15話.高得点魔獣
試験開始から約十分経過。現在の持ち点は27点。
内訳は十点の魔獣を1体、五点の魔獣を3体、そして一点の魔獣を2体。
そこまで体力を消費することなく着々と点数を積み上げている。
懸念点を挙げるとするならば……高得点の魔獣が見当たらない事か。
ひたすらに暴れ散らかす様な魔獣なら見つけやすいんだがな……そうも行かないらしい。
「ったく何処にいるんだ……」
俺も結構走り回って探索しているが50点以上の魔獣は見ていない。
……あ、イノシシ発見。
「おらっ!」
慣れた手つきでイノシシを狩って得点を増やす。
コイツは結構楽だな、見つかってもただ突進してくるだけでそこまで脅威じゃない。
「これで32点…か。」
今はとにかく見つけた魔獣全部倒して得点を稼いで行こう。雑魚狩りでも得点さえ稼ぐ事が出来るのならそっちの方が効率的だ。
……とその場を離れようとしたその時、
「うああああっ!!!」
森の中に悲鳴が響く。
声からして……そこまで遠くない。誰かが襲われているのか?
俺は悲鳴がした場所へ走る。
「どうした!?」
「たっ、助けてくれ!!」
声の主の受験生は、魔獣に背を向けて逃走している。
「頼む!アイツを倒してくれ!」
「ちょ、おい!」
俺に気付いた途端、受験生はそう言って俺を置いて森の奥へと逃げてしまった。
魔獣は逃げた受験生に見切りをつけたのか今度は俺に標的を向け、戦闘態勢に入る。
「……これは骨が折れるかもな。」
その魔獣の特徴を簡単に言い表すなら……獣の要素が多い人狼だ。
そして胸の刻印には……50と刻まれている。
今までの魔獣とは違い、振る舞いから明確に知性があるのが分かる。
「50点の魔獣……望む所だ。」
俺は鞄に巻き付けてある杖を一つ取り、魔法を使う準備を整える。
人狼は俺が杖を持ったのが気に障ったのか、鋭い爪を俺に向けて襲い掛かって来る。
「シッ!」
俺は身を捻らせて何とか避けるが、息つく暇も無く次の攻撃が襲い掛かって来る。
……しかし、その爪は俺に当たることは無かった。
俺が咄嗟に杖を向けて魔法を打とうとした事が功を奏し、人狼は警戒して距離を取ったのだ。
「危ねぇ……」
コイツはヤバい。一瞬でも気を抜いたらその場で切り刻まれてしまいそうだ。
杖のストックは……あと五本。それまでに決着をつけなければ俺の負け。
……やってやる。点数的にもコイツを狩って他の受験生に差をつけて置きたい。
人狼が……動く。だが直接俺を狙おうとはせずに距離を置いての様子見……といった感じだ。
「随分と弱腰になったなぁ!」
俺は意表を突く様に人狼と一気に距離を詰める。
人狼は俺が急に攻めて来たのに少し驚いた様子だったが、直ぐに冷静さを取り戻し俺を迎撃する為に腕を振り下ろして対抗して来る。
しかし…人狼の動きは俺が奇襲を仕掛けた為か反応が遅く、人狼にコンマ数秒の無防備な時間が生じる。
俺はその隙を見逃すまいと人狼の胸に向かって渾身の魔法を放った。
【水魔法……
其方には、この魔法を教える。それは強く圧縮した水を一直線に放つ魔法…
……
その一撃は人狼の心臓を見事に貫いた。
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