火魔石でつくるストーブ
「父上!直接行くのは周りに迷惑だからやめてよっ!アティラに伝えたい事を手紙で書けば良いのに……」
私は慌てて父親を止めた。
やれやれ、衝動的すぎる。
「そ、そうだな。では手紙を書いておこう」
父親は手紙を書きに奥の部屋へと行った。
そして数分後、手紙が入っているであろう封筒を私に渡してきた。
「サラ、この手紙をアティラに渡して欲しい」
「分かった。責任もって渡す。じゃあ、そろそろ行かないと」
「も、もう行くのか……」
父親は寂しそうな表情で、私を引き留めようとする。
「アティラが心配だし、はやく国境警備の任務に戻らないとね」
「ああ、そうか」
「また帰ってくる」
そう言って私はヘレンと共に、城を出た。
♢
(アティラ視点)
「ここを使って良いよ」
僕は鉱山内につくった部屋を指差す。
ノアが暮らすために用意しておいた部屋だ。
実はベッドなどの家具を、昨日の夜に屋敷からコッソリ持ち出したのは内緒である。
「わぁ!素晴らしいですわ!」
鉱山内につくった部屋はこれだけではない。
新しく工房も開設した。
魔石を使ってさまざまな道具をつくり、便利な辺境スローライフを送りたいと思いたったからだ。
さて、早速僕がつくってみたいものがある。
それがストーブだ。
ここ、辺境ルリネシアは森に囲まれており、冬場は豪雪地帯となる。秋である今でさえ肌寒いほどであり、厳しい冬を乗り切れるかが心配だ。
そこで、厳しい冬に向けてストーブが欲しい。
手元には部屋をつくる時に出てきた数種類の魔石があり、その中には火属性の魔力が宿った「火魔石」や、そのまま金属として使える「魔鋼」がある。
これを使えば、ストーブがつくれるのではないか。
前世で勤務していたブラック企業では家電の設計をやっていたので、ある程度つくる手順の見通しは立っている。
「よし、つくろう」
火魔石自体がかなり熱い。なので屋敷にあったトングを持ち、直接手に触れないようにする。
そして魔鋼を、万能ツルハシを横にして叩く。すると一瞬で魔鋼の塊が平べったい板となった。
これをいくつも作り、組み合わせて四角い容器のようにするなど、さまざまな工程をえて、つくっていく。
そして1時間後……
「出来た!」
僕はついにストーブをつくり上げた。
薪ストーブのような見た目だが、煙も出ないし火事の心配も無い。何より、前世でいう暖房のような強力な効果が見込める。
これを屋敷に持っていこう。
――――――ということで、ストーブを屋敷に置いた。
「いやー暖かい!つくってよかった!」
すると、屋敷の外からサラとヘレンの話し声が聞こえてきた。
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