彼女のほうだった
『妖精に関する記述』の書物に、前ほどの興味を抱けなくなっていることに気付いた。
もちろん、知らない世界が描かれた記述にはワクワクとするのだが、妖精の特徴であるとか、そういった【妖精】を指す記述に魅かれなくなっていた。
【妖精】。
住む世界線すら異なる別種族の彼女へ、言葉は通じるのか、常識は通用するのか、地雷処理みたいな心境を持ちながら、ある種の理性者のような
知の根本が違うと心得ていた。でもそれは、彼女もそう感じながら、まさに探り探り、話しかけていて。そして理知をもって、擦り合わせられるところをずっと探していた理性者は……彼女のほうだった。
あまつさえ、理性の剥げた異種族という怪物に歩み寄って手を差し伸べてくれたのは、彼女だった。それも、ある意味で化物と対峙するようにしていた俺と違い、透き通って純心なくらい、理知は同じものだと信じて。
誠実を尊ぶ妖精。
彼女のことが少し分かったような気がした。
今日も追っ手の影はナシ。最低でも五日は経ったこの時点で捜索の手が及んでいないということは、そもそも逃亡が目されている予測域から外れているのだろう。
【
妖精に関わる学習に飽きがきたからだろうか?
日の沈まない時間が、やけに長く感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます