第36話 幹部で温泉:前編
「ドロリス様、リンド温泉開業の支度が整ったようです」
「よーっし!」
クリスタが深々と礼をし、私に吉報を届けてくれた。
リンド温泉は2日前にティアラが発見してくれた温泉だ。三役との話し合いの結果、いずれ宿も併設して観光業にも力を入れていきたいとのこと。村長はかつてないほどの笑顔だった。
そして村長は温泉を発見したのは私たちだから、一番風呂は譲ってくれるそうだ。いやー話が早くて助かる。
モブ配下たちにも誘いをかけたけど、モブ配下がドロリスと入浴するなど許されないことらしい。本人がいいと言ってるのに、頭が固いことだ。
まぁともかく……
「温泉同好会andドロリス幹部会〜!」
テンション上がるー!
ちなみに番台や脱衣所、それから温泉の形に至るまで、すべて美術は私の魔法で作っている。物理法則の監督役はもちろんティアラだ。
「リュカ、頼んでいたやつはある?」
「あるわよ、はいこれ」
リュカが得意げに見せつけてきたのは浴衣だった。
温泉といえば浴衣でしょう。そして幹部みんなを古のセクハラ、「あ〜れ〜」と脱がせるやつがやりたい(真顔)
「さ、みんな着替えて温泉行こうぜ!」
「わ、私も一緒に行くのか?」
「当たり前でしょ。そもそもティアラは温泉を発見した最大の功労者なんだよ」
ティアラ・クリスタ・リュカ・私
この4人の入浴シーン、しかも温泉でみんな一緒だなんてEdenファンからしたらダイヤモンドより貴重だろう。
かぽーん
温泉って、なんで「かぽーん」なんだろうね。
「立派にお造りになられて……流石ですドロリス様」
「本当ねー。これなら毎日通っちゃうわ」
「それにしてもドロリス様、温泉など行ったことありましたっけ? やけに構造が統一されていて乱れがないというか……」
「えっ!? ま、まぁ私にかかればこんなものよ!」
「流石ですドロリス様!」
クリスタめ、痛いところを突いてきよる。
確かに本物のドロリスは温泉なんか行かないし、領地で温泉を掘り当てても温泉宿を作ったりなどしないだろう。
だが私は違う。他でもないニッポンの血が流れており、温泉には一家言持っているのだ。
だからリアルな温泉宿を作ってしまった。しかも物体を生成できる魔法をドロリスは使えるので、予算も気にせず盛大に、豪奢にやってしまった。
冷静になって考えると、こんな豪華絢爛な温泉を大規模農場の外れに作ったら、そりゃ浮くよね。
「き、気になるところはあるけど、とりあえず今日は楽しもう!」
女性更衣室に4人で雪崩れ込み、なんと百を超えるロッカーにクリスタは目を丸くしていた。
「さ、行きましょ」
「ちょリュカ! 脱ぐのに躊躇いが無さすぎる! 情緒なし!」
「えー、何よそれ」
「ん……」
「いいねティアラ! その恥じらいこそ侘び寂び!」
「お前の故郷はバカしかいないのか」
バカかはともかく、
最後は……
「クリスタ〜、脱がないなら手伝おうか?」
「そ、そんなドロリス様のお手を煩わせるなど……」
「良いではないか〜良いではないか〜」
「あ、あ〜〜れ〜〜」
「何やってるのよ貴女たち……」
1番やりたかった茶番をクリスタにやってみたら、結構楽しかったがリュカとティアラには呆れられたようだ。
浴衣という和服が乱れ、だんだんとクリスタがセクシーになっていく過程。これぞ、WABISABI。
日本の先人たちよ……あなた達は素晴らしい文化を残してくれましたね。ありがとうございます。
「おいテンション高いのはいいが、お前もさっさと脱げ。冷えてきた」
「お、気づけば私以外みんな全裸だ」
リュカ以外はバスタオルで隠しているけど。
私は浴衣をさっさと脱いで、あれ情緒は? と思ったけど飲み込んだ。
「さあメインの温泉へどうぞ! ここには7つの温泉を作りましたので楽しんでいってね」
「7つも、素晴らしいです……」
「それぞれ効能が書いてあるけど、これは?」
「温泉といえば効能でしょ」
「と言われてな、私が温泉に薬剤を混ぜて効能が出るようにしたんだ」
「なになに……肩こり・腰痛・冷え性……なんか老人みたいね」
「リュカには美肌効果がオススメだよ。それ以上綺麗になるかは分からないけど」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない!」
リュカは大はしゃぎで美肌の湯へ吸い込まれていった。
「まぁ私たちは普通の、特に何の効能もない大浴場から入ろうか。ざっと60人は入れるよ」
「すごいですね。ただ60人もいられると緊張してしまいますが」
「まぁ時間帯によるだろうね。農作業が終わった時間帯は混むだろうなぁ」
みんなそれぞれ体を清め、温泉へと浸かった。
ジーーっ
「ど、ドロリス様! 視線がその……」
「おいドロリス、妻の前で他の女の胸を凝視するとは何事だ」
「ティアラ様! 今マウントを取りましたね!」
「お前こそ胸でマウントを取っているではないか!」
「はーいはい喧嘩しない。いや単純にクリスタの大きな胸が浮かんでくるのか、気になっただけ」
「やはりバカだなこいつ」
「ちなみに妻の胸をお湯の中で揉むとどんな幸せホルモンが出るかの検証をしたいんだけど……」
「この温泉をお前の血で染めてやる」
いやーん、2人ともガードが硬い〜。リュカのところ行こうかな〜。
「ふぁあ……それにしても極楽だ〜」
「ドロリス様、あの扉の奥には何があるのですか?」
「ん?」
クリスタが指差した方には確かに白樺の木で作ったドアがあった。ふふ、いい指摘だよクリスタ。
「ふふ、あれはね……サウナ!」
「さ、サウナ!?」
「流行ってたんだよ。だから取り入れてみました」
「ど、どこで流行っていたのですか?」
あ、やべ。
ティアラもバカか! と言いたげに脇腹に肘を入れてきた。
「まぁそれはいいじゃない。せっかくだからサウナ行ってみようよ。幹部たちの中で誰が1番根性あるか、試してみない?」
「ほほう、それならばドロリス様、私は負けるわけにはいきませんね!」
さすがドロリスの右腕のクリスタだ。負ける気はないらしい。
「おーいリュカ〜、サウナ行こうぜー」
「サウナ? 何よそれ」
「入ってから説明する。ほらティアラも」
「仕方ないな、ったく……」
幹部たちは吸い込まれるように、サウナ室へと誘われた。
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