紫のリナリア編第4話

私は帰ってきてすぐにベッドにダイブする。

ここまで言ったら翔ちゃんの恋を応援するしかないかな。私も翔ちゃんへの恋心を無くすために他の恋を見つけた方がいいのかな。


「プルプル」


電話がかかってきた。出ると今度みんなで出かけようというおっつんからの誘いだった。


「いいけど、翔ちゃん、居ないの可哀想だよね?」


『うん!翔が外出、出来る時にするよ!』


心配しなくてもさすが気の利くおっつん!


「ありがとう!」


電話を切って思ったが、翔ちゃんが居ると気まずいのでは?そう思ったがこれから恋愛感情を消すから慣れるために参加しようと思った。


今日はみんなで遊ぶ日。メンバーは翔ちゃん、翔ちゃんのイツメン、とっちゃんの仲のいい男友達、おっつんの仲のいい女の子の大所帯だ。翔ちゃんは前日会った時、イツメンだけじゃないの?と少し不機嫌だった。


「さっちゃん!こっち!」


私は少しだけオシャレをして向かうともうみんな揃っていた。


「お待たせ!ごめんね。待たせた?」


「ううん!まだ翔が来てないよ!」


こっちゃんがいつもの犬みたいな表情で話し始める。


「ねえ!乙音ちゃん!久東君が来るって本当?!」


おっつんの友達は翔狙いみたい。でも、人付き合い苦手な翔がこの子がいてもいいって言うならこの子が好きなのかな?でも、昔から一緒だったかな?


「小夜!やほ!」


こっちゃんの話を聞いてるととっちゃんと話していた子が近寄ってくる。


「あれ!?暁じゃん!」


この人は雲母 暁(きらら あきら)という私の仲のいい友達でもある。いい意味で女として私のことを見てなくて単純に友達としてとてもいい人だ。


「なあ!小夜、イルカショーあるか?」


そう!今日は水族館に行くみたい!ペンギンとかアザラシとかもちろんイルカも好きだから楽しみ!暁がるんるんとしてるのに私も釣られてさらにテンションが上がる。


「どうだろー?建物大きいからあるんじゃない?」


「おはよう。」


翔ちゃんが来た!私はいつも通り挨拶をしに近づこうとしてやめる。そうだ、今日はこの子とくっつけないと!私はスマホを見て気づいてない振りをする。


「お、おはよう!久東君!今日はよろしくね!」


「……よろしく。君、乙音の友達だよね?」


「そうだよ!よろしくね!」


その様子を聞いて自分で応援してるのに見ていたくない。翔ちゃんの顔を見れない。


「小夜?」


暁は顔を覗き込んできて私の顔を見て、肩を抱き寄せて私の顔をみんなに見せないようにしてる。暁……!いいやつだね!


「あ、さっちゃ「行こうぜ!紗夜!」」


暁は私に自分の上着を被せ顔を隠して私のペースに合わせて歩きだす。


「……大丈夫か?」


「うん。ありがとう。」


暁はその後もなんであんな顔をしてたのかは聞かなかった。こんなに暁ってかっこよかったかな?


「わあ!可愛い!クラゲも可愛いね!」


私は女の子2人と話していたがたまに暁とも話した。


「じゃあ、ご飯を買ってくる人と待ってる人とイルカの触れ合いのチケットを取る人とこれから行く場所の計画を考える人で分かれよう!ご飯買ってくるのは重いから男の子と着いていきたい女の子ね!」


時刻はお昼頃。やることが多くてみんなで分担するために話し合っている。どうする?と悩む。


「俺、待ち組で!」


そう言ってとっつんが手を上げる。あとは、おっつん、みっちゃん、こっちゃん、女の子、翔ちゃん、私、暁。


「じゃあ、僕とみっちゃん、買い物!」


こっちゃんはカワイイ系だけど力強いから安心。さあ、残ったぞ。私は頭を働かせる。ここはやっぱり……!


「じゃあ、さっちゃん、「なら私と暁でイルカのチケット取る人!」」


翔ちゃんはまだ照れてるのか私と一緒に居たがる。あなたはあの子が好きなんでしょ!頑張れ!という目でウインクする。


「じゃあ、私と久東君が計画考える?いいかな?」


「うん。」


なんだ意外と翔ちゃんも話せるんじゃん。私が居なくても。翔ちゃんの顔が見れなくて今日1日どんな顔をしてたか分からないけど、きっといい思い出になったよね!胸にナイフが刺さった音は聞こえないふりして歩き出した。


「じゃあ、私もさっちゃんについて行くわ。」


最後に残ってたおっつんが一緒に来てくれるらしい。心強い!私はおっつんの横に並び、歩きだす。


「さっちゃん、どういうつもり?」


歩き出すと暁と少し距離を置いて暁に聞こえない声でコソッと聞いてくる。


「何が?」


「なんで、あの子と翔をくっつけるの?」


「なんでって、あの子のこと好きなんでしょ?翔ちゃんは。」


おっつんが不思議に思っているのが逆に不思議。説明するとおっつんは顔を手で抑える。


「あのね。あの子はね、「小夜!あったぞ!」」


おっつんの続きも聞きたいがこれ以上、翔の好きな子の話は今日はお腹いっぱいだ。


「午後の部は午後からしか取れないけど取れて良かったね!」


イルカに触れることを喜ぶと暁は温かい目で見てくる。



「はあ。疲れた!」


結局、翔ちゃんとはほとんど話さず(というか私が避けてただけ)逆に暁と仲良くなった気がした。意外と翔ちゃんへの恋心って隠せるんだな。そう思った。


「あ、しおれてる。」

日課の紫のリナリアに水をあげようとしたらしおれていた。

でも仕方ないよね。もう終わりそうな恋だから。

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