第7話 入学式

「制服……よしっ、髪型、よしっ、うんっ、今日も可愛いっ!!」


 鏡を見ると今日も立派な美幼女がいた。

 黒を基調とした制服も似合ってるなぁ。


「エンドリィ、エンドリィ!」


 ドンドンと扉を叩く音。この声と遠慮の無さは間違いなくケアフだろう。


「はいはーい、今行くよぉ〜!」


 最後にもう一回だけ櫛で髪を解いて、鞄を持って扉を開ける。


「おぉ、おっはよぉー! エンドリィ!」

「えへへっ、おはよう! ケアフちゃん!」


 両手を挙げて挨拶するケアフの姿がなんとも可愛らしい。

 制服もよく似合っていて、黙っていれば神秘的な雰囲気すら感じていただろう。


「それじゃ、いくぞ〜!」

「うんっ!」


 ケアフに手を引かれ、寮の玄関まで行くと、そこには人影が一つ。


「……おや、オフタカタ! てっきりネボウしたものかとおもってましたよ!」

「みゃーたちをなんだとおもってるんだ!」

「あっ、カインさんっ! もしかして待っててくれたんですか!?」

「……べつに? エンドリィがボクとはなしたいかなーっておもってきをつかっただけです」


 わかりやすいツンデレだ。可愛いな。


「えっへへ、そうですか! ありがとうございます! ……って、今日は眼鏡を掛けてるんですね! 似合ってますっ!」

「ええ、まあ……ダテですけど。ありがとうございます」


 栗色の髪に茶色の瞳。

 金色のフレームがアクセントとなっており、何というかクールな雰囲気を感じる。


「おっ、カインー、もしかしてエンドリィのことがすきになったのかー!?」

「ええ、アナタよりはハナシがつうじるので。さあ、いきましょう!」


 揶揄うケアフを一瞥して、サラッとそんなことを言うと、カインはズンズンと進み出す。


「にゃああああぁぁぁッ!!」


 ケアフの叫びに苦笑いしながら、オレ達は縦並びになって登校する。



「──えっ、一学年に四十人しかいないんですか!?」

「そうですよ。ボクたちはえらばれたエリートなんですからっ!」

「にゃははっ! てれるなぁ〜!」

「だからこそアナタがいるのがフシギなんですけどね」

「にゃんだとぉ……!?」


 建物に入ってすぐの掲示板に貼られた紙を見ると、そこには入学式の座席表があった。

 前世の小学校は一学年に三十五人のクラスが三つあったので、やたらと少なく感じてつい疑問の言葉が漏れ出た。


「私は一番端っこ……Fランクだから当然ですよね」


 座席表を見ると、低ランクから順に奥へと追いやられる形になっていた。


「まあまあ、きをおとさないでください、エンドリィ。ボクはまんなか……よりもすこしハジよりですけど」


 どことなく自慢げなカインの顔。

 まあ、子供だからな。仕方ない仕方ない。


「こんなやつはむしして……やったな、エンドリィ! みゃーたちとなりどうしだ!」

「えへへ、そうだね!」


 どうやらEランクもケアフ一人しかいないようだ。なんだか結束が高まってくるな。


「……むぅ。さあ、はやくコウドウにむかいましょう! エンドリィ!」


 やっぱりこの二人は反りが合わないなぁなんて笑いながら、カインに手を引かれて講堂へと向かう。




「──新入生諸君。おはよう。儂がこの学校の校長、ランブルロック・S・ユミレイトじゃ」


 伸ばされた白い髪、白い髭、いかにもファンタジー世界で学校の校長先生をやっていますよーという容姿のランブルロック。

 この世に存在する六属性の魔法の内、火属性、風属性、光属性、無属性の四属性のエキスパートで、彼が書いた魔法解説本はどれも読みやすくてわかりやすい……いや、正確にはわかった気になれる本だ。

 ランクはS。この世界に生まれた人々なら基本的に誰からも名前を覚えているランクで、数年に一度しか出ない天才。


「それでは、まず初めに何を話そうかのう……そうそう、今日食べた朝飯なんじゃが──」


 なんか朝飯の話を始めたので、一旦ランク制度のおさらいといこう。

 現代人のオレでもわかるように述べるなら……。

 

 SS たった一人の勇者

 S 国の要職の長、天上人であり天才

 A 大貴族、国の要職

 B 貴族、国の要職

 C 上級平民、栄えた村の要職

 ----------上記が王都に住めるライン----------

 D 中級平民、平均的な村の要職

 E 下級平民、寂れた村の要職

 F 貧民


 こんな感じだ。

 で、一番最初に決まるランクは親のランク依存なのだが……。

 七年生に上がる時と十年生に上がる時、そして学校を卒業する時にランクが更新される。それ以降は何かの功績を讃える時に上がったり、失敗した際に下がったりと、そんな感じで。

 ……まあつまり、七年生からが本人の純粋なランクということになる。

 オレはこの六年間で魔法を学び、少しでも上のランクを目指したい。なんだかゲームみたいで楽しそうだし。


「──そして、今日これから食べる昼食なのじゃが」


 うわ、なんか昼飯の話まで始めたぞ! まあまあ面白いのが腹立つな!

 ……とりあえず頭を空っぽにして聞いとくか。



「──諸君らはこの国の未来を支える中心人物となっていくじゃろう。期待しておるぞ」


 ……ランブルロックの話がようやく終わった。

 そう、ようやくだ。

 一時間半も自語りを続けるバケモンおったわ! ケアフなんてぐっすり入眠しているぞ!

 いや、話自体はメチャクチャ面白かったけど!

 そういえばこの人の本もそんな感じだったなぁ!


「……にゃ!」


 オレはケアフを軽く小突いて起こす。

 怒られるよりは小突かれる方がマシだろう。


「では続いて、ゼション君に諸君らへの激励のメッセージを送ってもらおう。それではな」


 その言葉に講堂中が騒めき立つ。

 ランブルロック校長先生が席に戻ったと思えば、壇上には既に黒髪のイケメンが立っていた。


「……ご紹介にあずかりました。ゼション・S・オブトーカーです」


 そう、オレの親戚のあの人だ。

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