音のち君

まなみん

音のち君

 音楽を聴くのが、好きだ。

 暗い真夜中に部屋に籠もってヘッドホンをし、好きな曲を聴くことが日課となっている。

 水色のヘッドホンから聴こえてくる楽曲は、切ない恋を描いた失恋ソング。

 失恋したことがない私にはよく分からない歌詞も多いけれど、恋人を想う主人公の気持ちが痛いほど伝わってくるのだ。


 最近よく聴いているお気に入りの曲は “音のち君” というタイトル。

 彼女視点の曲になっていて、真夜中の一時、彼氏に振られたというのが曲全体のストーリー。

 彼女は毎日ギターを弾いているくらい、音楽が好き。だけどある日その彼氏に出会って、恋に落ちた。

 今までは音楽しか目がいかなかった彼女だけれど、彼氏と出会い日常が変化し、恋というものを知ったという。

 特に私はこの歌詞がとても気に入っている。


 “暗い暗い真夜中の時が過ぎて 眩しい朝が来る

でももう隣で寝ているきみはいない

もしも今隣にきみがいたら 私は笑っていたのだろうか”


 という歌詞だ。

 彼女が彼氏に振られた理由は、気持ちのすれ違い。彼氏は別れを告げるときも彼女のことをまだ想っていた。でも彼女からの『好き』という気持ちが最近伝わってこなかった。だから別れることを決意したらしい。

 私はその彼氏を最低だとは思っていない。気持ちがすれ違ってしまうのは仕方のないことだから。

 とはいえ、大好きな恋人に振られてしまう彼女の気持ちもとても伝わってくる。この曲はどちらの気持ちも痛いほど分かるから、私は好きなんだ。


 「……そろそろ行くか」


 独り言をボソッと呟いて、またヘッドホンで耳を塞ぐ。そして歩き出した。

 真夜中、何となく夜道を歩くのが好き。楽しい、とかそういう感情はない。ただ何となく無関心で歩いているだけ。

 ――今日は何の曲を聴こうかな。

 何て毎日悩むけれど、結局は “音のち君” を聴くことにしてしまう。それくらい、この曲が好きだから。


 夜道はとてもいい。いつも住んでいる街の景色が違って見えるから。昼とはまた違う、暗闇の光景を目にすることができる。

 暗闇のなかで輝いている電光や、夜空を照らしている月。とても幻想的で物語の中にいるような気分になれる。

 最初は誰かとすれ違う度に変な目で見られることが恐怖だったけれど、今は全くそんな感情はない。だって他人のことなんか見なければいい話だ。

 こういう景色をただ見ながら、ただ好きな曲を聴く。それが私の自由。


 いつも行く先は決まっていないから、何となく夜道をふらついている。今日はとりあえず近くの公園に行くか、と思い目的地へ向かった。

 夜の公園は不気味だった。幽霊がいそうな涼しい雰囲気が漂っていて、もちろん遊んでいる子供たちはいない。でもそういう景色さえ、私は好きだった。

 ふと周りを見渡すと、ベンチに座っている、何やら怪しげな男性が一人いた。帽子を被った、全身黒い洋服。

 時計を見るともう零時を回っている。こんな夜遅くにいるなんて、何か事情があるのだろう。


 「あれ」


 ずっと男性を見つめていたからか、その人も私に気がついてしまったようだ。帽子を被っていて見えなかった顔がハッキリと分かる。

 とても爽やかな顔立ちをしている。目に掛かっているほど、前髪が長い。よく見てみると、薄茶色のビー玉のような瞳をしていた。

 ――夜の妖精が、現れたんじゃないか。私は不思議とそう思った。


 「……俺だけじゃなかったんだ。曲聴きながらここに来る人」


 え、と思いながら私はその男性をよく見てみる。男性は確かにイヤホンをしていて、何かの音楽を聴いているみたいだ。

 私と同じように、こんな真夜中に音楽を聴きながら夜道を歩いている人なんて初めて見た。何だか共通点がある人を見つけることができて嬉しく思う。

 そのとき、もう一度 “音のち君” が流れ出した。


 “満月が出ている夜空の下 思いもしない出逢い

 何かあるって感じさせるほど 目を離せない瞬間”


