赤いゼラニウム編第7話
「心音!ごめん。明日は別の友達と遊んでもいい?」
「ごめん!しばらく週末は遠くに行けないかも。」
「今日は早めに帰るね。また明日迎えに来るね!」
友達が出来ない私でも流石に分かってしまった。これは浮気だ。しかも1人の女の子とずっといる。
その子は名前は分からないけど私より女の子らしくて態度も陽太と一緒で優しいし誰にでもモテる子で陽太にピッタリだ。
でも、恋愛経験が無いから分からないけど、スキンシップはあるからきっと……!
『浮気をしていても優しくする場合もあります。』
「おお……。」
たまたま見ていたネットの記事に今悩んでいることが書かれていてショックを受ける。理由が、浮気は所詮は浮気で本命が大事だから、と書いてあるが陽太はどうなんだろう。本当は浮気はしてほしくない。
「大丈夫、だよね?」
問いかけた言葉は空気に消えていった。
「氷雨さん!居ますか?」
教室がザワザワしているが外を見てると私の名前を呼ばれた気がして教室の入り口を見る。
「葉月さん!香月さん!」
まさかの2人が居た。最近陽太に構ってもらえない分、少しだけお話したから少しだけ親しくなったと勝手に思っている。私はわざわざ来てくれたことに喜んで向かう。
「どうかしましたか?」
どれぐらいの温度差か気をつけて感情を隠してなるべくいつも通りを装う。
「明日の放課後だけど、お花を沢山置いてお茶会をしないかと先生が提案してくれたのよ。」
「せっかく氷雨さんも来てくれるし仲良くなれたしな!!」
葉月さんはガハハと笑いながら私の肩に手を回す。葉月さんは花が好きなこと以外は見た目通りで豪快だけどね。
「……はい!ありがとうございます。楽しみに待ってます!」
私はその時、無意識に陽太にしか見せなかった満面の笑みをこぼした。
「離してくれませんか?」
ものすごい殺気を感じた途端グイッと引っ張られる。
「陽太?」
教室で他の子と談笑していたはずの陽太の腕の中にいた。
「君は誰かな?そんな急に引っ張ったら可哀想だろう。」
強い見た目だから注意すると息が止まるほど怖い。でも、私のために注意してくれてるんだよね。
「……俺は……。」
陽太は横目で見る。この顔は言ってもいい?って言う顔だ。私は痛い視線を感じて首を振る。
「葉月、行きましょ。
氷雨さん。またあとで。」
「おい!香月!まだ話は終わっ」
抵抗してる葉月さんを引っ張って去る。香月さん意外とすごい力だな。
「……ごめん。俺、少し頭冷やしてくる。」
陽太は傷ついたような顔をして去っていった。ってことは、……。
「氷雨さん、だっけ?春井君とどういう関係なの!?」
やっぱり捕まりましたか……!まあ意地悪されないだけマシか。
「葉月様と香月様ともどういう関係!?」
「……葉月様……?」
「知らないの!?あの2人は学校1人気で、綺麗で高嶺の花の香月様!強い見た目をしてるけど内面は可愛いもの好きな葉月様!でも、2人とも人が苦手で中々近づけないの!
どうやって仲良くなったの!?」
そんなにすごい人たちなんだ。人が苦手でもこんなに認められるんだ。私も話すの頑張るから友達が……。
「っていうか、氷雨さんって笑うと可愛いんだね!よかったら私と仲良くなってくれない?」
「え!ずるい!私も!」
「……わ、私と仲良くなってくれるの?」
震える小さな声で質問をする。でも心では実験が成功したように舞い上がっている。
「もちろん!よろしくね!」
「ただいま……。……陽太?」
「おかえり。心音。」
家に帰ると連絡が来てたから陽太がいた。だが鬼の形相で立っていてでもどこか傷ついているような表情をしていた。
「今日、初めてボランティアの人たちとの様子を見たけど、あんなに仲良いとは思ってなかったよ。」
顔が笑ってるのに笑ってない。私が震えそう。
「……仲良かったらだめなの?」
陽太は応援してくれるって嘘だったの?
「それでも!距離感があるでしょ?
あんなにベタベタ触って、心音の満面の笑みを見せて……!」
陽太は今にも泣きそう。嫉妬もしてくれて嬉しいのもあるけど、私に友達が出来たの応援してくれるんじゃなかったの?さらに私の心で引っかかることがある。それなら陽太の友達の『あの子』は?
知ってるよ?隠れてコソコソやってるの。最初は陽太を信じてた。きっと私だけを恋愛感情として愛してるって。やましい事はしてないって。でも、最近は陽太の考えが分からない。
「……ごめんなさい。」
言いたいことは沢山あるのに私の口からは嗚咽のように謝る言葉と目からは大量の水の粒が出てくる。
「……心音。」
怖がって泣いてると思ったのか、陽太はどうしようかと困っている。
「……心音はこの恋愛に疲れた……?」
泣きそうで複雑な感情が入り乱れてるようだ。私は陽太が大好き。でも陽太のあの女の子のせいで少しだけ疲れた。もう終わるんじゃないかって。それに逆に陽太が愛想をつかしたんじゃないの?
「……。」
何も言えない。疲れてないよ!なんの問題もないよ!だなんて言えないし、逆に疲れた。なんて言ったら本当に別れが来ちゃう。
「……ごめんね。変な質問して。」
陽太は私の脇を通って玄関の扉を開ける。
「!」
「少し距離をおこうか。心音もきっとその方がいいよ。」
バタンと扉が閉まる。
その途端、嗚咽を出しながら泣き崩れた。
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