8話.最強の金策

「どんな方法です?」


グラフィンのその問い方に俺は興味をそそられる。今の俺は魔法に飢えた獣だ。魔法を好きに使えるのなら大体の事はやる覚悟がある。


「……それは王立魔法大学校の生徒になる事じゃ。」


「魔法大学校?」


魔法大学校って多分魔法を学ぶとこだよな。

……でもなんでそこに入学する事が金を得る事に繋がるんだ?


「あの…何でそこに入学する必要があるんですか?」


俺は怪訝そうな顔をしながらグラフィンに質問する。


「それはな、王立の魔法学校は”大”と付くだけあって中々に特殊なんじゃよ。

……具体的に言うと学校全体が大きな同職ギルドの様になっておる。魔法大学校全体で魔法に関する依頼や研究、書物の販売をほぼ独占しておるんじゃ。」


「何故そんな事を?」


「……簡単に言うと金じゃな。魔法に関する事に税を掛けると莫大な金が手に入るのでな。」


魔法に対する特別税みたいな物か。この世界で魔法は生活必需品みたいな物だし、恐らく国はこれで相当な金を生み出しているんだろう。


「そして金を得られる理由にもなるんじゃが、魔法大学校は魔法を学ぶ事の他に実技科目もある。新しい魔法の研究をしたり、王国にとって害となる魔術師や魔法獣の討伐したり……まあ種類は様々じゃ。成果を出したらその難易度や貢献度によって国から報奨金が支給されるんじゃよ。」


「なるほど。」


魔法学校、今の俺にはピッタリな場所と言える。学校に行けばこの世界についての情報もより多く手に入れる事が出来るだろうし、もしかしたら研究で好きなだけ魔法を使える杖が作れるかもしれない。

……それにずっとグラフィンに養って貰い続けるのもあまり良い気がしないしな。


「じゃがな……」


「どうしたんです?」


「その……入学試験が難しいんじゃよ。」


入学試験……流石に王立学校なだけあって楽な入学はさせてくれないらしい。


「どのくらいの難易度なんですか?」


「……100人受けて10人受かれば良い方じゃ。」


倍率10倍……これは相当にキツそう。しかも相手は幼少の頃から魔法に触れて来た人達だ。

俺は様々な種類の魔法を使えるとはいえ、魔法に回数制限があって、未だに満足に魔法を使えてない俺との実力差はかなりのものだろう。


「…………入学試験はいつ頃にありますか?」


「今から丁度一ヶ月後じゃな。」


一ヶ月……。結構近いな。


「ケイ、大丈夫そう?」


セリルが心配に思って俺に声を掛けてくれる。


「大丈夫じゃないかも。……セリルは魔法学校受験したことあるの?」


「あるよ。私はもう今年の王立魔法大学校入学試験に推薦で合格してる。」


「え!?」


「だからケイがもし受験するってなれば全力でサポートするよ。」


マジか。ちょっと聞いてみようと思っただけだったのにこんなにも驚く答えが帰って来るとは。

……俺は自分の心と正直に向き合う。

俺は魔法学校に行きたいかと聞かれたら、行きたいと答えを返す。

魔法を自由に使ってみたいし、前の世界で出来なかった学校生活も楽しみたい。

俺の正直な気持ちを二人にぶつける。


「俺……魔法学校受験してみたいです。」


「常人には合格出来ないような難しさなのは理解してます。だから……迷惑が掛かると思うけど……二人で俺を合格出来る様に鍛えてくれますか?」


「……其方が受験するのはあの王立魔法大学校じゃ。そこに合格する為に鍛えるとなれば相応に厳しい物にはなるぞ?」


「…………覚悟の上です。」


「これは中々の大役を頼まれちゃったね、おじいちゃん。」


「ふふ、そうじゃな。これは久々に血が滾って来たわい。」


そして俺は一ヶ月間二人に鍛えて貰う事になった。

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