新しい仲間と、薬草スープ・改
「勇者様!ほ、本当にありがとうございますっ!!!」
僕は最後の村人に、聖魔石を配り終わった。
「いや、礼を言われるほどでは無いですよ。あくまで村の安全のためですから」
そう、村の安全、そして何より自分の住む屋敷の安全のためだ。いわば自己保身のためだ。
「なんと勇者様は謙虚な事か!」
「勇者様の噂は聞いていたけど、想像以上に素晴らしい人だこと……」
そんな話し声が聞こえてきたが、僕の自己保身で配っているという事に気づいていないな。
というか、僕の噂って何なのか。噂になるような事したっけ?
確かに僕は”黄金の虎”の冒険者としてエベリア王国に行った事はある。
そこでパーティを抜け出して、魔物に襲われた村の子供達にお菓子をあげた事ならあった気がする。
でも、勇者って言われる程か?
そういえば、困っている村人たちに幸運値バフをかけてあげた事もあったっけ……
よく覚えてないが、多分勇者と言われるような事はしていない。
さてと、鉱山に戻ろう。
僕は鉱山に戻り、する事を考える。
そういえば、ヘレンが朝ごはんとして薬草スープをつくってくれたな。
あの薬草スープを改良して、美味しく、かつ魔法薬並みに元気が出るようなものが作れないだろうか……
うーん……そういえば冒険者をしてた時、甘い薬草である甘薬草を使ったスープが集落で出されて、とても美味しかったな。
あとそういえば、魔石を煮込んだ水には魔力が染み出すというのを聞いたことがあるなぁ……
そうだ!
その甘い薬草でスープをつくった上で、合わせて他の魔石を入れて煮込んだら、魔法薬の効果を持ったスープが出来るかも!
という事で早速作りたいが、甘い薬草が手元にないし、どこにあるかも分からない。
どうしよう……
「キャンッ!!!」
ん?鳴き声?!
「キャンキャンッ!!!」
なぜかその鳴き声に呼ばれている気がするな。
振り返ってみる。
するとそこには、一匹の、雪のように真っ白な子犬(?)が居た。
「可愛いな。なんていう動物なんだろう」
鑑定アプリをつけてスマホをかざす。すると次のように出てきた。
【フェンリル】
伝説の神獣。相手の思っている事を読み取れる。この個体はまだ幼い。
「フェンリル?!強そう……」
我ながら感想が薄い……
すると、フェンリルが僕のズボンの裾を噛んで、引っ張ってきた。
「キャン!キャンッ!」
僕についてきて欲しいという事か。
という事で、フェンリルの行く先についていく。
そうしてしばらくついていき、森の中へ。
「森の中は危ないと思うけど……」
「ガオー!」
威勢よく吠える。大丈夫と言ってくれているみたいだ。
そうして着いていくと、花畑に出た。
「ここはまさか……甘薬草がある?!」
「キャン!キャン!」
そうっぽい。すごいな、薬草が欲しいと僕が思ったら、その思考を読み取って案内してくれたのか。
「ありがとう!」
フェンリルを撫でてやると、嬉しそうに尻尾を振る。
「キャーン」
ゴロンと転がり、尻尾を振りながら僕を見上げる。
可愛いな。
さてと、ここで薬草をとって帰ろう。
薬草を傷つけないように、慎重に根元からつかむ。
「とれた!」
これをあと20本ほど取り、屋敷へと帰った。
そしてキッチンに行き、甘薬草と光魔晶石、聖魔石を水でつけてしばらく煮込む。
10分後、甘薬草と光魔晶石、聖魔石を取り出し、野菜を切って入れ、さらに煮込む。
5分後、完成!名前は……そうだな、『薬草スープ・改』にしよう!単純だけど。
……で、これどうしよう。一人じゃ食べきれないかも。
「キャンッ!!!」
またもやフェンリルが僕のズボンの裾を引っ張って来た。
今度はどこへ僕を連れていきたいんだろう。
そう思いながら、フェンリルについていく。
しばらく着いていくと、またもや森の中へ。しかも今度は違う方向からだ。
この方向って……国境じゃ?!
「ちょ、ちょっと!そっち国境だよ!危ないよ!」
そう忠告したが、フェンリルは構わずに進む。
そしてついに国境をまたいでしまった。
しかしフェンリルは構わず進むので、僕は心配しながらもついていく。
そうしてしばらく歩き続けると、ひらけた場所に出た。
「こ、これは……」
そこには、ツタが大量に壁に巻きつき、壁がひび割れている古い洋館があった。
「キャン!キャン!!!」
「ここに入って欲しいの?」
「キャンッ!!!」
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