 私と男性の出逢いは、歌詞にぴったりと当てはまっていた。

 確かに何か不思議なオーラを感じていて、その男性から目を離せなくなってしまう。男性も私のことをじっと見つめて、ふっと微笑んだ。


 「あなたは、どうしてここへ来たんですか?」


 「……えっ、えっと。特に、理由はありません」


 不意な質問に、声が上擦っているのが分かる。ヘッドホンから聴こえてくる “音のち君” の美しいピアノとギターのメロディーが流れながら、私たちは見つめあっていた。

 ――あなたこそ、どうしてここに来たんですか。

 心のなかで質問すると、男性は口を開いた。


 「俺も、特に理由はない。毎日この時間に好きな曲を聴きながら、夜道を歩いてる。今日はたまたまここの公園へ来たんだ」


 「奇遇ですね。私も全く同じです」


 「ほんとに? あはは、俺たち意外と趣味が合うのかもね」


 彼の優しい笑いに釣られて、私も無意識に笑みが零れる。私のこの趣味が変だとは言わないけれど、とても珍しいと思う。その趣味を持つ人がこんなに近くにいたとは思いもしなかった。

 ふと気がつくと、その男性が座っている横に何かが入った黒いケースが置かれていた。たぶん楽器だろう。


 「それ、何が入ってるんですか?」


 「あぁ、これは楽器だよ。アコースティックギター」


 「へぇ……。ギター、弾けるんですか?」


 「まぁ、一応ね。曲の歌詞作りしてるんだ」


 歌詞作りをしているということは、バンドか何かをやっている人なのだろうか。私は曲を聴くのは好きだけど何も音楽の才能がない。だからとても尊敬する。

 ――私も、何か楽器をやってみたい。

 ただ一人の男性に合って話をしただけなのに、何故かそう思った。


 「俺、高槻 今宵たかつき こよい。今年で二十ニ。きみはなんて名前なの?」


 「……私は、麻生 音里あそう おと。今年で二十一です。音に里って書いて、おとって読みます」


 自分は一応珍しい名前なので、漢字と読み方を説明しておく。高槻さんは今年で二十二ということは、私より一つ年上だ。

 それにしても今宵という名前、とてもぴったりだなと思った。今宵って今夜とか、今晩とかそういう意味を表しているから。

 高槻さんは夜に包まれていて、ダークな雰囲気を持っている人。それが第一印象だった。


 「音里ちゃん……ね。素敵な名前だね」


 「ありがとうございます。高槻さんも、すごく似合ってます」


 「ありがとう。今宵って読んでほしい。何か苗字で呼ばれるの慣れてないんだよね」


 「……今宵、さん」 


 私こそ、異性を名前で呼ぶなんて学生のとき以来ですけど。と、心のなかでツッコミを入れる。

 今宵さんはやっぱりとても不思議な人だ。何を考えているか全く読み取ることができない。音楽をやっている人ってだいたいこうなのかな……。

 “音のち君” の歌詞を追っていくと、また今の状況に当てはまる歌詞があった。


 “名前を呼ばれてドキドキしてた 青い春

  好きな人だと余計特別な感じがしてた”


 私の場合別に今宵さんが好きな人という訳ではないけれど、好きな人に自分の名前を呼ばれると特別な感じがするのかも。確かに想像できる。

 今宵さんがまたにこっ、と笑った。その不意な笑顔に少しだけ胸がドキドキしているような気がする。


 「音里ちゃん、今何の曲聴いてるの?」


 「失恋ソングです。この曲は振られちゃった女の子側の気持ちも、振った男の子側の気持ちも分かる。だから好きなんです」


 「……そうなんだね。俺も失恋ソング好きだよ。作ってもいるしね」


 今宵さんはバンドとかではなく、“音のち君” のような失恋ソングを作っているのだろうか。

 すごく興味が湧いた。私はバラード曲が大好きだし、どういう歌詞なのかがとても気になる。それに今宵さんが作った曲の歌詞を聴いてみたい、と率直に思った。


 「今宵さんは、どういう気持ちを込めて歌詞を書いてるんですか?」


 「うーん、そうだな。やっぱり自分の経験をそのまま歌詞にすることが多いかも。そのほうが伝わりやすいから」


 「……なるほど。じゃあ、今宵さんは失恋経験があるんですね」


 自分で言ったくせに、ズキッと胸の痛みが走った。今宵さんに失恋経験があろうがなかろうが自分には関係がないのに、何故か寂しく感じた。

 自分は恋愛経験が全くないから、置いていかれる気がして寂しいのだろうか。

 ――それとも私、今宵さんに別の感情がある……?


