第4話 甘城さんは未経験

 教室の中に入ると、俺と甘城さんは大注目の視線を浴びた。

 俺はともかく、ギャルは目立つね。


 しかし、やはりというか甘城さんは全く気にせず席へ向かった。俺も隣の席へ。


「……ふぅ」


 一息つくと、甘城さんは声を掛けてきた。



「ねえ、草一郎くん」

「なんだい?」


「草一郎くんは童貞だよね」


「ああ……そうだな――って、急になんだいッ!?」



 教室に到着して早々、なんて質問をしてくるんだ! クラスメイトに聞かれたら引かれるぞ、それは!


 幸い、聞こえてはいないようだが。焦ったなぁ……。



「よかった。じゃあ安心だね」

「なにが!?」


「別に~」



 なんだその含みのある笑い。

 でもまさか俺の経験を聞いてくるとは……。もしかして、付き合うなら初めての方がいいってことか。なら、逆に甘城さんはどうなんだ?

 こんな可愛いギャル、イケメンが放っておかないよなぁ。

 でも、なんだか気になって聞いてしまった。



「甘城さんこそどうなんだよ……」

「……!」



 まさか俺が聞き返すとは思わなかったのか、甘城さんは妙に頬を赤くしていた。



「なんだ。その反応は経験済みか」

「ちゃ、ちゃうわ! 処女よ、処女!!」



 と、バッと立ち上がって大声で言うものだから、教室中に声が響いてしまった。クラスメイトにその情報が広がってしまった。



「……え、甘城さんって」「マジかよ」「あんなギャルが!?」「へー」「……わぁ、俺、なんか変な気分に」「つか、あの村神ってヤツさ、甘城さんとどういう関係なの?」「ずるいよな~」



 男共が騒然となっているじゃないか。

 どうしたものかと固まっていると、甘城さんは冷静になって席に座った。


「大丈夫かい?」

「う、うん。ていうか、内緒に……もう遅いか」



 頭を抱える甘城さん。これはこれで可愛いというか――うん、未経験と知れて俺も嬉しかった。




 授業が進み、お昼に突入すると俺は腕を引っ張られた。甘城さんだ。



「んぉ、どこへ?」

「今日は部屋へ案内するよ」


「部屋~?」



 しかし教えてくれなかった。ただ、黙ってついてこいという感じで俺は犬のように引っ張られるしかなかった。


 どこへ行くんだろう?



 たどり着いた教室は『アマチュア無線研究部』と書かれた場所だった。え、アマチュア無線!?


 扉を開ける甘城さん。

 中には一人だけ人がいた。


 女子だ。



「お邪魔するねー!」

「……あ。霧ちゃん」



 どうやら知り合いらしい。その女子は、甘城さんを認識すると微笑んだ。俺には怪しんだ。そりゃそーだ。

 俺は彼女のことを知らないし、向こうも知らんだろう。


 てか、なんでアマチュア無線研究部……?

 そんな部活動もあるのかよ。知らなかった。

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