第21話 私に甘えてください
翌日。
学校に登校して、席に着くと────
「おはよう!
いつにも増して元気な様子の
「おはよう、今日はいつも以上に元気だな」
俺も挨拶を返すと、陽瀬が俺の方に身を乗り出して言う。
「そう!今日の空風との服選び楽しみすぎて、昨日からずっとそのことばっかり考えてた!」
「そんなに楽しみに思ってくれてたのか」
「うん!服とか見るだけで楽しいのに、今日はメンズ、しかも空風の服選んであげれるなんて本当楽しみ!」
陽瀬に遠慮して服選びというお願いにしたつもりは全く無かったが……
俺の純粋な願いによって陽瀬が喜んでくれているのなら、これが一番最適な形だろう。
「勉強は空風にいっぱい教えてもらったけど、服のことなら私に任せて!私が空風に似合う服バッチリ選んであげる!」
「今を馳せる人気モデルにそう言ってもらえると、頼もしいな」
俺が本音でありながらも揶揄うように言うと、陽瀬は照れた様子で言った。
「ちょ、ちょっと!恥ずかしいからそれやめて!」
「この間本屋に行ったとき、陽瀬が表紙を飾ってる雑誌を見かけ────」
「だからやめてってば〜!!」
そんなやり取りをしながら、俺たちは朝の時間を過ごした。
そして────昼休み。
屋上のベンチで、
「先日中間テストが終了しましたが、
白百合先輩が、そんなことを聞いてきた。
俺は箸を進める手を止めると、その質問に答える。
「一応学年の中だと上位で、白百合先輩に勉強を教えていただいたこともあって、俺の中でも定期テスト最高点を出すことができました」
「まぁ、それは良かったです」
優しく微笑んで言う白百合先輩。
そんな白百合先輩に対して、俺は聞く。
「白百合先輩は、今回のテストでも満点で一位だったんですか?」
「恐れ多いですが、一応今回もそのようになっています」
小さく頷いて答える白百合先輩。
……やっぱり、この人は本当にすごい人だな。
「今回、俺は学年上位で定期テスト最高点を出すことができましたけど……とても満点なんて出せないので、本当に尊敬します」
素直な気持ちをそのまま伝えると、白百合先輩は首を横に振って。
「私など、律さんの尊敬する人物には成り得ません。むしろ、私の方が律さんのことを尊敬しています」
「え……?白百合先輩が、俺のことを……?」
「はい。学業とお仕事を両立しながら学年上位を取り、自らの中で最高得点を出されたこと……このことは私のテスト結果よりも尊敬足り得るものだと、私は考えています」
「白百合先輩……ありがとうございます」
白百合先輩がそんな風に言ってくれるなんて思ってなかったが、俺はその言葉に対してしっかりと感謝を伝える。
尊敬……か。
「……でも、やっぱり俺はまだまだです。落とさなくても良いところを落としていたり、純粋に計算を間違えていたり」
「問題点が見えているのでしたら、私は十分だと思いますよ。後は、その部分を今後間違わないようにすれば良いだけですから」
続けて、白百合先輩は自らの胸元に手を当てて。
口角を上げながら、穏やかな表情で言った。
「そして、その部分は私が律さんにお教えして差し上げます」
「白百合先輩……本当に、何から何までありがとうございます!」
「私はまだ、勉強を教えて差し上げているだけで、何から何まではしていませんよ……しかし、律さんには本当に何から何までして差し上げたいと考えております────」
ですので、と続けて。
「……っ!?」
白百合先輩は、俺の顔を自らの胸元に埋めるように抱きしめてくると……
俺の耳元で、優しくも甘い声色で囁くように言った。
「律さんは、もっと私に甘えてください。律さんが私に甘えてくださるのであれば、私はそれがどのようなことでもお応えし……律さんの全てを、お支えして差し上げますから」
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