2階層

 僕とミレーラの前に、ノアとヘレンが作った禍々しい色をした料理(?)が出て来た。


 あんな目で見られたら断れないよ……


 隣に座っているミレーラは、僕を少し恨むような目で見てくる。ごめん、ミレーラ!


 しかし、僕にはある秘策がある。


 それは”幸運値バフ”の活用だ。


 僕自身とミレーラに幸運値バフをかける。


 すると、”見た目は禍々しいが、たまたま美味い料理になった”という幸運に出逢える可能性が……出てくるのか?


 いやいや、やる前から諦めてはいけない!何事も試すべし!


 ということで、”幸運値バフ”を僕自身にまずかけ、その後こっそりミレーラにもかける。自分に自分のバフをかけるのは変な感じだけどね。


「じゃあ、食べよう。いただきます……」


 覚悟を決めた。


 禍々しい色をしたスープ(?)をおそるおそる口に運ぶ。


 …………ん?


 これは……う、美味いっ!!!


 むちゃくちゃ美味だ!


 この口どけ、そして旨み、全てが完璧な味わい!ここまでの料理に出逢えるなんて、どんなに幸運なことだろうか!


 僕が美味そうに食べてるのを見て、ミレーラもおそるおそる料理を口に運ぶ。


 すると、ミレーラが急に興奮したように叫ぶ。


「この美味さは世界一ですね!ノア様、ヘレン様はどこの宮廷料理人ですか?!」


「いいえ、宮廷料理人ではありませんわ。でも、お気に召してもらえて嬉しいですわ!」


 ノアはかわいい笑顔でそう言った。


「妾は、かの大国エベリア王国の料理長じゃ!」


 ヘレンは、えへんと自慢げに言った。


 確かに間違ってはないかもね。エベリアが大国かは置いといて……


 あ、そういえばミレーラから事情を聞かないと。


「あの、ミレーラさんはなぜここに来たのですか?」


 率直な疑問だ。


「その……私、アティラ様と冒険するのが楽しくて、アティラ様の側にいたかったからです……ごめんなさいっ、あの時はイザークが怖くて言い出せなくてっ……でもっやっぱり我慢できなくて、勇気出してイザークに反抗して飛び出して来たのですっ……」


 ミレーラはボロボロと涙を流しながらそう言った。


「まあ……しばらくここに居ても良いですよ」


「あ、ありがとうございますっ!!!」


「部屋もつくっておきますので、少し待っててください」


「アティラ様にそんな迷惑をおかけして良いのですか?!」


「簡単ですし、全然大丈夫です!」


 簡単なのは、”万能ピッケル”のおかげだけどね。


「ほ、本当にありがとうございます!!!お礼に、この子を呼びます……」


 そう言ってミレーラは何か魔法を詠唱しはじめた。


 すると、目の前に魔法陣が現れ、そこからリスが出てきた。


「この子はコビーっていう名前の森の精霊です。私がテイムしたのですが、アティラ様が使役して頂ければ……」


「あ、そうですか」


 コビーを見ると、豪快にあくびをしていた。


「あの、この子って好物とかはありますか?」


「ええと、確か魔石が大好物でしたよ」


 おお!魔石!


「ありがとうございます!」


 早速僕は、聖魔石のかけらを持ってきた。


 そしてコビーにあげる。


 コビーは目を輝かせ、小さい手でかけらを持ってそれを嬉しそうにパクッと口に入れた。


 すると……あれ、どっか行った。


「どっか行ったんですけど、大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよ。すぐに帰ってくるので……しかし、さっきコビーにあげた魔石、あれどう見ても聖魔石じゃないですか?!あんな国宝級のものあげて良かったんですか?!」


 国宝級?大げさだなー。


「大丈夫ですよ、あれいっぱいあるので」


「い、いっぱい?!……」


 ミレーラが呆然としていた。


「あ、あの、部屋つくってきますね!」


「あ、ありがとうございます!」


 僕は”万能ピッケル”を取り出し、部屋をつくりはじめる。


 ちなみに鉱山の構造は、入り口に入って下に降りるとまずはじめに広場があり、そこの両サイドに工房とサラの部屋がつながっている。広場の正面を進むと廊下が続いており、その廊下からトイレや僕、ヘレンの部屋など各部屋がつながっていて、突き当たりに魔石の採掘場がある。


 部屋をつくり始めて3時間後、部屋が出来上がった。


 それと共に、スマホから通知音が鳴る。


「なんだろう」


 見てみると、『採掘ポイントが18に達したので、2階層が解放されました』と出ていた。


 部屋の外に出てみると廊下の突き当たりに、今までなかった下への階段が出現した。



 ★



【アティラの鉱山】


 階層:2


 採掘ポイント:19


 発見した魔石:聖魔石/光魔晶石/ダーククリスタル/火魔石/魔鋼


 人口:5人(+コビー、ナーラ)


 開発した機械:ストーブ


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