料理が語る、お金と心の本当の物語

第12話 お金を得る時間とエネルギーのバランス りんごと白菜のサラダ

　夕暮れのテルの食堂は、柔らかなオレンジの光に包まれていた。その日、常連のカナコが訪れた。彼女は30代半ばのキャリアウーマンで、最近は仕事のストレスと忙しさに疲れ切っているようだった。

　「テルさん、なんだか最近、時間とエネルギーが全部仕事に吸い取られてる気がするの。」

カナコは深いため息をつきながら話し始めた。「お金を稼ぐのは大事だけど、それだけのために毎日を消耗してる気がして…。」

　テルは彼女の話を静かに聞きながら、柔らかい笑顔で答えた。

　「カナコさん、それなら今日は『りんごと白菜のサラダ』を作りましょう。このサラダには、バランスを見直すヒントが詰まっていますよ。」

　そう言って、テルはキッチンに向かい、手際よく材料を用意し始めた。

　「白菜は栄養たっぷりで身体を整えてくれる野菜。そしてりんごは、心を和らげてくれるフルーツ。これらを組み合わせたこのサラダは、まさに時間とエネルギーのバランスを象徴する料理です。」

　カナコは興味深そうにその様子を見守る。テルが白菜を塩で揉み、りんごを細切りにして塩水でさらす間、彼の手は滑らかに動いていた。そして調味料を混ぜ、全体を和えると、さっぱりとした見た目のサラダが出来上がった。

　「さあ、どうぞ。『りんごと白菜のサラダ』です。」

　カナコは一口食べると、爽やかな味わいが口いっぱいに広がった。りんごのほのかな甘さと白菜のシャキシャキ感が絶妙にマッチしている。

　「美味しい…！この味、なんだか気持ちまで軽くなる気がする。」

　カナコは顔をほころばせた。

　テルはそっと語りかけた。

　「お金を得るために時間とエネルギーを使うのは素敵なことです。でも、その過程を楽しむ心の余裕も大切です。忙しい日々の中でも、ちょっとした幸せや喜びを見つけることで、人生全体のバランスが取れるんですよ。」

　カナコは少し考え込みながら頷いた。

　「確かに、最近は目標ばかりに気を取られて、今を楽しむ余裕がなかったかも…。このサラダみたいに、シンプルなものでも楽しめる心を持たないとね。」

　テルは微笑みながら答えた。

　「その通りです。お金も大事ですが、心の栄養も同じくらい大切です。今日の幸せを味わいながら、一歩一歩進んでいきましょう。」

　カナコはサラダを最後まで美味しそうに食べ終えた。彼女の表情はどこか晴れやかになり、食堂を出ていく足取りも軽くなっていた。

　テルの食堂には、また一つ新しい物語が加わった。

　それは、人生のバランスを見つけるための小さなヒントが詰まった一皿のサラダと、それを楽しむ心の変化の物語だった。