第2話 成し遂げたいことと覚悟

カレンを背にしてソラは全力でこの場を離れることだけ考えて走るがそんなソラを追い抜いていく影があった。

「メラ!受け身よろしく!」

「あいよ!」

ソラを追い抜いていった影の正体は十数秒前にわかれたカレンだった、メラの宿った剣を後ろに向けて炎を噴射し勢いを殺して靴底を擦りながら着地する。

「くっなにあれ…私の攻撃が掠りもしない。」

「だから言っただろ!って来るぞ!」

メラがそう言った瞬間、黒い影がカレンの正面に現れる。

「確かに強いですけど、まだまだですね。」

「よく言うわ…」

そこには長身の男性が立っており、その姿は人間に見えたが一点だけ人にはない特徴があった。

頭の上に2本、暗闇みたいに真っ黒な山羊の角のようなものが存在していた。

「あっ悪魔…」

ソラの口からついそうこぼれ落ちる。

「そうですよ、そこのお嬢さん、私は悪魔です。」

「この子に手を出すな!」

「おとっと!危ないですね。」

カレンが踏み込み、剣を振るがその悪魔は涼しい顔で軽々と避けてしまう。

「そんなに焦らないでくださいよ、私はそこの綺麗な白髪のお嬢さんに用事があるだけです。」

「えっ私…」

ソラがガクガクと震えながら、恐怖のあまりつい声に出てしまう。

「そうです。あなたです。」

その悪魔はニコッと笑みを作るとソラの目の前へとゆっくりと移動してくる。

カレンは動けなかった、気づいてしまった、自分とソラが今、この悪魔に生かされているだけだという事実に。

そしてメラもそれがわかっているのか沈黙を貫いている。

「ではさっそく白髪のお嬢さん、あなたの持っている本を私に見せてもらうことはできないでしょうか?」

悪魔は丁寧にソラに向かってお願いをしてくる。

「でっでもこれは…」

それだけ大切なものなのだろう懐を守るように腕を移動させた後、ソラが渡すのを一瞬だけ躊躇する。

そのときだった。

カレンの体の周りに炎が吹き出し守るように燃え上がる。

「え…」

「カレン無事か?」

カレンは反応できなかったがメラはしっかりと対処した、カレンの首に迫っていた悪魔の爪を。

「嫌ですね、少し交渉しただけじゃないですか。」

燃えている右手をブンブンと振って炎をかき消すとさっきと変わらない笑顔でメラに話しかける。

「お前、オイラが止められるギリギリを狙っただろう?なんだソラがその本を渡さなかったら今度はカレンの首を跳ねるってか、ふざけんな!」

そんな悪魔の態度とは対照的にメラは怒りを隠そうともせず、吐き捨てるように言葉を返す。

カレンは悪魔とメラの会話から状況が飲み込めてもなお、圧倒的な力を前に動くことができない。

「さて、もう一度聞きますね。私にあなたの持っている本を見せていただけませんか?」

悪魔はメラの怒りなど微塵も気にせずに先ほどと同じ口調でソラに同じお願いをする。

しかしそれはお願いでないことくらいソラにもわかる、もう渡すしかないのだ、この悪魔はさっきカレンが一撃で倒したものとは次元が違うのだ。

ソラは覚悟を決めると懐から大切にしている本を取り出し悪魔へと差し出す。

「これは渡します…でもその代わりカレンさんには手を出さないでください。」

怖くないわけがなかった、足がガクガクと震えるのをどうにか堪えながらそれでもソラは今日初めて会った自分にここまで良くしてくれたカレンを助けようと力強く言葉を発する。

「わかりました。約束しましょう。」

そう言って悪魔が本を受け取ろうと触れようとしたとき、本を掴もうと出していた悪魔の右腕が凍りつく。

「くっ…!」

その悪魔は突然の不意打ちに一瞬だけ焦りを見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し後ろへと大きく後ろへ後退する。

