7話.良い知らせと悪い知らせ
「君、勇者だよね?」
「え」
俺は店主に思ってもみなかった事を聞かれ、その場に硬直する。
「君が勇者としてこの世界に召喚されたのであれば全ての辻褄が合うんだよ。」
どうしよう、これ自分の身分明かして良いヤツなのか?
……それにこの人は勇者について何か知ってるのか?勇者についての文献はそこまで残っていなかったとグラフィンが話していたが。勇者ですって言った瞬間に捕らえられるとか無いよな?
考えるだけ無駄だ。取り敢えずここは勇者だと言って置いて店主の反応を見よう。
「はい……そうですけど……それがどうかしたんですか?」
俺は警戒心全開で店主の反応を見ていたが、帰って来た答えは以外な物だった。
「やっぱりそうか……君が勇者ならば魔法について伝えないといけない事があります。……良い情報と悪い情報どちらから聞きたいですか?」
うわ出た。究極の二択じゃないか。
だがこう言う系の答えはもう既に決まっている。
「じゃあ……悪い方からお願いします。」
理由は単純で悪い情報をその後も良い情報で打ち消したいからだ。
まあメンタル管理だな。最後にモヤモヤしてしまっては何だかやるせない気持ちになる。
「ではまず悪い情報から先に言うと……君は魔法を使う事はほぼ出来ないと思います。」
は?いやいや……は?
「勇者の体と言うのは少々特殊でですね、君の魔力は別世界のエネルギーを持っているのかこの世界の素材でできた杖では君の魔力と杖が反発しあって杖が折れてしまうんです。」
「…………良い情報は?」
短期間でこんなにも大きいダメージを連続で受ける事になるとは。
……もう何も考えたくない。これ以上精神攻撃をされたら俺が壊れてしまいそうだ。
「では良い情報になりますが、君は強力な魔法をほぼノーリスクで使えると思います。」
「え?いやさっき魔法は使えないって……」
どういう事だ?今さっき言った事と真逆じゃないか。
「私は”魔法はほぼ使えない”と言っただけですよ。」
「つまり?」
「一発限りではありますが杖が折れる前に魔法を使う事で様々な元素魔法を使う事が出来ます。他にも対価が必要な魔法なども対価が体に及ぶ前に杖が折れるのでその対価自体を無かった事に出来ます。」
「え、強。」
「ただデメリットがありまして……」
「杖の値段が……平均して大体このくらいするんですよ。」
店主が俺に生々しく金額を書いてくれる。ええっと?一、十、百、千……
25000G。
確かその辺に売ってあったリンゴが300Gだったから……リンゴの値段を100円と仮定した時…………
約8300円。
あれ?これ魔法使ったら破産する?
・~・~・~・~・~・~・~・~
「あ!戻って来た!」
部屋から出て来た俺にセリルが気付いて、声を掛ける。
「どうだった!?」
「……セリル、俺借金する事になるかも。」
「……なんで?」
「……つまり、魔法を使う度に杖を新調しないといけないってこと?」
「……うん。」
「こりゃあお金がいくらあっても足りんな。」
俺達三人は店を出て、近くにあった喫茶店で話をしていた。
「それにしてもあの店主さん凄いよね。杖が折れただけでケイを勇者だと分かったんだから。」
「あー、奴は一昔前儂と一緒に勇者研究を行った仲じゃからな。儂と別れた後も個人的に勇者について調べとったんじゃろう。」
なるほど。やけに勇者について詳しいなと思っていたらそう言う事だったのか。
……?でも店主の見た目やけに若くなかったか?ぱっと見30代に見えたのだが。
「俺これからどうしよう……」
魔法も使えないと分かった今、マジで異世界に来た理由が無い。
……まあ最初の目的は達成している訳だが。
でも魔法と言う大きなケーキを食べられないまま異世界生活をするのは中々に酷だ。
「楽にお金稼ぐ方法とか無いかなぁ…」
金さえあれば魔法使い放題なんだけどなぁ。金、金、金……結局のところどの世界でも金って重要なんだなぁ。
……とそんな時、グラフィンのある一言に俺は一筋の光を感じる。
「ケイ、一つだけ方法があると言ったら、どうする?」
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