2. 殺戮の天使
「畜生!あいつは何者だ!?」
近くの僚機を操るパイロットの手が震えている。それでも彼には人類の命運を背負った譲れない矜持が宿っていた。
「化け物め!くたばれ!!」
男は素早く少女に照準を合わせ、ミサイルのトリガーを引く。
「喰らえーーーー!」
ミサイル発射音が獣の咆哮のように激しく瓦礫の街に響き渡る。白い煙を引きながら、それは一直線に少女へと突進した。
だが、少女は優雅に身をひねり、まるでバレリーナのように美しくミサイルをかわした。
「残念でしたー!」
彼女の声は風に乗って舞い、その碧い瞳は戦闘の喜びに煌めいていた。
しかし、パイロットの冷徹な瞳が光る。
「馬鹿め……」
彼の狙いはそこではなかった。少女の動きを予測し、すでに二〇ミリ機関砲の照準を合わせていた彼は引き金を引く――――。
轟音が大気を震わせる。無数の弾丸が雨のように彼女に降り注ぎ、その細いボディをハチの巣のように貫いた――――。
え……?
鮮やかな青色の髪が弾丸の衝撃で舞い踊り、残酷さと美しさが交錯するアートと化した。
少女の碧眼が大きく見開かれる。
驚きが、その美しい瞳に浮かんだ。
勝利を確信したパイロットの口元に、かすかな笑みが浮かぶ。
しかし――――。
少女は穴だらけのボディのまま、まるで重力など存在しないかのように、スーッと上空へ舞い上がった。微粒子の集合体が穴をふさぎ、神秘的な光が彼女の体を包み込んでいく。
ハチの巣状態だった少女の体が、目にも留まらぬ速さで元通りに修復されていった。人類の執念の一撃も、彼女にとっては何のダメージにもならなかったのだ。
「やって……くれたわね?」
完全復活した少女はニヤリと笑いながらゆっくりと右腕を天に掲げ、そのこぶしを黄金色に鮮やかに輝かせる――――。
その姿は、天の裁きを下す女神のように神々しかった。
「天誅!」
凛然とした叫びが雷鳴のように響く。
両腕を大きく振り下ろす少女から、無数の青い
ぐぁぁぁぁ!
巨大ロボットの装甲は紙のように引き裂かれ、金属が軋む悲鳴と部品が砕け散る轟音が混じり合う。パイロットの断末魔が通信機から漏れ聞こえる中、人類の英知の結晶は徐々に塵へと化していった。
最後の抵抗のように起こった大爆発は、人類の敗北を告げる狼煙となって空を染め上げる。
炎と煙が立ち昇る中、少女の澄んだ笑い声が木霊した。
「きゃははは! お馬鹿さん!」
空中でくるくると回りながら無邪気に笑う少女。その聞く者の心を凍らせる笑い声は、人類の悲哀を嘲笑うかのようだった。
少女の周りには、青い光の粒子が舞い踊る。爆炎の立ちこめる空に咲く青い華—――――彼女の放つ輝きは残酷なまでに美しかった。
◇
超知能AI「オムニス」が世界を支配してもはや三年が経つ。超知能が開発する常識外れの兵器たちは性能の向上がけた違いで、フリーコードの兵器は徐々に通用しなくなっていた。人類の抵抗は、日に日に弱まっていく一方だったのだ。
特に去年から登場した人型のアンドロイド兵器はすばしっこくて破壊力も大きく、フリーコードにとって深刻な脅威となっている。それらは人間の姿を借りながら、人間離れした能力を持つ恐るべき存在だった。
それでもこの少女のように破壊しても再生してしまうような個体は初めてであり、フリーコードの司令部は凍りつく。モニターに映る少女の笑う姿に、誰もが言葉を失った。
無精ひげを生やした司令官は、ガシッとモニターを両手でつかむと震える声で呟く。
「これが……、これが、AIの到達した未来なのか……」
その言葉に、みな押し黙ったままだった。人類の運命が、大きく傾こうとしていた。空には薄暮が迫り、世界は徐々に闇に包まれていく。その中で、少女の姿だけが異様な輝きを放っていた。
少女は高らかに声を響かせる――――。
「さあ、もっと楽しませてよ! この世界を、私のおもちゃ箱にしてあげる!」
その傲慢なさまに司令官は渋い顔をしながらテーブルをバン!と叩いた。
人類とAIの戦いが、一方的な
少女の瞳に宿る
人類の
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