その本はソラの手の中で冷気を放出する、しかし悪魔の右腕を凍らせたときとは違いソラの手はその冷気に触れても凍ることはない。

「冷たっ」

冷気に触れたソラがそうこぼすと

「冷たかった?ごめんなさいねソラ」

ソラの手に持つ本から優しい声が聞こえたとたん冷気が1ヵ所に集まり始め、髪の長い女性へと形作られる。

「うーん、これは少し困りましたね。」

凍ったままの右腕を押さえながらそれを見た悪魔が苦笑いを浮かべる。

「誰!?」

そんなソラの自然な問いに答えたのはメラだった。

「そいつは精霊だ!しかも神の願いを聞き届けた精霊だ。それはオイラたちの全力を出した姿とも言える。だけどおかしいんだ!この世界でその姿になれるはずがないんだ!だって神はもうこの世界にいないんだから!どういうことなんだよいったい…」

メラが訳がわからないとこの状況に混乱しながらソラの問いに答えてくれる。

「そこの炎の精霊さん、困惑するのはわかるけど先にアレを倒してからでいいかしら?」

「ああもちろんそうしてくれよ。」

その精霊は右腕を悪魔に向けて狙いを定めながらメラへとそう言葉を掛けてくる、それに状況が状況であるため疑問を後回しにすることを決めたメラも即答する。

「ふふっありがとう。」

精霊はそう言うと自身の周りに複数の氷柱を出現させ間髪いれずに悪魔へと発射する。

「はあ…まったく。」

悪魔はそうこぼすと両手に黒い炎を纏わせ、自身に向かってくる氷柱を迎撃する。

悪魔は先ほどと違って余裕な笑みが消えていた、向かってくる氷柱を黒い炎を纏った拳で叩き落とし、打ち砕き、そして回避できるものは迷わず回避する。

「さすがですね。でもこれはどうでしょうか?」

氷柱の弾幕が一時的に止み、精霊は両手に何かを集め始め、それに気がついた悪魔は距離を詰めようと前へ跳ぶ。

そして次の瞬間、精霊に黒い炎を纏った悪魔の拳が突き刺さる。

「かはっ…効きますね。相変わらずすごい速さですがでも捕らえましたよ…『凍てつく氷の監獄、さあ罪人よ懺悔しなさい』!」

そう答えた精霊は悪魔の腕を掴んで何らかの詠唱を口にするとその両手から莫大な冷気が吹き出し悪魔を包み込むために動き始める。

「いいえ今のあなたになら私でも引き分けくらいには持っていける。」

そう宣言すると悪魔は冷気と対抗するように全身から黒い炎を放出する、黒い炎と真っ白な冷気それらが人二人分ほどの空間で激しく打ち消し合う。

数秒間、拮抗した炎と冷気は突然お互いに勢いを弱め消えてしまう。

「はあはあ…残念ですが時間切れですか…」

「はあはあ…やはりあなたとの力比べはおもしろいですね。その力が一時的なものであることが非常に残念だ。」

精霊は悔しそうに、悪魔は嬉しそうに、お互い疲労感を感じさせる声で言う。

「私はおもしろくありませんよ、あの男が世界に張った結界さえなければ…」

悪魔の言葉に精霊が返そうとするが、時間切れなのかその白い体は言葉の途中で溶けるように消えてしまった。

「少々想定外のことはありましたがまあ今回はあの本の中に彼女がいたことを確認できたので良しとしましょう。それと白髪のお嬢さん、そこの黒髪のお嬢さんの力になりたいと思うなら彼女と契約してみてはいかがですか?」

悪魔は満足そうに呟いた後、固まってしまっているソラとカレンのほうを向き、悪魔らしからぬ提案をしてくる。

「あなた、ソラになにさせようとしてるのよ!悪魔が人間に精霊と契約するよう言うなんておかしい。」

「そうだ、お前はいったいなにがしたいんだよ!」

警戒と怒りの感情がのった声で問いかけるカレンにメラも続く。

「ああそれはですね、楽しいからですよ彼女との力比べが。だから私の目的は白髪のお嬢さんと契約した彼女の全力と戦うということです。なのでこの提案はどちらにも利益があると感じたのですが。」

「あんた、本当に悪魔なの?」

「ええ、悪魔ですよ。まあ変わっている自覚はありますけど。さて私は目的を達成しましたし何より消耗が激しいので帰るとします。ああでもこの状態でもあなたたちでは勝てないと思うのでその手は退けた方がいいですよ。あと先ほどの提案を受け入れてもらえると非常に助かりますそれではまたどこかで。」

