包囲から脱し、逃走した。
「撒けたか……?」
数分走り、人狼達が追って来て無い事を確認する。
……幸運にも逃げきれた様だ。
俺はホッと息をつく。
撒けて良かった、あのまま戦っていたら俺は恐らく負けていた。
それ程までに白毛の人狼から出るオーラは異質だった。
…閑話休題。気を取り直して他の魔獣を探して得点を稼ごう。
しかし俺が動こうとした時、
「えっ、ちょっ何!キャッ!」
悲鳴が森の中に響いた。
今度は何だ!?俺は何事かと思いながら、声がした方向に振り向く。
「はぁ……はぁ…」
声がした方向に視線をやると、俺を襲った人狼の群れがそこにいた。
「やばっ!」
俺は人狼達を見た瞬間、体を屈め近くの木の陰に隠れ、やり過ごそうと身を潜める。
…ん?誰かが襲われている。
「だっ…誰かっ、助けてください…」
女の子か?か弱そうな声で助けを求めている。
…無理だ、俺が加勢した所で勝てる相手では無い。残酷ではあるが、今はここを離れて他の魔獣を狩って得点を稼ぐべきだ。
「ひいっ……誰かっ…」
虚しくも声が森の中で霧散する。
…………。
「お願いっ…」
そして容赦なく人狼の爪は振り下ろされた。
…………っ!
気付いたら俺は杖を持って飛び出していた。
今まさに人狼から腕で切りつけられそうな女の子を抱きしめて押し出す。
「大丈夫か!?」
ああもう!何やってんだ俺!これじゃ今さっき人狼から逃げた意味が無い。
「あっ、あなたはっ…」
「話は後!今は取り敢えず戦うぞ!」
「あっ、はい!分かりましたケイさん!」
「えっ、何で俺の名前を……」
俺は振り向いて確認する。そこにいたのは……ルベラだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます