鉱山をつくってみる
「アティラよ、実は王女様はずっとそなたの事を気にしていたのだ!なのでどうか、王女の望みを叶えてやって欲しいのじゃ!」
僕は、エベリア王国の第三王女サラと、そのメイドのヘレンからひたすら土下座されていた。
なぜ僕を?という思いが強い。
しかし何より、第三王女と一緒に生活して無礼をしでかしたら、何をされるか分かったもんじゃない!
僕は今世こそスローライフを送りたいのに、牢屋にぶち込まれるのはゴメンだ!!!
「あのー、申し訳ないですが、とても王女様と暮らすわけには……」
「しかしアティラよ、言い忘れていたが、この辺りはここ以外に村は無い。村の外は魔物で溢れているゆえ、ここに留まるのが得策だと思うのじゃ」
ま、まさか!
そう思ってスマホを取り出し、鑑定アプリの機能を範囲化させた”周辺サーチモード”で、この辺りの情報を調べてみたのだが……
無い!周りに村が全くないだと!
「どうやらそのようですね……ここに居させてもらう事にします……」
僕は渋々、王女の頼みを了承した。夢のスローライフは遠のいてしまいそうだが、やむを得ずだ。
王女の顔が、パァッと明るくなり、少し赤らむ。
「あ、ありがとう。私はエベリア王国第三王女サラ、これからよろしく頼む」
ん?!僕は今更、大変なことに気づいてしまったぞ。
「サラ様、大変申し上げにくいのですが……少々スカートが捲れているかと」
「わっ!!!すっ、すまない……あ、あとサラに様付けするのは、やめてほしいな」
「えっ、サラ様、それは流石に……」
「いや、サラだ。サ・ラ、良い?さも無いと、”ユニークマーズ・ブレイカー”で処刑する」
”ユニークマーズ・ブレイカー”って……その手に持ってるやつ、どう見てもただの木製スプーンやん……
「わ、分かりましたから!サラさっ、いや、サラ……」
「あと、タメ口で話してほしい」
「わ、分かりま……分かった、サラ」
「よし。それで良い」
なんか、さっきから僕の扱いが雑になっている気がするが……まあいっか。
♢
「はー!空気がおいしー!」
ヘレンから聞いたところ、どうやら僕がいる場所は、バナルド王国とエベリア王国の国境近くに位置する、ルリネシアというエベリア王国辺境の村らしい。
サラたちは、これから起こるであろうバナルド王国とエベリア王国の戦争に向けて、この辺境ルリネシアに、隠れて避難してきたのだとか。
そして今、ようやくサラたちの住む屋敷から外出することが出来た。
屋敷の外はルリネシアの村人たちが暮らすのどかな集落が広がっている他、屋敷の裏は森が広がっており、バナルド王国の王都バナシティへの道が続いている。
しかし、この森に入るとすぐにバナルド王国なのにも関わらず、国境を守る兵士らしき人は見当たらない。
「意外と国境の警備はガバガバなのか?いや、単に森に魔物が多いせいで警備ができていないだけか……」
しかしなぜ、サラたちはこんな国境近くの、かえって危険そうなところに避難して来たんだ……
ともかく、今まで使えていなかったスキル【採掘】の技をいろいろ試してみよう。
まずは、スマホを起動させる。
そして採掘アプリを開く。
するとスマホにウインドウが出てきた。
<鉱山を生成しますか?――Yes/No>
僕はyesの方を押す。
すると目の前が眩しく光り、鉱山の入口らしき穴が現れた。
この穴からは緩やかな坂で地下の方へと繋がっているようだ。
早速入ってみる。
入口からはしばらく下へと続く坂となっており、その坂を下ってみると、ひらけた巨大な空洞に出た。
洞窟内は不思議な事に、薄暗い程度であり真っ暗では無かったので、問題なく行動できそうだ。
再びスマホを起動させ、今度は鑑定アプリを開く。
そして鑑定アプリの”周辺サーチモード”を起動させてみた。もしかしたら鉱山の鉱石の場所がこれで分かるかもしれない。何事も試すのが大事だ。
すると、鉱石のある場所を教えてくれるかのように、特定の数箇所が光った気がした。
とりあえず、光った箇所のうちで、一番近いところへと向かう。
そして採掘アプリの”万能ピッケル”の項目を押す。
すると手元が光り、”万能ピッケル”を手に持った状態になった。
「なんかこのピッケル、普通だなぁ」
見た目は普通のピッケルだ。
”万能ピッケル”で光った箇所を掘ってみる。
すると……
「うわぁー!無茶苦茶スッと掘れる!岩が豆腐みたいだ!」
気づけばかなりの深さまで掘れていた。しかも、目の前できれいな石が剥き出しになっている。
どうやら”万能ピッケル”には、鉱石までを一気に掘れる機能があるようだ。
「わぁ!きれいだなぁー!!!」
濃い紫色の、きれいな鉱石だ。
”鑑定アプリ”を起動させてスマホを鉱石にかざし、調べてみると次のように出た。
【ダーククリスタル(品質S)】
強力な闇の魔力が水晶に宿ってできた、非常に珍しい魔石。
非常に珍しい魔石か。初めから運が良いな。
まあ、たまたま運が良いだけだろう。
丁寧に取り出そう。ん?もしかしてこれ、かなりデカい?
取り出し終わった。
しかし、この魔石かなり大きい!
前世でいうサッカーボールぐらいの大きさだ。
抱えて持つしかないが、11歳の身体の大きさでは少しキツイ。
これ以上は持てそうに無いので、他の光っている箇所は明日に回す事にしよう。
他にも”採掘アプリ”には機能があるようで、明日試すのが楽しみだ。
さて、屋敷に戻ろう。
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