最後に言いたいことだけ早口で伝えるとその悪魔は跳躍し、崩れた高層ビルの影へと消えていった。

カレンはこれを剣の柄に手を掛けた状態で見送り、それからさっきから状況についていけず棒立ちのソラに声をかける。

「ソラ、無事?」

「はっはいカレンさん!大丈夫です!なんかいろんなことがあって整理が追い付かないと言いますか…」

ソラは元気良くカレンに返事をするが、それから照れ臭そうに困りましたと頬をかく。

「それはそうね、でも私もなにがなんだか。」

そんなソラの困った様子を見てカレンもその困惑を肯定するかのように肩をすくめる。

メラがそんな二人の思うし困惑した空気を壊すように言葉を投げ入れる。

「その状況が整理できてない中、悪いんだがオイラの話を聞いてくれ。」

「なにメラ?」

「…そのオイラ、あの悪魔が言ったようにその本に宿ってる精霊と契約するのはありだと思うんだ。出てきたときソラの名前を呼んでたし、明らかにソラを守ろうとしてるようにオイラには感じられた。」

カレンが促すとメラは口にする前に少し躊躇したように間を空けると勇気を出すように自身の提案を発表する。

「私もそれは思うし、これからの身の安全のためにもありだとは思うわ。でもそれを決めるのはソラよ。」

カレンがメラの提案に力強く頷くとメラに笑顔で答え、最後に肯定はするがあくまで決めるのはソラだと付け加える。

「わかってるよ。だからオイラのはあくまでも提案だ。」

「その…私!この本の中にいる精霊さんと契約してみようと思うんです。私は今日2回もカレンさんに助けてもらいました。それに2回目は本当に危なかった。だから私もカレンさんに守られるのではなく、一緒に戦いたいとそう思いました!」

カレンに真剣な目線を向けられたソラはしばらくの間、俯いた後、顔を上げカレンをまっすぐ見ると自身の覚悟を語り始める。

「守られたのはこちらも同じだわ。だからあんまり気にしないで。でも一緒に戦いたいと思ってくれるなら私からもお願いしたい、ソラ、私と一緒に悪魔と戦ってくれない?」

その覚悟を受け取ったカレンは笑顔を向け、自身の右手を差し出すとソラがそれに答えるようにそっと左手を重ねる。

「はっはい、よろしくお願いします。」

照れ臭そうに笑ったソラとそれを嬉しそうに見るカレン、その光景を一通り眺めた後、話を戻し契約についての説明を始める。

「おうおう、話しはまとまったみたいだな、それじゃあさっそく契約といくか!といってもソラがやるのはもう名付けくらいしかないけどな。精霊を呼んで名前をつければいいだけだ。」

「名付け?」

ソラがメラの説明に出てきた始めて聞く単語に顎に手を当て小さく首をかしげながら呟き、それを拾ったカレンが補足するように説明を引き継ぐ。

「そう名付け、私がメラに名前をつけたように精霊には名前を与えることで自分と契約してもらうの。精霊は誰かに名付けられることで力を覚醒させ、誰かに求められることでその力を増幅させる、だから使用者に悪魔に対抗する力を貸す代わりに精霊は自分の名前をもらう、そういう契約を結ぶの。」

カレンの説明にメラが相づちをうち、それから申し訳なさそうに精霊の現状について謝ってくる。

「まあそういうことだ。以前は神様がやってくれたんだが今はな…人にやってもらうしかないんだ。オイラたちはこの世界を守らなきゃいけないのに、その守るべき存在を戦いに巻き込まなきゃ戦うことすらできないんだ。ほんとにごめんな。」

