鉱山生活の始まり

「サラ、ヘレン、おかえり!」


 サラとヘレンが屋敷に帰ってきた。2人が居ないこの1週間、本当に色々あったな。


「ただいまなのじゃ!」


「いや、ほんとに大変だった……父上ったら、もう……」


 そう言ってサラがため息をつく。何か面倒い事があったのだろう。


 すると、ナーラが屋敷の奥から飛び出してきた。


「キャン!キャン!キャウーッ!」


「おお、子犬ではないか!白くてかわいいのう!」


 そう言ってヘレンがナーラを撫でると、ナーラが嬉しそうに尻尾を振る。


 しかしサラは、ナーラを撫でているヘレンに対して焦った顔をしている。


「もう、ヘレン!フェンリルに軽々しく触っちゃだめだってば!」


 するとそれを聞いたヘレンは、信じられないと言いたそうな顔をした。


「ま、まさかこの子犬はフェンリルなのか?!」


「そうだよ!この見た目だったら、フェンリルに違いない!……でも、なぜここに?」


「いや、それがまだよく分かんなくて……実はこの子、ノアっていう人が飼っていて……」


 僕は2人に、今までの経緯を話した。



「ふーん、つまり新しい女を入れたって事なのかな?」


 なんか、サラが怖い……


「まあ良いじゃろう。新しい友だと思えば良いし、何よりフェンリルのナーラが可愛いからのう!」


 そう言ってヘレンはまたナーラを撫でたりしてじゃれあってる。


 すっかりナーラにメロメロだ。


「まあ良いけど、そのノアっていう人どこにいるの?」


 僕はサラとヘレンを、ノアのいる鉱山に案内した。



「この方たちは誰ですの?」


 ノアがきょとんとして僕に聞いてきた。


「屋敷の持ち主のサラとヘレンだ」


「あら、よろしくお願いしますわ!」


「こちらこそ、よろしく。……ところでこの鉱山、良いね。私もここに住む」


「王女様、何を言っているのじゃ!屋敷があるではないか!」


「屋敷は飽きたな。少しぐらい、気分を変えても良いよね?」


「そ、そうじゃな。では、妾もここに住もう」


「じゃあアティラ、新しい部屋を2部屋つくって欲しいな」


「ああ、分かった。家具とかも屋敷からここに持ってくる?」


「うん、そうしよう」


 という事で、新しい部屋づくりが始まった。


 まさかサラに続いてヘレンまでが鉱山に住むと言い出すとは思わなかったが、鉱山が賑やかになって良いかもしれない。



 ♢



 3日後、ついに2部屋を完成させた。2部屋には発明したばかりのストーブを設置している。


 そして、サラとヘレンを部屋に案内した。


「わあ、良い感じだね!快適に過ごせそう。あと、このストーブ、屋敷にもあったけど最高だね!これで寒い思いをしなくて済みそうだよ……あ、そうだ!」


 サラは何かを思い出したのか、慌てて屋敷に戻って行った。


 5分後、帰ってきたサラは封筒を僕に見せてきた。


「これ、父親からアティラへの手紙。私が開けて読んで良い?」


「良いけど」


 サラはその封筒を開け、中身を取り出した。


「じゃあ読むね。……『アティラさん、ワタシはエベリア国王ヘロシ・エベリアという。アティラさんの冒険中の”孤高の勇者”としての活動は、ワタシもよく耳にしていた。実はそんなアティラさんに、一つ大事なお願いがある。ワタシの娘、サラをもらってほ…………」


 読み上げている途中で、急にサラが顔を赤らめた。


 そして、ぷくーっとふくれっ面になる。


「もうっ……」


 サラは静かにそう呟いた。


 なんか僕も恥ずかしいな……


 すると、鉱山の外からなぜか聞いた事のある声が聞こえてきた。



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