5話.王都到着、少しの寄り道

「セリル、ケイ、準備はできたかの?」


「アレと……これと……OK!準備出来た!」


「俺も大丈夫です。」


第一準備するものが何も無いからな。セリルの準備が終わるまで暇を潰していた。


「それじゃ、行くぞ。ええっと確かこの辺に……あった。ほいっとな。」


グラフィンは魔導書?の中から本の栞の様な物を取り出して地面に落とす。

その栞が落ちると、何処からともなく俺達三人を囲む様にして魔法陣が出現した。


「すげ……」


「転移する時に外には出るなよ?腕がちょん切られるぞい。」


ひえっ、結構怖い事をサラッと言うな。

俺は好奇心満点で魔法陣を触ろうとしていたが、それを聞いて行動が憚られる。

隣でセリルがくすくすと笑っている。……しょうがないだろ!そんなん言われたら誰だってビビるわ。



そうこうしている間に、魔法陣は光り出して俺達を包みこんだ。







・~・~・~・~・~・~


目を開けた先、そこはもう研究所では無くなっていた。


「着いたぞ。ここがサンガルド王国王都アルムベルじゃ。」


…凄い。中世的な街並みではあるが、そこに都会特有の人の賑わいや、魔法を使ったお洒落な装飾が、まるでこの街を生きているかの様に見せてくれる。

日本で例えるなら……洋風にした京都だな。


「それじゃあ占星術師の所へ向かうとするかの。」


「ちょっと待って!」


グラフィンが歩き出す…前に、セリルが呼び止める。


「ちょっとその前に……ちょっと買い物行かない?」


あーセリルが浮き立ってたのは多分コレだな。年頃の女の子だ、研究所の近くには無い服や生活品などを買いたいんだろう。


「儂は別に構わんが……」


「僕も大丈夫ですよ。それに俺も色んな所見て回りたいですし。」


丁度良い。服装、礼儀、日常生活……。恐らくその殆どは前の世界とは違う物だろう。買い物ついでにそれらについて知って置きたい。

受け身だけじゃなくて自発的にもこの世界に適応して行かなきゃな。


「よし!じゃあ決まり!まずは服屋にゴー!」


セリルに連れられ、俺は服屋に足を運んだ。







・~・~・~・~・~・~


「重い……」


俺は今、両の手に抱え切れない程の荷物を持っている。


「すまんな。セリルは王都に行くといつもこうなんじゃ……」


「はは……でも俺の服まで買って貰ったから文句は言えませんよ。」


セリルの長い買い物が終わり、俺達は今、占星術師がいると言う店に向かって歩いている途中だ。

……買い物をしていた中でこの世界について幾つか分かった事がある。

この世界のファッションセンスは前の世界とあまり変わらないらしい。……まあ、まるっきり同じかと言われたらそうではないが、大体のセンスは同じみたいだ。

そして、薄々気づいてはいたが、この世界は剣術より魔術の方が圧倒的に優遇されている。魔導書を宣伝している店は度々見かけたが、剣を大々的に宣伝している店は見当たらなかった。

グリフォンにそれと無く理由を聞いて見たところ、魔王が存在していた時は剣士はそれなりの数がいて戦場でもかなりの活躍をしていたらしいが、魔王が居なくなって平和になった今、剣術が上手いことは対して重要では無くなり、それよりも日常生活でも使えて見た目も派手な魔術が重要になっていったらしい。

この世界にも時代の移り変わりってのはあるんだな。


「お、そこじゃな。」


グラフィンが指差した先は中央の街並みから離れた脇道にある商店で、明るい王都周辺とは対照的にこちらは暗く、闇を抱えてそうな感じだ。


「邪魔するぞーい。」


グリフォンとセリルはそんな空気をものともせずに入って行く。

俺は少し身震いしたものの、二人の後を追って、その商店へと足を踏み入れた。

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