6話.君の魔法適正は……
「……おっと、珍しいお客様が来られましたね。」
「久しぶりじゃな。元気にしとったか?」
「お陰様で今日も元気に営業中ですよ。」
店の中は、暗い……と言うよりは案外明るい方だった。
俺は店主に軽く会釈をし、二人に付いて行く。
……ここは水晶を売っているっぽいな。高価そうな物から豪華に装飾のしてあるものまで種類は様々だ。
「……本日はどういった御用で此方に?」
「ああ、ちょっと魔法適性検査を受けにな。此奴の魔法適性を見て貰いたい。儂が買った水晶じゃ黒く濁って分からなかったからな。」
グラフィンは俺の方を指差して言う。
「魔法適性検査ですか……今頃になって何故です?ランゴバルドの国民は赤子の時に魔法適正を見られるはずですが。」
「その……此奴は少々特殊なのじゃよ。」
「主におじいちゃんのせいでね。」
それを聞いた瞬間、店主は少し考え込み、そして恐れおののいた表情でこう言う。
「まさか、人身売買……」
「違うわ!」
おお、予想していたかの様な素早い返し。
「……まあ冗談はその辺にしておいて、早速魔法適正を見ましょうか。えっと君は…」
「鳴海圭です。」
「ああ、有難う。ではケイ、此方の部屋へ。お二人は少し待っていて頂けますか?」
店主に連れられ、俺は奥の部屋に通される。
前の部屋からはあまり店主が占星術師とは思えなかったが、この部屋はそんな考えを吹き飛ばしてくれる。
サイコロ、タロットカード、そして宝石類……占いに使用されるであろう道具がこれでもかと並ぶ。
天井には星座を象った模様が描かれており、正にザ・占い部屋と言った感じだ。
「ではケイ、椅子に座って。」
椅子が用意され、俺はそこに座る。
「ケイ、今から魔法適正を見るのですが、その前にまず魔法と言う物はどういう物かご存知ですか?」
「あんまり分かんないです……」
「宜しい。ではまず魔法について説明しましょう。魔法とは体内から生産される魔素から魔力を抽出し、その魔力を杖によって具現化させる行為のことです。魔力量や魔力の性質は人によって異なります。」
まあ要するに体で生み出す電気みたいな物だな。熱を生み出すドライヤーもあれば、はたまた冷気を出すエアコンもあると。
「魔力の性質を判別する方法は主に水晶を使った方法です。例えば風の性質を多く持っていたら水晶は緑色に変色し、炎の性質を持っていたら赤色に変色します。」
「なるほど……」
だからグラフィンは黒色に濁ってしまって戸惑っていたのか。黒色が表す元素は存在しないからな。
「面白いのはここからで、稀に風と水、土と炎と言った二種類の性質を持つ魔力が現れます。その場合、前者は緑と青と掛け合わせた水色、後者は赤と茶色を掛け合わせた赤褐色になるのです。……でも実際は、二種類の性質を持つ魔力自体が珍しくて普通の水晶じゃ黒く濁り切ってしまいますけどね。」
「つまり俺は二種類の魔力性質があると?」
「水晶が黒く濁ったのであればその可能性が高いでしょう。厳密には例外も存在しますがね。」
まじか。ここに来るまではもしかしたら魔力適正が無いかもしれないと内心ヒヤヒヤしていたが、その考えは杞憂だった様だ。不安が一気に安心へと変わる。
しかも二種類の魔法が使えると来た。これは相当良いんじゃないか?
「……説明はこのくらいにして、あなたの魔力適正を見ましょうか。」
「お願いします。」
店主が水晶に向かって詠唱を始める。詠唱を始めると同時に水晶の色が変化し始め、水晶の中身が灰色の渦を巻く。
そして詠唱が終わると水晶の色が変わり始め…………え?
「黒……」
そこには、前にも見た水に墨汁を垂らしたような、薄い黒色が水晶を照らしている。
「これって……」
店主の方を見ると、口を開けて呆然としている。
「あ、あの……」
「少し考える時間をくれませんか?」
店主は考え込んで、何かに気が付いたのかはっとした表情になり、ゴソゴソとポケットの中を漁り始める。
「これを握って頂けますか?」
店主は俺に小さな1㎝程の小さな赤い宝石を渡す。
すると、宝石は俺の手に触れた瞬間に激しく発光を始める。
「次はこれを。」
今度は同じくらいの大きさの青の宝石を渡される。
……また激しく光りだす。
「やはり……では今度はこれとこれを。」
緑、茶色の宝石も激しく光りだす。
「もしかして……」
「そのもしかしてです。まさかとは思いましたがあなたには四大元素全てに適正があります。こんな人は初めてです……」
おいおいおいおい!!!マジかよ!
俺の中の心が咆哮を上げている。全てに適性あるのかよ!これ俺TUEEEE出来るじゃん!
「……少し実験をしてみましょう。この杖に火を思い浮かべながら魔力を集約して下さい。」
杖を渡され、俺はなんとなくではあるがゆらゆらと燃える火のイメージを作る。
ぽっ。
蠟燭の火の様な小さな炎が杖の先に生まれた……瞬間にぽきりと杖が折れる。
「あら。……折れてしまいましたね。代わりをどうぞ。」
「ああ……ありがとうございます。」
俺は店主が持っていたスペアの杖をもらう。
「では今度は水を思い浮かべる事は出来ますか?」
「やってみます。」
俺はまた、なんとなくではあるが水滴のイメージを作る。
ぽきっ。
「……あれ?」
今度は水滴が杖の先に出来る前に、杖が折れてしまった。
「あっ……ごめんなさい、また折れてしまって。」
それを見て店主がブツブツと独り言を喋る。
「おかしいな……その杖はあまり使って無かったはず……杖が経年劣化で壊れるにしても二本連続とかあるか……?」
もしかしてこの杖結構値段張る奴だった……?
そして数十秒程経った後、店主が俺に問う。
「君、もしかして勇者?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます