4話.絶望の中での微かな希望
「マオウ、モウ、イナイ……」
「ケイが壊れちゃった……」
あー、今絶望感がエグイ。もう放心状態だ。
いやまあ、死にそうだった所を助けて貰ったし……ね!この世界に来て良かったとは思うよ。
だけどさぁ!其方は勇者じゃ!!からの勇者必要無いですは流石にメンタル壊れるって!自尊心を最大まで上げてからの突き落としは酷いって!
「もう殺してくれ……」
「…おじいちゃん、これかなり重症だよ?」
「そ、そんな気を落さなくても良いでは無いか……」
「いや……そうっすよね……はは……」
役割のない勇者など最早ただのニートだ。60年前に召喚されて居れば魔王を倒すと言う役割によってそれなりに良い待遇は得られるだろう。
だが今はどうだ?魔王がもう居ない以上、勇者と言う職業は必要無く、冷遇されてお役御免だ。
「まあ召喚されたのは仕方ないとして、ケイ、これからあなたどうしたいの?」
「英雄になってきゃっきゃうふふされたい……」
勇者、歓迎、黄色い声援。そのどれもが今の俺にとって遠く見える。
「こんな痛い事まで言っちゃって……。まあいいや。おじいちゃん、アレ取って来てくれる?」
「……ああアレじゃな。ちょっと待っとれ。」
……アレ?アレって何だ?俺の中に残っていた微かな好奇心が俺に質問させる。
「何それ。」
「持って来るまでのお楽しみ。」
なんだそれ。
何だろうと言う疑問を持ちながら数十秒程待ち、大きな水晶を持ったグラフィンが戻ってくる。
「水晶?」
「そう、これは魔法水晶って言うの。自分の魔力の大きさを測ってくれたり自分に適正のある魔法元素について教えてくれる魔具。」
「何で今それを?」
「……落ち込んでたから。なんか元気付けてやりたいなって。」
あっ、俺を心配してくれたんだ。
「……ありがとう。元気出たかも。」
「そう、良かった。」
「では始めるぞ。」
グラフィンは水晶を俺の前に置き、魔法の詠唱を行う。
【水晶に宿りし光の欠片よ、
今、万古の時を越え、彼の者の魔力を示せ】
そう言うと同時に、水晶の色が変化し、透き通った水色から綺麗なオレンジ色へと変化する。
「おお……」
「わ、オレンジ色だ!凄いじゃん!訓練してなくてこの色を出せる人はあんまり居ないよ!」
そうなのか。俺はこの色がどれ位なのかが分からないので反応に困る。セリルが興奮しているって事はそれなりの色なのだろうか。
「では次は魔力適正を見るぞ。」
グラフィンがまた詠唱を始めると、今度は水晶が黒く濁る。水に墨汁を少量溶かした時の様な、少し濃いめの黒だ。
俺はグラフィンに質問する。
「黒色……は何の魔法が適しているんですか?」
「…………分からん。黒色は四大元素魔法以外の魔法か魔法適正が無い色じゃ。あの魔力量で魔法適正が無いとは考えられんが…」
四大元素?それって古代ローマの思想の世界は4つの元素で構成されて~って言う四大元素か?
確か種類は火・水・風・土だったはず。
「もしかしたら別世界から召喚されてるからケイは何か特別なのかも。」
「そうかもな。いや、そうだと信じたいが。」
これで魔法使えませんとかなったら俺泣くぞ。
……と、占いを終えたグラフィンが立ち上がり、俺に話しかける。
「王都にもっと精密に診てくれるとこがあるからそこに行くぞい。」
王都か。まあ俺も自分の魔法適正を知りたいし、この世界についての情報も知って置きたい。
「えっ!?王都行くの!」
セリルが今まで見た中で一番喜んでいる。王都に行くのがかなり嬉しいのか。
まあこの研究所はかなり辺境にあると言っていたし、都会に行けるってなると喜ぶのは当然ではある。
「よし、じゃあケイ、ちょっと待っとれ。」
そして二人は王都に行く準備を始めた。
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