第5話 お礼の方法
「────解けた〜!
中間テストも近づいてきた今日この頃。
今日も、休み時間を使って教室で
「解いたのは陽瀬だ」
「そうだけど、解けたのは空風がめっちゃわかりやすく教えてくれたからじゃん!だからありがと!」
明るい笑顔で俺に感謝を伝えてくる陽瀬。
「その感謝はありがたく受け取っておくが、陽瀬も思っている以上に覚えが良いから俺としても助かってる」
「え、私って覚え良いの!?そんなこと言われたことないんだけど!!」
「そうなのか?少なくとも俺はそう思ったが」
抱いたことを偽らず言葉にすると、陽瀬は少し間を空けてから小さな声で呟いた。
「そっか……空風が教えてくれてるから、私今までに無いぐらい集中してるんだ」
「陽瀬?」
俺には聞こえないほど小声だったが、俺の名前が聞こえたような気がしたため疑問符を付けて呼びかけると、陽瀬が慌てた様子で言った。
「な、何でもない!それより、私に勉強教えることが空風の負担になってたりしない?」
「大丈夫だ。最近はほんの少しだけだが、前と比べてバイトも減らしたからな」
俺だけの気持ちとしてはあまりバイトは減らしたく無いのだが、あそこまで陽瀬も含めた複数人に心配されてしまえば減らさざるを得ない。
「確かに、前と比べたらちょっとだけ顔色良くなった気するけど……」
俺の顔をジッと見つめた陽瀬は、少し間を空けてから言った。
「やっぱり、まだまだ疲れは残ってるって感じの顔してるよ?」
「それは……そうだな」
先ほども言った通り、バイトの数を減らしたのは少しだけ。
増やせば増やすだけ疲れが溜まるなら、減らせば減らすだけ疲れが減る。
その前提で、バイトの数を減らしたのがほんの少しだけなら、疲れが減るのもほんの少しだけということだ。
とは言っても、陽瀬たちが俺の生活を支えたいなんて言い出したあの日から。
俺は、陽瀬たちの前ではあまり心配させないためにも、少し背伸びをするように疲れを隠しているつもりなんだが……
やはり、そう簡単に隠し切ることは難しいらしい。
「空風がこうして私に勉強教えてくれてるみたいに、私も何か空風の力になってあげたいんだよね」
「俺は別に、陽瀬がこうして俺と過ごしてくれるだけでも良い……明るい陽瀬と話すのは、俺にとって良い息抜きになってる」
「え!?そ、そう?……えへへ」
照れたように頬を赤く染めて笑う陽瀬。
「でも、空風と話せるのは私にとってもって言うか、むしろ私の方が────とにかく!!」
先ほどまで頬を赤く染めて笑っていたはずが、突然力強く言う陽瀬。
……今日はやたらと陽瀬の情緒が激しいな。
なんて思っていると、陽瀬は続けて口を開いて言った。
「私も何か、空風にお礼とかしてあげたいんだよね……空風の疲れを無くすっていうか、癒してあげる手伝いとか!」
「疲れを癒す、か……」
俺としてはこうして陽瀬と過ごしているだけでも十分なんだが、陽瀬はそれでは納得いかないということらしい。
「そういう意味で、何か良いお礼方法無いかな?例えば、中間テスト終わりにある私のモデル撮影見学……は別に癒されないからお礼にならないよね」
男子人気の高い陽瀬の、モデル撮影見学。
誘った相手が誘った相手なら癒されるどころか喜びで逆に体力を使ってしまうほどのものだと思うが、俺はそういった性格ではないため癒されることは無いだろう。
……というか。
「俺は別に、そんなことをしてもらわなくても────」
「待って待って!今ちゃんと空風の疲れが癒される良いお礼の方法考えるから!」
「……わかった」
食い気味に待ったをかけてきたため、ここは大人しく待つことにしよう。
だが、俺の疲れがそう簡単に癒される方法なんて……と思っていると────陽瀬が、衝撃的な言葉を口走った。
「思いついた!空風も男子だし、おっぱいとか興味無い?もし興味あるんだったら、お礼におっぱい見せてあげるっていうのはどう?」
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