11話.しかし、それではあまりにも
「痛ってぇ……」
俺は脇腹に水弾が直撃した痛みで悶える。アレ曲がるのかよ。完全に意表を突かれてしまった。
……グラフィンが倒れた俺に近づいて来て話をする。
「ケイ、着眼点は良かったが其方は儂の杖を取ろうとするあまり他の事が目に見えて無かったろう?」
「う……」
「それに儂は一種類も魔法しか使わなかったからその魔法しか使わないないと其方は思い込み、儂の懐に飛び込んできたな。」
……。
返す言葉も無い。全くもってその通りだ。
「思い込みは戦いにおいて最大の罠じゃ。以後気を付けなさい。」
「……はい。」
……魔術師は魔法を使うと言う特性上、どうしても近接戦は不利になりやすいとにらみ、俺は近接戦に持ち込んだのだが、グラフィンにはその思考を完璧に読まれてカウンターを食らってしまった。
……見事にグラフィンにしてやられた訳だ。
「早う立て。まだまだ始まったばかりじゃぞ?」
「言われなくても立ちますよ。」
俺はそう言って体を起こし、グラフィンの前に立つ。
痛みは……大分引いてきたな。
「よし、ではまた五分間……」
「グラフィンさん。」
俺はグラフィンが話すのを遮ってこう言う。
「次こそはグラフィンさんの杖奪って見せます。」
「……ほう。逃げるのではないのか?」
普通に考えて、五分間距離を取って逃げ続ければそこまで難しい訓練ではない筈だ。
水の弾丸注意深く周囲を見ていればそれ程脅威では無い。
……だが、それで良いのか?ただ逃げ続けて勝つなんて。
その行動は俺にとってあまりにも……
「つまらないので。」
どうせならグラフィンと戦ってみたい。ただ必死に逃げるなんてつまらないだろ?
「ほほっ……儂にそこまで啖呵を切るとはな……いいじゃろう、全力を出してやる。」
グラフィンから出る威圧感が一気に増す。
「直ぐに終わるんじゃ無いぞ?」
「……こっちの台詞ですよ。」
そしてグラフィンが杖を掲げ、同時に水の弾丸が俺に飛んでくる。
俺は横へ動いてそれを躱すが……弾丸は地面に刺さる事無く俺の方向へ追尾して来た。
「はっ!」
だが俺は追尾して来た弾丸を魔力で弾く。
そしてグラフィンの方へ目をやると……何やら呪文を唱えながら水の塊を作っている。
…!何か来る!
【水魔法、
グラフィンがそう言うと、その水の塊は地面に落ち…
「うわっ!なんじゃこりゃあ!?」
水の塊が落ちると同時に塊から水が大量に出て、俺を流そうと水が迫り来た。
その姿は……まるで全てを覆いつくす波の様に。
「やべぇ!」
俺は咄嗟に全身を魔力で覆って水で押し流されない様にするが、荒れ狂う波によってその魔力の膜は少しずつ削られていく。
「どうする……?」
現在俺は水の中。もしこのまま何もしなかったら魔力が途切れて終了だ。
だが……この水を抜けてもどうやってグラフィンに接近する?現状維持では魔力が切れてジリ貧になるし、何処かでアクションを起こす必要がある。
俺の今の手札は……魔力、身体能力強化、そして魔法の打ち消し…
この中から何か……何かグラフィンの意表を突ける作戦を……
考えろ、考えるんだ鳴海圭!
「……!もしかしてアレなら!」
俺はある作戦を思い付き、捨て身の覚悟でグラフィンの下に走り出したのだった。
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