紫のリナリア編第5話

それから数日間気まずくて会いに行けなかった。今まで風邪以外で1日以上会いに行かなかったことなかったのに。応援すると決めたからには距離は保たなきゃね!


「小夜先輩、大丈夫ですか?」


「あ!心配かけてごめんね!大丈夫だよ!」


今日は後輩の花梨ちゃんとご飯を食べている。私は友達が多い方らしい。


「小夜先輩はなにか悩んでるんですか?」


この大きな目が翔ちゃんに似てて一目惚れした。そして、過去に色々あって怖がりな花梨ちゃんに少しづつ仲良くなって今では結構話してくれる。


「うーん、好きな人は好きな人がいて応援したいなと思ってるんだ。だから、新しい恋をすれば忘れられるかなと思って。」


花梨ちゃんは目をパチパチと瞬きした後、首をコテンと傾げる。


「小夜先輩が好きなのって久東先輩ですよね?」


私は飲んでいたものを思わず吹き出す。


「あ!……ごめんなさい。」


花梨ちゃんは目をうるうるさせてる。この子人間不信だから態度は気をつけなきゃいけないのにやってしまった。


「あ!大丈夫だよ!怒ってないからね!」


優しく頭を撫でると少し落ち着いたみたい。


「それで、何で私が翔ちゃんを好きって知ってるの?」


「なんでって、雰囲気が?かな?

それに、久東先輩「ごめんね。今、翔ちゃんの恋の話は聞きたくないな。」」


花梨ちゃんは言いたそうにしていたが私の雰囲気が怖かったのか黙ってしまった。でもそれでいい。



「小夜!話しがあるんだけど。」


放課後、帰ろうかとしていたら、別のクラスの暁が珍しく私に用があって来た。でも珍しく顔を赤らめて目を私に合わせない。


「?うん。」


後を追って人気の無い所へ来たが、何分も喋らず頭をかいている。


「暁?」


「……。これを!貰ってほしい!返事をしてほしい!そこに書いてある!」


待っていると早口で告げて手紙を渡して走って去ってしまった。


「!」


手紙を開けるとそこには、告白の文が書かれていた。


『小夜へ

ずっと友達以上に気になっていて、なんでこんなに気になるんだろうと思ってました。

この間のお出かけで確信しました。

好きです。

小夜には久東がいるから迷いましたが、水族館での反応を見て勇気を出して書きました。

付き合ってください!

返事はいつまでも待ってるし手紙でも直接でもいいです。

暁より。』


暁は友達としてしか見てなかった。でも、付き合ってから好きになる場合もあるよね?どうしようと悩んでいる。

翔ちゃんの時より鳴らない心臓を無視して新しい恋に進むか考えている。



「翔ちゃん。久しぶり。」


色々考えてまだ答えは出ないけどさすがにこれぐらい日数、空ければ、友達だよね?と思って来てしまった。


「さっちゃん……。」


翔ちゃんは気を抜いてたみたいで慌ててテレビを消す。


「ごめんね!少し体調が悪くて。」


嘘だ。


「水族館楽しかったよね!翔ちゃんあの子と仲良くなれた?」


嘘だ。

本音は言えない翔ちゃんの想い人がいるときは。


「さっちゃん。どうしたの?様子が変だよ。熱でも……。

……!」


思わず翔ちゃんの伸びてきた手を叩いてしまった。やってからここまでするつもり無かったのにと後悔する。


「ご、ごめんね。

私、疲れてるみたい。

もう帰るね!」


変だ!さすがにこんなにあかさまなのは気づかれる。何も言われないうちに早く!


「あ!これ渡すね。

さようなら。」


慌ててお菓子を渡して部屋を出る。翔ちゃんの止める声が聞こえた気がしたが振り返らず帰った。


「あ!」

病室を出てから時間を見るためにスマホを見ようとしたら忘れてきたみたい!気まずいけど戻ろう!


「翔ちゃ、」


ガラッと扉を開けると不機嫌MAXで黒いオーラを纏っている翔ちゃんが居た。


「翔ちゃん?……あ!これ……!」


手にはお菓子を渡した時に落ちたであろう、スマホと暁からのラブレターが開かれていた。


「……これ。何?」


翔ちゃんは暁を恨んでるような、むすっとした顔で聞いてくる。


「これは、」


説明すればいいんだよ!暁からのラブレターで今なんて答えるか迷ってるんだよ!って。

でも、下手に発言出来ない空気が部屋中に広がっている。


「さっちゃんはこいつが好きなの?」


何でそんなに首を突っ込んで来るのかが分からない。翔ちゃんは逆に私から離れられて好きな子とくっつけられて幸せ!じゃないの?


「さっちゃん。ねえ。答えてよ。」


「放っておいてよ!私が誰を好きでも関係ないじゃん!」


思わず出てしまった言葉に、翔ちゃんは一瞬目を見開いたがまた黒いオーラを放つ。


「よくない!俺はさっちゃんの事が……

好きだから!」


翔ちゃんは明らかに思わず出た言葉ではなくやっと言えた様子だったけど、



私は今までのことを思い出し、とても信じられなかった。

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