イザークたちside③ ミレーラの失踪

クッソ、意味わかんねー!


この村の奴ら、アティラを勇者様などと担ぎ上げるし、アティラの居場所を聞いても一向に吐こうとしない。


仕方ねーから女を脅迫して吐かせ、ようやく居場所を突き止めたんだ。


なのに、何だよこのザマは!!!


あの犬ころ強すぎだろぉぉぉ!!!しかもアティラめ、舐めた口を聞きやがって!


「覚えてろよぉぉぉ!!!」


イザークことオレは空に向かってそう叫び、バナシティまで逃れた。


ギルドに入ると、ハーベイが慌てた様子でオレに話しかけてきた。


「す、すみませんイザーク様!実は2つご報告が!」


「なんだ、言ってみろ」


「まず1つ目ですが、ミレーラが失踪しました!!!」


「ミレーラが失踪?!はぁぁぁ?!!ふざけんなぁ!!!」


オレの叫び声がギルド中に響き渡る。


「どうされました?イザーク様!」

「イザーク様、落ち着いてくださいませ!」


オレの信者の冒険者たちが、オレの事をなだめる。


「ああ、落ち着かないとな。しかしあいつめ、前から怪しいとは思っていたが、まさか本当にオレを裏切るとはなぁ!まあ、この勇者様がいるんだ。あんな奴、オレに比べたら雑魚だ」


信者の前では威勢よくそう言ったが、オレの心の中では、相当焦っていた。


ミレーラは、アティラが抜けた後のパーティで唯一使えそうなメンバーだったからだ。


そのミレーラがパーティからいなくなる事はつまり、このパーティやオレの黄金の人生が終焉する事を意味していた。


いや、アティラを追放した時点でもう詰んでいたかもしれない……


そう悩んでいると、ハーベイが話し出す。


「2つ目の報告は良い報告です!」


お?!


「国王陛下に呼ばれました!」


は?


期待したのがバカだった。


国王に新しい依頼をされると、オレたちの真の実力が国王にバレて、オレの勇者としてのライフが終焉するかもしれないんだぞ?!


「クッソ、いつだよそれ」


「今日です!大変名誉ですね!いやぁ、ミレーラはイザーク様を裏切ったばかりに、この名誉にあずかれないなんて……」


「は」


思わず叫びそうになった。今日?!


……いや、落ち着こう。いつだろうが結局国王には会わねばならないんだ。


「クッソもう!今から行くぞハーベイ!」


ハーベイはオレがイライラしている様子を見て不思議そうにしていた。


ハーベイめ、オレらが国王に新しい依頼出されるとマズイって事がアイツには想像できんのか?


オレは、自分の暗い将来を想う。


なぜあの時にアティラを追放してしまったのか、そう後悔するがもう遅い。





オレは心の中で怯えながら、王宮での国王との謁見に臨む。


「おお!イザーク、そしてハーベイよ、ミレーラが失踪している中でよくぞ来てくれた!早速今日の要件じゃが……」


そう言った後、国王が大臣に書状を持ってくるよう指示する。


オレは、その書状が依頼でない事を願うあまり、ドキドキしていた。


しばらくして、国王は書状をオレたちに見せた。


「この書状は宣戦布告の書だ。我は何としてでもエベリアの地が欲しい。そして領土拡大を成し遂げた賢王として、かつてエルフィ大公国を滅ぼした我が祖父のように歴史書に名を残したいのだ!」


これはマズイ。何とかやめさせないと!


「しかし陛下、まだ宣戦布告するには時期が早いかと思います。なにしろ、準備ができておりません」


「そうか?イザークという頼もしき英雄がおれば小国ごとき、一人でも蹴散らせると思うが?」


「そうだとは思うのですが、念には念を入れた方が確実かと思います」


「確かにそうだな。では、これを出すのは3ヶ月後にしよう。それまでに準備を進めてほしい」


「承知しました!」


オレはホッと胸を撫で下ろす。


3ヶ月先延ばしできた。それまでにオレの信者の中から、良さげな奴を選んでパーティに入れてやろう。


幸いオレの信者に中には、オレより強い奴がゴロゴロいる。


これにさらに実践訓練して戦争を迎えれば、エベリアごとき簡単に捻り潰せるな。



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