10話.実戦訓練
…七日後。
「うん、これくらいなら何とかなるかもね。今までよく頑張った!」
「おっ、終わった……。」
俺はあれから三日で魔力で魔法の打ち消し、更にそこから体に魔力を纏わせる身体能力向上の基礎魔法を四日で習得。
その過程は……お察しの通りだ。
冗談抜きで何回も死にそうになるくらいにはキツかった。
「私が教えるのはここまでだから。あとはおじいちゃんに教えてもらってね。」
「ありがとう、セリル…先生。」
「………終わったみたいじゃな。」
そして今までジッと見ていたグラフィンが俺に近づいて話しかけて来る。
「ふふふ……ようやく儂の番が来たな。」
なんだろう、凄く嫌な予感しかしない。
「あの……今から何するんですか?」
山に籠って来いとか言われたらどうしようか。俺はグラフィンの不気味な笑いに身の毛がよだつ。
……しかし、グラフィンからの返答は意外なモノだった。
「……ケイ、入学試験はどんな実技問題が出ると思う?」
「え?」
予想もしていなかった質問に、俺は少し考え込む。
「えっと……派手な魔法を見せてその完成度を採点する…とかですか?」
「それでは今までの練習は意味ないじゃろう。」
……確かに。じゃあ何だ?受験者全員でバトロワでもするのか?
それとも今さっきやった基礎魔法の部分を見るのか?ああ、分からなくなって来た。
「実はな、儂も分らんのじゃよ。王立魔法大学校は試験内容を秘匿しとるからな。」
「では何故そんな事を…」
「……儂が言いたいのは、どんな試験のどんな内容にも対応出来る適応力のある者を学校は求めているという事。だからセリルは応用させやすい基礎魔法を教えたのじゃろう。」
「なるほど…」
「じゃから儂が教えることは一つ。」
ピュン、と俺の頬を水の弾丸が掠める。
「基礎魔法は使って良いから、儂の攻撃を五分間避け続けなさい。それが儂の訓練じゃ。」
……は?さっきの攻撃殆ど見えなかったぞ?
「そう心配するで無い。死なない程度には調整して遅くしてやるからの。」
「そうですか…はは……」
俺は苦笑いをして何とか誤魔化そうとしているが、内心は冷や汗ダラダラだ。
「ではそろそろ始めるぞい。」
グラフィンがそう言うと、水で出来た弾丸がこちらに向かって飛んでくる。
俺はそれを紙一枚で躱し、次の弾丸が来る前に体に魔力を纏わせる。
「お、そんなに早く魔力を纏わせられるのか。セリルとの訓練で中々に魔力操作が出来る様になったの。」
「お陰様でね!」
俺は弾丸を躱しながらグラフィンに啖呵を切る。
水の弾丸は俺に狙いを定めながら休む暇も無く次々と飛んでくる。
だが…直線的。
早くも俺は攻略の糸口を見つける。
弾丸は直線的に移動しており、発射の方向さえ見ていれば基本的に被弾の心配は無いと分かった為だ。
これは…行ける!
俺は弾丸の雨が降り止むのを刻一刻と待ちながら反撃のチャンスを伺う。
そして……今!
俺は弾丸が途切れた一瞬の隙を突き、一気に距離を縮める。
俺の目線は杖だ。杖さえ奪えばグラフィンは魔法が使えなくなる、そうすれば勝ったも同然。
杖に手を伸ばし、あと少しで俺の勝利が確定的になる瞬間、
「甘いな。」
グラフィンがそう言って、今まで直線的に動いていた水の弾丸が急に角度を変え、俺の方へと向かって来る。
「なっ…!」
咄嗟に魔力で受け止めようとするも、受け切れずに脇腹に直撃させてしまう。
「ぐっ……」
意表を突かれた攻撃により、俺は体制を崩して倒れたのだった。
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