第26話:決着
『しかしハンターに支払われる報酬が多いことは事実です』
まぁ確かに俺みたいなハンターは楽して稼がせてもらっていますがね。
『誓って言いますが、国が経済効果以上の報酬をハンターに支払っている事実はありません。御疑いなら帳簿を調べてもらって結構です』
はっきりと学院理事はそう言った。そしてサニーの担当者もそれに同意する。
『そもそもですが、ここに来た記者の皆様からは、名刺を受け取っております。その上で気付くことはありませんか?』
『?』
風向きが悪い。それは察しているのだろう。その上で、理事の言っていることが分からないらしい。
「にゃー?」
そしてリインも分かっていなかった。俺は大体わかっているが、あえて何も言わない。というか部屋でテレビを見ているだけなので言ってもしょうがない。
『この記者会見に来ている記者の皆様はフリーか、ハンターに対して否定的な記事を書いている報道機関の人物であるということです。名刺を公開はしませんが、大手の報道機関の記者は一人も来ていません。わかっているのです。そもそもこれが非難に値するニュースではないことを。穿った見方をすれば、冷静に考えれば子供でも分かる理屈であることを誰でも知っています。その上で我々があえて記者会見を開いたのは、ハンターへの批判記事を無力化するためです。根本的に大手の記者が来ていないのにはそういう理屈があります』
まぁな。
『我々がバカだと言いたのか!』
『ソースを見聞せずに批判意見を口にしないでいただきたいと申し上げているのです。そもそもですが基本に立ち返りましょう。件のハンターは何かマズいことをしましたか?』
『別パーティの利益を掠め取って大金を……ッ!』
『それについては理性的な反論をしたと我々は思っております。なのでソレ以上は何も申しません。この記者会見に来ている皆様には、既に語るべきことを終えております』
まぁそうなるよな。そもそも批判されることを俺もリインもしていない。
『国民の皆々様。ハンターは我々のエネルギー消費社会を維持している貴重な人材です。その彼らを報酬が高いという理由で非難することは軽率だとお思いください。国家は断じて経済効果以上の報酬をハンターには支払っておりません。彼らは命を賭けて我々の消費社会の礎となってくださっているのです。その事に感謝こそすれ、批難など不当だと思いはしませんか?』
「あ、アンチが消えたにゃー」
スマホを弄りつつ、リインがそう言う。
『おつにゃー』
『おつにゃー』
『おつにゃー』
『おつにゃー』
リインのSNSに勝利報告のコメントが放られる。
「おつにゃー。やっぱり私悪い事してないよね?」
『してない』
『そもそも問題になってない』
『ていうか未だにハンターの経済効果を知らないマスメディアがいたんだな(笑』
「まぁ否定派の意見ってのは人類に淘汰できない腫瘍だからなぁ」
そんな俺の声を拾って、スマホがコメントに書き込む。
『今のパイセンのコメントか?』
『パイセンマジないわ~』
『マジないわ~』
「やかましい」
「はいはい。じゃあまた明日からダンジョン潜るから。皆様においてはライブ配信を見逃さないように要注意を……」
「スーチャよろしく」
『パイセン遠慮がないw』
『でもわかるわー。リインちゃん廃課金だもの』
『俺らのリインちゃんがパフォーマンスを維持するためにパイセンは必要』
『マジないけどな』
「マジで金ねーんだよ。言っとくけど丁級ハンターなんてブラック職種だからな。死亡リスク掛けて一回一千万とかFXよりひでぇ」
『リインちゃんに寿司に連れて行ってもらえ』
『リインちゃん一億くらい持ってるんだろ?』
「持ってにゃいよー」
「マジ廃課金。俺がいないと餓死寸前」
『さすが我らのリインちゃん』
『一番真っ当なハンターだな(笑』
『経済効果というか。確定申告どうしてんの?』
「払ってるにゃーよ? その上で廃課金してるんだから。あと魔法のカードを買えば節税にもなるし」
「節税っていうか、財産全部ぶん投げてんだろうが。俺の金で食う飯は美味いか?」
「美味い」
殺してしまおうかなコイツ。
『まぁまぁパイセン』
『俺らのリインちゃんをよろしくお願いします』
『魔法のカードは家賃まで』
『またドラゴニックバレルを見れるよう期待しております』
「モンスター倒す前に家賃を払え!」
『正論』
『道理』
『王道』
『でもリインちゃんには無理』
「みんにゃよくわかってるにゃー」
「せめてテメェは自分の飯代くらい稼げ!」
「そこはマジナ先輩に期待しているにゃー」
『ほれ。戦績(URL)』
『ハンターに否定的な記者。顔真っ赤にして記事書いてる』
『だからエネルギー消費社会にハンターが必要って何でわからない』
『頭悪いんだろ』
「へー。記事書いてんだ」
「どうしても天寺リインを悪者にしたいらしいな」
『わ・ら・え・る(笑』
『ハンターが簡単に数十億稼ぐ社会に問題が……だってwww』
『お前はさっきの記者会見で何を聞いていたwww』
「頭が悪いというか。ここまでくると意地になってんだろうなぁ」
『パイセン正解!』
『どうしても認められないんだろうな』
『哀愁戦士ヒーローキシャーン』
「じゃ。ダンジョン潜るか?」
俺の電磁銃マヨイバシも弾丸は補充したし。当たり前だがリインのトリセツも魔法のカードで課金はモリモリしている。ぶっちゃけ俺が丁級でなければ、中層くらいは普通に行ける。丁級がパーティにいると上層までしか攻略できない。丁級を排除して丙級だけでパーティを組めば、中層までは行ける。下層まで行くには乙級が必須。最高位である甲級は自由に深層まで攻略できるのだ。
「な、わけで、ダンジョン潜るか」
「にゃんにゃらウツロ呼ばない? あのメテオールにも会いたいし」
賢者の石を取り込んだスライムな。おかげで苦労したが、それによってウツロのテイムモンスターは進化したらしい。
スライム→ショゴス→カオティックリキッド(今ここ)。
なんでも無限再生によって不死を獲得し、賢者の石の副産物の能力でアルカヘストも獲得。超流動と体内格納はそのまま。さらに混沌化によって肉体を色んな材質に変化させる能力まで獲得。もはやスライムと呼ぶのもおこがましい。混沌の液体。まさにカオティックリキッドと呼べる。こっからさらにエーテルプリズムを食い散らかせばエンシェントカオスまで進化するんじゃないか?
「じゃあウツロ呼ぶかー。メテオールも憎めんしな」
『トレジャーテイカーと潜る気か(笑』
『でも実際に儲けはあったよな』
『スーチャします!』
『大部分メテオールに奪われるに万馬券を買う』
『そんな理由でスーチャすな(笑』
「ふおおおお! 師匠! リインさん! また声かけて貰って嬉しいっす!」
で、ウツロは相変わらずらしい。
「誰もボクと組んでくれないんすよ!」
「ていうか反応早くね?」
「記者会見からこっち。リインさんのSNSを張ってましたっす!」
それも怖いが。
「ていうかメテオールの能力なら丙級ハンターなれるんじゃね?」
「今申請していまーす。今度試験受けるんで。受かったら御影師匠も一緒にダンジョン潜りましょうねっす!」
そりゃ有難い話だな。
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