第19話 配下のパンツ:ティアラ

 私は生前から女子のパンツや透けブラを眺めるのが好きだった。

 そのために勉強して、女子校に通ったと言っても過言ではない。


 だから好きなゲームの世界に転生して、推したちと暮らす中でパンツが見たいと思うのは、ある種当然の欲求であった。


 リュカ→済

 クリスタ→ガード固

 ティアラ→謎



 ティアラには論破された。だが、私にはプランBがある。それは……


「ティアラー! そろそろ風呂入りなさーい!」


「……またお前か」


 お風呂に入ってパンツを見よう作戦だ。ついでに裸も見れる。一石二鳥!


 ちなみに朝ティアラに研究室を追い出されてから10時間経っている。まあまあ時間は空けた。


 心が痛むけど、パンツのために(あとティアラのためにもなるし)嘘を言ってお風呂に入れよう。


「朝言わなかったけど、また洗ってない犬の匂いがしたよ」


「嘘……毎日シャワー浴びてるのに」


「え?」


「え?」


 あのティアラが、毎日シャワーを?

 確かに洗ってない犬の匂いは嘘だ。3日前くらいにはシャワー浴びたのかな? とは思ったけど。


 毎日……だと?


「てぃ、ティアラ! お風呂が嫌だからってそういう嘘は良くないと思うよ!」


「嘘じゃない。本当に毎日浴びているんだ。その、お前に言われてから……」


 ティアラが頬を染めて俯いている。


 こ、これは嘘をついている女の顔じゃない!

 むしろ恥ずかしい事実を知られたくない相手に知られた時の女の顔だ!


 ……ん? なんで毎日シャワーを浴びてることが知られたくない事実なんだろう。それっていいことなのに。


 まぁいいや。頭の良いティアラのすべてを理解することはできまい。


「その、私は臭うのか?」


「え? えっと……」


 どうしよう……嘘を貫くこともできないし、「臭くないよ」と言ったら「さっきと言ってることが違う」とティアラの乙女心に悪影響だ。


 考えろ、なんかいい言葉を、捻り出せ!


「臭わない」


「……?」


「でも、それはあくまでティアラ本体の話!」


「本体?」


「ティアラ、体臭の原因は体だけじゃないんだよ。その原因の最たる例が、衣服!」


「なっ!?」


 よし、よく思いついたぞ私。

 オタク体臭問題とかしっかりネットで調べといて良かった〜。


「ティアラは毎日シャワーを浴びるようになったんだね。偉い偉い。ただあと一歩、体臭をなくすには衣類の選択も重要なんだ」


「……確かにここ数日着替えていない気がする」


「ずっとその白衣だけど、何着あるの?」


「これだけだ。白衣はいいだろう、アウターなのだから」


「ダメでーす。この部屋の匂いが染み付いてるだろうからちゃんと洗うの。はい、全部持って洗濯室行くよ」


「んにゃ!?」


 私はティアラをお姫様抱っこした。


 以前にも言ったが、推しの腕や髪を引っ張るなどオタクとして言語道断。だから無理やり何かをやらせるには工夫が必要なのだ。


「お、降ろせ! 自分で歩けるから!」


「ダーメ。嫌がって逃げるでしょ?」


「ち、違う! その、衣類の匂いがお前に……その……」


 ああ、そこを気にしているのか。なんだかんだいっても、やっぱり乙女なんだね〜。


「大丈夫、ティアラの匂いも私イケるから」


「余計に降ろせこの変態がっ!!」




 洗濯室に到着すると、もう我慢できないといった様子でティアラは私の手から降りた。にしても軽いなあティアラは。もう少し食べさせないと。


「研究室の外なんていつぶり?」


「さあ。数年は出てないが」


「おお! じゃあ久しぶりの外出だね」


「外出……ここも冥血城の中だが」


「細かいことはいいの。大きな一歩じゃない」


「むー……さっさと洗濯するぞ。ここに衣類を入れればいいのだな」


「はいストップ」


「な、なんだ?」


 手際よく洗濯物を洗濯機に入れようとしたティアラを止める。彼女は困惑した顔で私を見つめていた。


「繊細な衣類はなるべく手洗いするの。下着は貸して。私がやるから」


「そうなのか。わかった助かる」


 ティアラが洗濯物の山から下着を取り出して、私に渡した。


 瞬間、私の心の中でフィーバータイムに突入した。


 うっほー! まさかティアラの所有する全パンツを拝んで手洗いできるとは! なんたる僥倖! これも日頃の行いの結果かね〜。


 しかし、プロ下着リストの私から言わせてもらうと、このパンツたちにはそれほど価値はない。


 なぜならパンツを見るという行為は、今履いているものにこそ意味が生じるからだ。

 数日前に履いて脱いだパンツなど、ただの布切れとすら言える。


 私は……今ティアラが履いているパンツが欲しいのだ。


「ティアラ、今履いているのもついでに洗っちゃうから脱いで」


「はーーい? ……いや待て。それはおかしいだろう」


 ちっ、気づいたか。


「いやいや、せっかくだし洗おうよ」


「いや、だってそれは……」


「うん?」


「お、お前の目の前で脱ぐってことだろ?」


「女同士じゃん。気にしないで」


「むしろお前はそこに悦を感じる変態ではないか」


 ぐっ……こっちは日頃の行いの結果が悪い方に出ちゃった。


 ティアラは「でも……」と小声で言い、


「臭いのは不快だから仕方ない。こっちを見るなよ変態!」


「はーい」


 なんと脱いでくれるらしい。


 こうして私はティアラが今の今まで履いていた水色のパンツをこの眼光に焼き付けた。


 ティアラはドン引きしていたが、結果的に彼女の衣類は綺麗で清潔なものになった。まあ、WIN WINってことで!


 さあ、後は……


 ガードの固い、クリスタのパンツを拝むだけだね。作戦は練ってある。


 今夜、決行だ。

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