17. 遺灰
ようやくたどり着いた自宅――――。
玄関を開けると、
大きく息をつくと、ユウキは震える手でリュックを持ち上げる。その重みが、改めて胸に迫ってくる。
「よっこいしょっと……」
まるで
しかし、依然として微粒子はただの砂同然で、ただの砂の山にしかならない。
ふぅ……。
ため息をついたユウキはカーテンを開けた。
西日が差し込み、部屋全体が柔らかなオレンジ色に包まれていく。その温かな光の中で、黒い粒子がキラキラと神秘的な輝きを放っていた。まるで星空のように、無数の微細な光が瞬いている。
「これが……リベル? 本当にリベルに戻る……のかなぁ?」
ユウキは黒い砂の山を見つめながら、掠れた声で呟く。その
ついさっきまで、この砂の集合体は確かに美しい少女の姿をしていた。彼の人生で初めての、そして運命的なキスの相手。その柔らかな唇の感触が、今も鮮明に残っているというのに――――。
しかし、目の前にあるのは、どう見てもただの砂の山でしかない。理解しようとすればするほど、現実が遠ざかっていくような感覚に襲われる。それでもユウキは、この黒い粒子の山から一瞬たりとも目を離すことができなかった。
「リベルぅ……。君は世界一強いんだろ……?」
ユウキはうつむいて、あの
「君は世界一美しい……。ねぇ……。ねぇってばぁ……」
ユウキは震える手を伸ばし、砂山に手を突っ込んだ。冷たい粒子がサラサラと指の間を
「ねぇ! 本当は聞こえているんじゃないの?!」
ユウキは
しかし――――。
何も起こらない。ただ、サラサラと指の間から微粒子は零れ落ちていくばかりだった。その音はまるで砂時計のように
「リベルぅ……」
リベルは、彼にとって唯一の希望だった。絶望的な日常に突如として現れた美しい少女。そんな彼女の、まるで
やがて宵闇が忍び寄り、部屋の隅々まで闇が広がっていく。
その静寂を破るように、ぎゅぅぅと腹の虫が鳴いた。どれほど心が悲しみに沈んでいても、空腹は容赦なくやってくる。その生命の営みの前で、ユウキは自分の無力さを痛感していた。
しかし、停電で真っ暗な室内では、何をどうすればいいのか見当もつかない。途方に暮れて首を傾げた、その時だった。
ブゥン……。
突如として冷蔵庫のコンプレッサーが唸りを上げた。停電の終わりを告げるその低い震動音が、まるで生命の鼓動のように響き渡る。
次の瞬間――――。
砂鉄の山が、まるで夜明けの太陽のような淡い黄金色の光を帯び始める。その輝きは、希望の光のように柔らかく、温かくユウキの顔を照らした。
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