第3話 甘城さんは俺だけに優しい

 部屋に戻って、ふとスマホの画面を覗くと『霧』から連絡が。

 もう来てる!



 霧:今日は楽しかったよ~!



 おぉ、感動だ。こんなふうにメッセージを貰えるなんて。しかも、甘城さんから。てか、楽しいって言ってくれること自体がなによりも嬉しかった。


 俺は震える指で返信する。



 草一郎:こちらこそ! また明日

 霧:うん。また明日ね! でも、少し話そう


 草一郎:お、おう。なんだい?

 霧:草一郎くんの好きなタイプ教えて



 ――な。なんだって!

 俺の好きなタイプ? なかなか直球だなそれ!


 しかし、答えないわけにもいかないだろう。

 どうしたものかと悩んだ末に俺は。



 草一郎:ギャルかな



 と、送った。

 しばらく返信が返ってこなかった。

 ヤベエ、余計なことを言ってしまったかな。

 落ち込んでいると。



 霧:ま、まじか。うん、じゃあ、あたしピッタリだよね!



 そ、それって!!

 まさか甘城さんって俺のことが……そんなまさか?

 てっきり友達程度に思われていたのかと思ったんだけどな。



 ◆



 次の日の朝。

 驚いたことに、玄関には甘城さんの姿があった。ご近所さんと分かったし、来れる距離なわけだが……まさか、わざわざ来てくれるとは。



「おはよ、草一郎くん!」

「お、おはよう。甘城さん」



 甘城さんは今日も可愛くて表情も柔らかい。

 制服姿も本当に似合っている。



「行こ」



 俺の腕を引っ張る甘城さん。正直、最高です……!



「そういえば、甘城さんのテックトック覗いたよ」

「マ? 恥ずかしいな……」

「そんなことないよ。踊りとか可愛かった」


「そうかな」

「凄い再生数だよね」



 何十万人と見られているとか本当に凄い。尊敬してしまう。

 テックトックのことを話しながら歩いていると、同じ高校の男子が甘城さんに寄ってきていた。


「あれ~、甘城さんじゃね? テックトック見たよ! 本物可愛いねぇ」

「…………」


 ファンかな。でも甘城さんはツンとしていた。俺との態度違いすぎ!?



「ねえねえ、俺ともコラボしない?」

「……はい?」



 明らかに甘城さんはだるそうにしていた。こ、こんなに対応が違うものなのか。びっくりだ。



「だ、だからさ……えっと」

「あたし、今この草一郎くんと登校しているんだよね。邪魔しないで」


「は、はい……スンマセン」



 ビビッて去っていく男。

 甘城さんの迫力半端ねえ。



「……おぉ」

「ごめんね、草一郎くん! あたし、有名人だから、ああいう男に絡まれやすいの。面倒臭いよねー」



 さっきの氷のような口調と変わり、俺に対してはやっぱり優しかった。むしろ、腕にすがりついてきた。……や、柔らかッ。



「えーっと、えとえと……甘城さん!?」

「こうすれば付き合っているように見えるよね!」


「ナンダッテ?」


「恋人みたいに振舞おう。ね? お願い?」



 ……最高ですかッ!

 当然、俺はイエスをうなずいた。

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