メラの言葉を聞いたカレンは少しムスッとした態度でメラを叱るようにけれど優しく言い聞かせる。

「メラ、そういうことは言わないで。戦うことを決めたのは私なんだから。メラはそれを手伝ってくれてるだけでしょ。」

「カレン、本当にありがとな…どうしようオイラ嬉しくて泣きそう!」

それを聞いたメラはカレンの優しい言葉に感極まってしまったのか、涙声でお礼を言う。

カレンはメラの反応に大げさよと少し呆れたように微笑むと、ソラに精霊との契約者の先輩としてアドバイスを伝える。

「はあまったく…それで話を戻すわね。ソラ、そういうことだからその精霊にはとびっきり良い名前をつけてあげて!」

そのアドバイスを受け取ったソラは、自身の大切な本から現れ、自分達を救ってくれた白き氷の精霊を思い浮かべながら名前を考え始める。

「わかりました!ええっと氷、白い、女の人、髪が長い、優しい…うーんどうしましょうか。」

しばらくソラはうーん、あれもいいな、これもいいななどと悩んだすえしっくりくる名前が思い浮かんだのか口を開く。

「カレンさんメラさん!私決めました!」

「決まったのね、メラ!」

カレンの声に反応したメラがさっそくとばかりに名付けの手順をそれに教え始める。

「それじゃあオイラから名付けの手順を説明するから、やってみてくれ。まず精霊の宿ったものを用意して自分の前に持ってきてくれ。」

「はい!」

ソラはメラの言葉に元気良く返事をすると持っていた大切な本を胸の前へと持ってくる。

「持ってきたな。それじゃあオイラが詠唱するから真似してくれ。『精霊よ!名を与える代わりに私たちに抗うための力を!』」

「『精霊よ!名を与える代わりに私たちに抗うための力を!』」

メラの詠唱を真似してソラも詠唱する。するとソラの持つ本が白く光り、あまり感情のない淡々とした声が聞こえてくる。

「いいでしょう。あなたの願いと与えられる名によって私たち精霊が抗うための力を与えましょう。さあ、私の名を聞かせてください。」

ソラは深呼吸をすると、ゆっくりとそして途中に溜めを作りつつ、自身が契約しこれから戦う力となってくれる精霊の名を告げ、最後に少し恥ずかしそうに頬を染めながら素敵な理由を口にした。

