第38話 見せてあげたいの!
「っ!?」
予想していたこととは全く違うことを言われ、俺は思わず驚きの声を上げてしまう。
「い、いきなり何を言ってるんだ!?」
が、今の発言はその中でも突拍子が無かったためそう言うと。
陽瀬は、すぐに口を開いて言った。
「空風からしたらいきなりかもしれないけど、私からしたらいきなりじゃないよ」
「え……?」
今の話の流れから考えれば、間違いなくいきなり。
だと感じたことをすぐに否定されたため困惑していると。
陽瀬は、そんな俺に向けて続けて言う。
「ほら、テスト勉強の時!
そう言われた俺は、もう約一ヶ月前となるその時の記憶を思い出す────
「思いついた!空風も男子だし、おっぱいとか興味無い?もし興味あるんだったら、お礼におっぱい見せてあげるっていうのはどう?」
「もちろん、私だって誰かにおっぱい見せたりしたことなんて無いから恥ずかしいけど……でも、それが空風のためになるなら、してあげたい!」
しっかりとその時のことを思い出した俺は、少し間を空けてから言う。
「そういえば……そんな話もしたな」
俺の言葉に対して頷いた陽瀬は、それで、と続けて。
「その時空風が私のおっぱいに興味あるって言ってくれたから、見せてあげたいなって思ってたんだけど……あれからうやむやになっちゃって見せてあげられるタイミング無かったから、今見せてあげたいなって思ったの!」
「……話の流れはわかったが、どうしてそれが今なんだ?」
今の話を聞くと、いきなりと言ったのは俺の誤りだったとは思う。
しかし、それがどうして何の突拍子も無く今なのかはやはりわからない。
そう思い聞くと、陽瀬はより頬を赤らめながら言った。
「さっき、廊下を歩きながら空風と話してて今見せてあげたいなって思ったんだよね。優しい空風に、私の、全部を────え、えっと!とにかく!今空風におっぱい見せてあげたいと思ったのは、そういうことだから!」
何かを言いかけた陽瀬は、より恥ずかしそうに。
そして、慌てた様子でそう言った。
不明な点はいくつかあるが、一応頭の中で状況を整理することはできた。
とは言っても、それを受け入れるかどうかは別問題だ。
心の中でそう思った俺は、その旨を言葉にする。
「陽瀬の気持ちは嬉しいが、そもそもの大前提として。いくら俺が陽瀬に勉強を教えてるお礼だったとしても、そのお礼のために無理やり陽瀬にそんなことはさせられな────」
「無理やりじゃないよ!」
力強く否定した陽瀬は、俺との距離を一歩近づけてきて。
「前言った通りちょっと恥ずかしいのは事実だけど、もし私がおっぱい見せてあげるだけで空風の疲れがほんのちょっとでも和らぐなら、私はいくらでも空風におっぱい見せてあげられるよ?……ううん。見せてあげられるんじゃなくて、見せてあげたいの!」
そう言いながら、陽瀬はいよいよ俺の目の前までやってくると。
頬をより赤く染めながら、小さく口角を上げて甘い声色で言った。
「だから、今から私のおっぱい見せてあげるね?」
そう言って、自らの自らの胸元に手を近づけていく陽瀬。
「……」
こんなことはダメだと力強く言うべき、だが。
ここまでしてくれる陽瀬の優しさ、そして今までの陽瀬の発言を思えば。
ただ、常識的にそんなことをしてはいけない。
なんて理由で否定することは、とてもできない。
なら、常識的じゃ無いから、ではなく。
純粋に、俺自身の感情で否定すれば良いところだが────そんな感情も湧いてこない。
「やっぱり、ちょっと恥ずかしいね。でも、すぐ見せてあげるから、待っててね」
恥ずかしそうに言った陽瀬は、第一ボタンを外す。
友達が、優しさで今俺に体を見せようとしてきているのなら、そんなことはダメだという感情が湧いてきてもおかしくない。
いや、湧いてこないといけないのに……湧いてこない。
どうして、この状況を否定するような感情が何も────
「あかりちゃん、ちょっといい〜?」
「っ!?」
「っ……!」
陽瀬が第二ボタンを外した直後。
外から、プロデューサーさんの声が聞こえてきた。
ま、まずい!
もし陽瀬の着替え中に俺も同じ部屋に居るなんてところを見られたら、何かの誤解を生んでしまう可能性が────
「空風、こっち!」
俺が思考をまとめていると、陽瀬は俺の右腕を握ってきた。
「ひ、陽瀬?」
そのまま、陽瀬は俺のことを引っ張るようにして歩くと。
俺のことを、この部屋の中にあるクローゼット前まで連れてきた。
「なるほど……プロデューサーさんがどこかに行くまで、ここに隠れるってことか」
「うん!」
そういうことなら、変な誤解を生まずに済んで俺としてもありがたいため。
俺は、陽瀬と一緒にそのクローゼットの中に入った。
もしプロデューサーさんが陽瀬に用事があるとしても、クローゼットの中まで確認したりはしないだろうから、ほとんど安心……と思いかけた時。
ふと、胴体に強烈な柔らかさと弾力のあるものが当たっていることに気がついたため。
俺がその感触の方に視線を向けると────
「っ!?」
その視線の先では、陽瀬の柔らかく大きな胸が俺の体に密着していた。
────この状況が、今まで女性経験の無い俺にとってどれほど大変な状況かは言うまでもなく。
俺は、今にも心臓の鼓動を早くしてしまっていた────
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