5. 死神の影
「きっと、どこかに答えがあるはずだ……」
ユウキの呟きが、冷たい風に乗って虚空へと消えていく。その一片の言葉には、希望の持てる未来を見たいという
その時だった――――。
「え……? 何だろう、あれ……?」
視界の端に捉えた異様な動きに、ユウキの
しかも――――こちらに向かって来ている!?
「ヤバいヤバい!」
もし見つかったらどうなるのだろうか? まさか無防備の学生を殺してはこないと思うが――――。
だが、ここは戦場だ。何が起こるか分からない。湧き上がる恐怖が、ユウキの全身の細胞を凍りつかせる。
息を殺したまま、ユウキはそっと顔を上げ、接近してくる人影をチラリと覗き見る。
ひっ!?
心臓が喉元まで跳ね上がった。それは――――美しい少女だった。風に
だが、その天使のような容姿とは裏腹に、少女の
これが――――噂に聞いた、オムニスの新型アンドロイド兵器なのか?
風鈴のように澄んだ声で上機嫌に歌を口ずさみながら廃墟の上空を舞うその姿は、死神の舞踏のように美しくも不気味だった。
荒廃した廃墟に、死の歌声が支配的な重みを増していく――――。
ユウキの心を引き裂くように、清冽な声が響き渡った。
「チョロチョロと目障りねぇ……」
透明感を持つ声音とは裏腹に、その言葉には冷徹な殺意が滲んでいた。
人類の科学では到底及ばない意図を持って、アンドロイドの少女は右腕を天に掲げる。しなやかな指先が空を切り裂き、オーケストラの指揮者が奏でる死の旋律のごとく、振り下ろされた。
極寒の地を思わせる冷たさを纏ったエネルギーが放射され、ユウキは一瞬視野が真っ青に染まった。
ズン! と、
骨の髄まで響き渡る衝撃波が、少年の魂を根底から揺さぶる。
「ひぃぃぃ!」
抑えきれない悲鳴が漏れた。圧倒的な力の前には理性も、好奇心も、全てが粉々に砕け散る。希望の灯火は一瞬にして消え去り、純粋な恐怖だけが心を支配した。
ユウキは本能の赴くままに、近くの崩れかけた倉庫へと走り出す。足がもつれ、転びそうになりながらも前へ前へと必死に突き進んだ。
しかし、少年の背中には、人間の無力さを嘲笑うかのように、死神の影が寄り添っていたのだった。
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