紫のリナリア編第3話

「……え?」


頭をフル回転させて何とか口を開くまで私の中では何十秒にも感じた。


「やっぱり、知ってるんですか?」


翔ちゃんのことを『幼なじみ君』なんでハーデンベルギアのお姉さんぐらいしか言わない。だが、私の反応を見ても、顔色1つ、変えないのを見て何を考えているか分からない。


「……ハーデンベルギアのお姉さんですよね?」


「あら、なにか驚くこと言ったかしら?

この花の力かしらね。」


花屋さんは誤魔化してるが、確かに本人が知らないというものを聞いても解決しないだろう。そんなにこの花は凄いのか。と思いながらも何も言わなかった。


「最後に一言。この恋を手放さないで。」


その一言はまるで花屋さんの後悔の一言のように感じる。



「小夜!小夜!」


「あ、ごめん!なになに?」


学校にいることを忘れて、翔ちゃんのことをボーッと考えていたら友達に声をかけられていた。


「友達が呼んでるよ!」


呼ばれる友達なんて居たかな?と思って扉の方をみると、


「あ!みっちゃん!」


みんながザワザワしてる理由がわかった。それは学校1人気のグループの1人のみっちゃんが居たからだ。


「さっちゃん!今日みんなでご飯食べよ!」


「了解!」


何故そんな有名な子とお昼ご飯食べる仲かと言うと、翔ちゃんのイツメンだからだ。


「お待たせ!」


「大丈夫だよ!」

明るく人懐こい話し方をするが結構な臆病さんな『みっちゃん』こと、澪ちゃん。


「さっちゃん、翔の具合はどうだった?」

チャラそうな見た目をしてるけど、優しく真面目な『とっちゃん』こと、透君。


「ねえねえ!さっちゃん!今日ね期間限定のお菓子ゲット出来たの!」

明るく犬みたいな人懐こい性格をしていて甘いものが大好きな『こっちゃん』こと、康太君。


「さっちゃん……!私、会えるの楽しみにしてました……!」

穏やかで女神のようでゆっくり話して、このメンツの中では1番、人に気を使える『おっつん』こと、乙音ちゃん。


そして、翔ちゃん。この5人は仲が良くていつも一緒に居る。でも、私もよく混ぜてもらってる。


「皆ありがとう!私も嬉しいよ!」


今日は久々に皆と一緒にご飯を食べれた。5人とも忙しいんだよね。



「さっちゃん……、翔とは今仲良いの?」


おっつんが変わった質問をしてきた。仲はいいけど私の恋心バレた?!


「う、ん。仲良いよ!昨日も会ったし!」


「そう。

……翔が誰が好きか聞いた?」


おっつんは色んな人をよく見てるからか言わなくても一瞬で気づくから隠せない。ちなみに私が翔ちゃんを好きなのは、すぐにバレた。そして、それを聞かれていて、3人にバレた。だから、私が翔ちゃんを好きなのは認知済み。


「……聞いたよ。昔から好きなんだってね。」


「そう。それで付き合ったの?」


おっつんは分かりにくいが少し顔が緩んでいる。というか、付き合う?!


「何言ってんの?!翔ちゃんが好きなのは私じゃないんだよ?」


その言葉に各自、会話していたみんなの話が止まる。


「……なんでそうなったの?」


「なんでも何も、翔ちゃんが好きなのは甘いもの好きな子で、私じゃないから。」


oh……。と何故かとっちゃんが頭を抱える。なにか大変なこと言った?


「……そう。

……あいつは本当に馬鹿だわ。」


「おっつん何か言った?」


「なんでもない。

それで、さっちゃんはどうするの?大人しく指をくわえて見届けるの?」


おっつんの最後の言葉は聞こえなかったが関係ないことみたい。

見届ける、か。まだ迷っている。

翔ちゃんの背中を押すか、

私が自分の背中を押すか。


「さっちゃん、私は味方よ。

だから、応援するわ。」


「あ!僕も!」

「頑張れさっちゃん!」

「え、ええ……。頑張って……!」


4人とも応援をしてくれる。そんなにわたしの肩を持ってくれて感動しちゃうけど、翔ちゃんの気持ちはいいのかな?それとも叶わない恋?


「みんな……。

ありがとう。私、考えるね!」



「翔ちゃん!元気ー?」


どんなに悩んでいても体は勝手に翔ちゃんの元へ行ってしまうわけで、気まずいけど、普段通りを装う。


「元気だよ。さっちゃんも元気そうだね。

今日も可愛いよ。」


心が傷つく音がする。だって、可愛いねって言うのに翔ちゃんは好きな人が別にいるんでしょ?酷いよ。それなら言わないでよ。


「……ありがとう。」


「最近、さらに可愛くなった?」


それは本音?それとも好きな人への予行練習?

翔ちゃんは好きな子相手じゃないのにそんなに優しい顔をするなんてズルいよ。


「……そうかな?」


「もしかして、好きな人出来た? 」


気づかれた?なるべく様子で察知されないようにする。


「うん。」


私は唇を触りながら答える。


「もしかしてさ。」


まさかバレた!?私は慌てて、


「叶わない恋。だけどね。」


翔ちゃんへの叶わない恋を思って笑顔になりきれない笑顔を見せる。


「……そう。なんだ。」


なぜか大切なものを失ったようだ。この表情の意味がわからない。


「翔ちゃんも好きな子いるんでしょ?

応援するね!」


本当は応援なんてできないのにね。

私は右上を見た。

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