「あなたの名前は…『ユキ』理由は始めて会ったあなたが真っ白くて雪みたいできれいだったからです。」

その名を聞いた本は白い光を消すとそれに変わるように、先ほどの精霊と同じ声を響かせる。

「ふふっソラ、素敵な名前をありがとう!ユキ…気に入ったわこれからよろしくね!」

「はい!ユキこれからよろしくお願いしますね!」

その本にペコッとお辞儀をしてソラは、精霊に始めましての挨拶をする。

「ソラ、やったわね。そしてユキこれからよろしくね。私はカレンよ。」

「ふうー成功だ。ソラ。ユキ、オイラからもよろしく頼む。オイラはメラっていうんだ。」

ソラに続いて、カレンとメラも自己紹介と挨拶をする。

「ソラのお友だちね、カレンとメラ…覚えたわ。カレン、メラこれからよろしくね!」

ユキはカレンとメラの自己紹介に嬉しそうに答える。

カレン、ソラ、メラ、ユキの4人が交流を深めつつ立ち話をしていると。

「カレン、悪魔が集まってきてるぞ。」

「わかってる。ソラ!あなたとユキの初陣よ。私と一緒に戦ってくれるかしら?」

集まってくる影にメラがいち早く反応し、カレンがそれに応じ、ソラへ共闘を申し込む。

「はいっカレンさん!もちろんです!いきましょう『ユキ』。」

「ええ、いきましょうか。」

カレンの言葉にソラは笑顔で応えると自らが契約している精霊へと声をかけ、それにユキも応える。

「さあ『メラ』私たちもいくわよ!」

「おうよ!」

そんなやり取りを見たカレンは自分も負けじとメラに声をかけ、それにメラがいつもの返しをおこなう。

ビルの影から、地面に空いた大きな穴から、至る所から黒い影が這い出てくる、その数数十体。

それはおぞましい声を上げながらカレンたちを囲むように近づいてくる。

しかし、カレンとソラの表情に怯えはなかった。ソラに自身の作戦を伝える。

「ソラ、突破口を作る!私に後ろからついてきて捌ききれなかったのを打ち落として!」

「はいっえっと力を使うには…」

「ソラ、大丈夫よ狙いたい悪魔を指示してくれれば、後は私が狙い打つから。」

「ありがとうユキ、なら行こう!」

カレンはソラとユキの確認作業が終わるのを待ってから走り出し、向かってくる悪魔をメラの炎が灯った剣で切り伏せながら前へと進む。

途中、切り伏せる悪魔に漏れが発生するがそれは作戦どおりに後についてきているソラとユキが射出した氷柱で打ち落としてくれる。

それを繰り返すうち、悪魔の包囲網に突破口という名の穴が空く。

「今よ。ソラ!一気に駆け抜けるわよ!」

「はい!」

二人は走る速度を上げ、一気に悪魔の索敵範囲から逃れる。

それから二人は川の土手に来ていた。手入れのされていないそこは草木が生い茂ってた。

カレンは世界がこんな状況でも自然は逞しいわねとそんなことを思いながら石のブロックに腰を下ろす。

「ふうっここまで来ればひとまず安全ね。」

後ろからついてきたソラもおでこの汗を拭って、カレンのとなりに腰を下ろし、不思議そうに聞いてくる。

「それは良かったです。でもなんででしょうか?私そんなに足は速くないほうなんですけど、今はカレンさんの速さについていけました。」

その疑問にカレンが青々とした雑草を見つめながら解説をしてくれる。

「ああそれはね、精霊と規約するとその精霊の持つ力だけじゃなくて足が速くなったり、ジャンプ力が強化されたりするのよ。まあ力を使ってるとき限定だけどね。」

解説を聞いたソラはフムフムと小さく頷くとカレンと同じように景色を見る。

「なるほど、だからあんなに速かったんですね。」

危機を乗りきって安心したの二人に間にしばらく心地よい沈黙が続いたあと、ソラが呟く。

「こう見ると世界って平和に見えますね。」

「こうして見るとね。」

ソラがこの世界の人々が願い続けていることを口に出す。

「いつか、平和になるといいですね。」

「そうね、そういう世界にしたいわね、まあ私たちは平和だった頃を知らないけど。」

ソラの言葉にカレンがあいかわらず景色に目線を固定化させたまま答える。

「そうですね…悪魔のいない世界ってどんな感じなんでしょうか?きっとこんなに毎日怯えなくて良くて、好きな場所にもいけるんだろうな。」

カレンの答えにソラは一瞬だけ悲しそうに呟くと、その後すぐにソラ自身の願望を付け加える。それは未来への希望だった。

それを聞いたカレンはハッと驚いたように景色から隣にいるソラへと視線を移す。

「ねえ、ソラ…さっき一緒に戦ってくれるって言ってくれたけど…その私には目標があるの聞いてくれる。」

カレンは真剣な顔でソラを見つめると覚悟を決めたように問いかける。

ソラは一瞬も迷わない、その返事は即答だった。

「もちろんです!」

カレンは短くお礼を言うと、この世界で自分自身が戦う理由をソラに伝え、最後におそるおそるお願いを付け加える。

「ありがとう、それで私の目標っていうのが…この世界の邪神、つまり世界をめちゃくちゃにしたあの悪魔を倒すことなんだけど…その…それを二人の目標にするのはダメかしら…」

最後のお願い部分の声は戦っているといからは考えられないほど小さく弱々しかった。

ソラは断られたらどうしようと顔に書いてありそうな表情のカレンを見て思う、こんな世界でも折れずに進もうとしている人がいて、きっとその人は世界の希望だと、だからその人にこんな顔をさせてはならないと、なにより彼女に助けられたソラという人間が今度はカレンを助けたいとそう想った。

だからソラの答えはもう決まっていた。

「カレンさん!私はカレンさんと一緒に戦いたいと言いました。だからそんな顔しないでください!邪神を倒す?良いじゃないですか、私たちでこの世界を平和にしましょう!」

「本当にありがとうソラ。」

カレンの顔がパッと明るくなり、嬉しそうに感謝をソラへと伝える。

「ふふっどういたしまして。」

カレンの笑顔にソラも嬉しくなったのか、笑顔でそれに応える。

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その暗闇にこの刃が届くまで えんぺら @Ennpera

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