付与石で幸運のリング作り

 ここはバナルド王国の城。


 そこにいる国王はイライラした様子で、大臣に話しかける。


「おい、イザークはまだか……」


「はい……木の実をとりに行かせた後、全く音沙汰ありません……」


「クソッ、アイツも我を裏切ったという事か……」


 国王は手に持っていたワイングラスを握りつぶす。


 ワイングラスは粉々に砕け、国王の手はワインと血で赤く染まった。


「大臣!今回の件はお前の責任だ!即刻、お前を処刑する!」


 そう国王が大臣を指差すと、大臣は兵士に取り囲まれた。


「い、いいえ陛下!落ち着いてくださいませ!私は何も……」


「うるさいっ!!!我に責任はない!!!クソッ、こうなったら人民共から税金をむしり取って、何としてでもエベリアをっ!……」


「へ、陛下!正気を……」


 そう言いかけた大臣が兵士に刺される。


 大臣の屍が床に倒れた。


「グヒヒ!……エベリアよ、宣戦布告だ……待っておれ!」


 国王は不気味に微笑んだ。



 ♢



 僕は今、2階層で新しい石を求めて採掘している。


 万能ピッケルで岩を叩くと、中から白っぽい綺麗な鉱石が出てきた。


 鑑定してみる。



【付与石】


 強化バフを簡単に付与できる。バフの効果は永続する。



「これ、万能すぎる……」


 付与石って、例えば【幸運値バフ】を付与しても良いってことか。


 よーし、どんどん付与しちゃえ!


 そして数時間後、僕は”魔王の証のリング”のデザインをパクった指輪、『幸運のリング』を100個も作ってしまった。


 幸運のリングの金属は魔鋼製で、【幸運値バフ】を付与した付与石をはめてある。


 早速僕がはめてみると、【幸運値バフ】と同じような効果を感じる事ができた。


 さて、これを他の5人にもつけてもらおう。


 ということで、サラ、ヘレン、ノア、ミレーラ、カナンを呼ぼうと食堂へ行くと、すでに5人が集まり、何かを言い争っている。


 なんだろう?


 こっそり聞いてみる。


「どしたのヘレン?こんな不味い料理出してさー」


 カナンは怖い微笑みで、ヘレンに圧をかけている。


「いや、妾の最高の料理に何をいうのじゃ!不味いというそなたの舌に問題があると思うがの?」


「だいたいさー、ヘレンはアティラ様に全くお役に立ててない時点でダメだね」


「いや、そなたこそ何もしてないであろう?」


「やめてよ、2人とも!」


 サラが2人を制止する。


「そうですよ。サラ様の言う事を聞きましょうよ。私たちが喧嘩してもアティラ様が悲しみますよ?」


 ミレーラがそう呟く。


 ノアはナーラやコビーとじゃれあっていて、話にそもそも入っていない。


 僕は食堂に入った。


「みんな、この指輪をつけてくれないか?」


 僕は”幸運のリング”をみんなに見せた。


 これをみんながつけてくれれば、このような不毛な争いは無くなるだろう。


「アティラ様、もしかしてボクとけっこんしたいの?」


「いいえ、アティラ様は私の人ですよ?」


「アティラは私が拾ったんだけど、もう……」


 ああああ、これはダメだ。


「そなたらよ、アティラは結婚などという意図で言ったのではないと思うのじゃよ?アティラを困らせて倒するのじゃ」


 ナイス、ヘレン!


 ヘレンは作る料理こそ不味いが、有能なところもあるもんだな。


 ……ということで、何とか全員につけてもらった。


 コビーに関しては指輪をパクッと食べてしまったが、満足そうなので良いだろう……うん。


 すると、スマホから通知音が鳴った。


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