第18話 成果の愛のスムージー
静かな朝のテルの食堂には、柔らかな光が差し込み、今日もお客様がぽつぽつと集まり始めていた。
カウンターに座ったのは、若い女性のカオリだった。スーツを身にまといながらも、その表情には疲れがにじんでいる。
「おはようございます、テルさん。最近、仕事が忙しくて…。けど、頑張ってるのに何か満たされない感じがするんです。」
カオリは目の前のカウンターに両肘をつき、ぽつりと語り始めた。
テルはカオリの言葉に耳を傾けながら、柔らかく微笑むと冷蔵庫からバナナと牛乳を取り出し、カウンターの下からミルクココアの缶を取り出した。
「カオリさん、それはお金とちょっと距離ができちゃってるのかもしれませんね。お金との関係は、友情みたいなものです。愛を注げば注ぐほど、返してくれるんですよ。」
「お金を愛する…ですか?」カオリは戸惑いながらも、興味を持ったように尋ねた。
テルはミキサーに材料を入れながら頷いた。
「そう。お金を愛するというのは、お金でできることを愛することなんです。誰かを喜ばせたり、自分を大切にするために使ったり。そうすれば、お金は親友のようにあなたに寄り添ってくれるものですよ。」
ミキサーが静かに回り始め、バナナとミルクココアの甘い香りが店内に広がる。出来上がったスムージーをグラスに注ぎ、テルはそっとカオリの前に置いた。
「これが『成果の愛のスムージー』です。バナナは疲れを癒やし、牛乳は心を穏やかにしてくれる。そしてココアは、新しい出会いを引き寄せるんです。」
カオリは一口飲み、思わず目を輝かせた。
「美味しい!そしてなんだか気持ちが軽くなった気がします。」
テルは優しく微笑みながら語りかけた。
「お金と仲良くなるには、感謝する気持ちを忘れずに。それが巡り巡って、もっと大きな成果となって返ってきますよ。そして、あなた自身も周りの人たちを幸せにしてあげられる。そんな人生をぜひ楽しんでくださいね。」
カオリはスムージーを飲み干し、すっかり元気を取り戻したようだった。
「テルさん、ありがとうございます!私、もっとお金と仲良くなれる気がしてきました。」
彼女は爽やかな笑顔で店を後にした。
その背中を見送りながら、テルはそっと心の中で呟いた。
「愛のスムージーが、カオリさんの新しい一歩を応援してくれるといいな。」
店の扉が閉まり、再び静けさが戻ると、テルはカウンターを拭きながら次のお客様を待つ準備を始めた。
料理が語る、お金と心の本当の物語 まさか からだ @panndamann74
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