赤いゼラニウム編第8話
「はあ。」
陽太が帰ってから何時間も泣き続けて涙が枯れた頃にふと花を見ると、しおれていて花も何枚が落ちている。
『このお花はね、あなたと彼の関係や気持ちを表す花でもあるの。 』
私は赤いゼラニウムに毎日の日課の水をやる。そして眺めながら花屋さんの言葉を思い出す。
『この花が枯れたらあなたと彼の関係は終わってる。この花が元気になるにはあなた達の関係を良くするしかないの。』
終わってる。か。もう陽太は別れを告げて来るのかな?
『変わることは時によっては悪い場合もあるわ。』
今、この言葉が分かった。私は友達を作りたかった。でも、私の態度が悪かったのかな?それなら陽太もあの子と一緒に居ないでよ……!
って、だめだよね。こんなこと考えたら。私ってこんなに心狭かったのか。
だから私が悪い。だから
帰ってきてよ。
「こんにちは。」
今日はお茶会の日で楽しみに教室へ向かった。昨日、陽太と距離をおいて今日は一切話してなくて倒れそうなぐらい辛いけどクラスメイトと少しだけ話せて少しだけ元気になった。
「いらっしゃい。氷雨さん。」
教室に入るとまだ香月さんしかいなかった。
「あれ?葉月さんと先生は?」
「遅れて来るみたいよ。少し私とお話しない?」
香月さんは隣の椅子を引いて座るように目で促す。香月さんは優しいけど急すぎてなんの話をされるか戸惑いながら座る。
「失礼します……。」
「このお花しおれてると思わない?」
そう言ってアイリスという花を撫でる。
「……はい。」
「どんな花にも水や肥料や太陽が必要。だから1人で1つの花の全てを支えられる訳では無いけど、必要不可欠なの。」
香月さんは私をじっと見つめて私の手に香月さんの手を乗せる。
「あなたが何に悩んでいるかは分からない。でも、相手が居なくなったらどうなる?あなたはほかの肥料を見つける?本当にそれでいいの?あなたは、彼を失ってもいいの?」
言いたいことは分かっている。でも、あの子は?私以外にも居るのを黙って見てるの?
「分かってるみたいね。じゃあ、何に悩んでいるの?厳しい言い方をすると、花じゃないんだから、言葉で伝えないの?たった一言言わないだけで失うのよ?
昨日の彼を見ていたら心配しなくても大丈夫よ。
きっと晴れる日が来るわ。」
そうだよね。言葉があるんだから
伝えない後悔より伝えた後悔よね。
「ちなみにこの花、アイリスの花言葉は、
希望、信じる心という意味があるの。
あなたの恋応援するわ。」
香月さんは花が輝くように笑って私の肩にポンっと手を置く。私は陽太に会って話をしたくて立ち上がる。
「すみません!私今日帰ります!」
「ええ。また聞かせて。」
鞄を掴んだ途端スマホが鳴る。
「はい。」
「もしもし!」
この声は陽太のお母さん。普段から笑みを振りまく女神のようなのに今は何かに追われてるように慌ててる。
「どうかしましたか?」
「陽太が!陽太が、」
陽太のお母さんは嗚咽を漏らしながら一生懸命、喋ろうとする。何があったんだろう。
「陽太が、
交通事故にあったの……!!」
私はその瞬間に息が止まった。
「陽太!!」
私のお母さんと一緒に陽太が運ばれた病院に来た。
「心音ちゃん……。こっちにおいで。」
入るといつもメイクで綺麗な陽太のお母さんは涙でぐちゃぐちゃの顔をして、陽太の手を握っている。陽太のお父さんは陽太のお母さんの肩を支えて静かに泣いている。
「よ、陽太は?」
ベッドに近づくと沢山の機械を付けられた陽太が目を閉じていた。見た目が綺麗で、ただ眠ってるようにしか見えない。
「交通事故にあったのだけど、もう1時間も目を覚まさないの。」
私は陽太の手を触る。いつもの体温は無くて冷たい。
「陽太?」
『どうした?心音?』
そんな声すら聞こえる私は重症だ。本当は陽太からの返事は来てないのに。
「生きてるよね……?」
「まだ1時間だから、植物状態では無いし意識が戻る可能性も十分あるの。でも、……。」
私のお母さんは私を後ろから抱きしめる。もう死んじゃうの?喧嘩したまま永遠に会えないの?よくテレビで「最後の別れはもっとちゃんとしたかった」とか言ってたけど、本当だね。なんで今いなくなっちゃうの?私は手を強く握って膝から崩れ落ちた。
「心音、何かみんなの飲み物を買ってきて。」
みんなが意識が戻るのを願い誰も動かないと心配した私のお母さんが頼んできた。
「でも。」
私も出来ればずっとそばに居たい。
「疲れたでしょ。少し落ち着いてきて。」
私がひたすら泣いていたからか、お母さんに無理やり追い出され病院内のコンビニへ向かう。
「はあ。」
コンビニで飲み物を買ったけど、何となくぶらぶらして外へ向かい椅子みたいのに座る。
「陽太。」
大好きだよ。ずっとそばにいたいよ。こんな別れは嫌だよ。お願い神様。
「あなたそんなに泣いて大丈夫?」
可愛らしい明るい声がして顔を上げると涙が落ちてることに気づき慌てて拭く。
「これ、どうぞ。」
顔を見ると私と同じ位の女の子が立っていて、グミを手に持っていた。
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