 「まぁ俺のことは置いておいて。音里ちゃんは何で音楽が好きなの?」


 「私は……分からないんです。理由が特になくて。ただ好きな曲があるっていうのは胸を張って言えます」


 「――俺と同じだね。俺も何で音楽が好きなのかは分からない。けど、歌詞作りをするのが好きっていうのは胸張って言えるよ」


 強い意思のある、今宵さんの言葉が胸に響いた。私と同じ境遇の人と出会えてとても嬉しいと思える。

 “音のち君” の歌詞を書いている人も、経験をありのまま表現しているのだろうか。だとしたら失恋経験がある人なんだろうなぁ……。

 こんなにも素晴らしい曲を生み出してくれてありがとうと、直接伝えることができたらいいなと思う。


 「音里ちゃんさ、もしかして楽器興味ある?」


 「へっ? え、えっと、少しだけ……。で、でも、私何も音楽経験がなくて」


 「そっか。じゃあ俺が教えるから、ちょっとギター弾いてみない?」


 それは私にとっての大きな挑戦だった。今まで楽器に触れるなんてことがなかったから。小学校で吹いたリコーダーくらいだ。

 ギターをかっこいいとは思っている。でも弾けなかったら何だか格好悪いし、そんなところを今宵さんには見せたくない。何故かそう思っている。


 でも音楽は好きだ。大好きだ。今まで考えなかっただけで、確かに楽器に触れてみたいと思っていた。

 ――やってみたい。挑戦してみたい。

 その気持ちが心に秘めてあることを今宵さんと出会って知った。


 「全くできないですけど、やってみたいです」


 「よし、そうこなくっちゃ。じゃあまずは持ってみようか」


 今宵さんは嬉しそうに微笑みながら、ギターを渡してくれた。

 そういえば、楽器を持っている友達から聞いたことがある。他の人に自分の楽器を触られたくないなぁと言っていたことを。

 そりゃあ自分でお金を出した楽器なのだから、触られたくないのは当たり前だ。なのに今宵さんはどうして普通に渡してくれるのだろう、と疑問を抱く。


 「最初からは難しいと思うから、ドレミを弾いてみようか」


 そう言いながら、今宵さんから音階の運指を教えてもらった。言われた通りに指を動かして弾いてみる。

 誰もいない静かな公園に、私が奏でたギターの音が響く。エレキギターとは違って音はゆるやかで、優しい音がとても心地よい。

 ――楽しい。

 少し弾いただけなのに、そう思えた。今まで音楽とは無縁だったけれど、これを機に始めてみるのもいいかもしれない。


 「うん、音里ちゃん上手だね。初めてなんだよね?」


 「はい。初めて弾きました」


 「じゃあすごく才能あると思う。ギター初めてみませんか?」


 なんてね、と言いながら今宵さんは微笑んだ。えくぼができて目元が緩んでいる、今宵さんの笑顔がとてもかわいい。

 ――ずっと、このままでいたい。ずっと夜が明けないで時が止まればいいのに。

 私は朝よりも夜が好きだからいつもそう思っていたけれど、今日は更に強くそう思った。


 どうしてだろう。今宵さんといると、不思議な気分になる。胸がドキドキしたり、楽器を弾くのが楽しいと思ったり。

 また、“音のち君” の歌詞と今の状況が重なった。


 “きみとの日常 初めてのことばかりだった

  でもきみといれば何でも挑戦できていた”


 楽器を弾くことは、私にとっては初めてのこと。でも今宵さんといれば挑戦できた。

 きっと楽器以外でも、何か挑戦したいことがあれば今宵さんがいてくれればできる。


 「そういえば、音里ちゃんは失恋経験とかないの?」


 「私はまだ恋をしたことがなくて。十代終わっちゃったのにやばいですよね。みんな彼氏持ちの子が多くて……正直焦ってます」


 「そうなんだね。でも初恋がいつかなんて自分では分からないし、運命の人に巡り合うのを気長に待ってれば大丈夫だよ」


 もし、その運命の人というのが、今宵さんだったら。

 なんてことを考えてしまった。本当に私、どうかしていると思う。何で今宵さんのことばかり考えてしまうのか。

 これも、また “音のち君” の歌詞と重なる。


 “私はきみのことが好きだった

  それに気づかせてくれたのはきみだった

  音のち君”


 音楽をやってばかりいた彼女。だけど彼氏のことを好きだと気がついて、音楽より彼氏優先になってしまった。

 今宵さんと出会う前より、今のほうが彼女の気持ちが分かる。自分の趣味が一番大切だったけれど、好きな人のことが頭にずっと残ってしまう、その気持ちを。



 ――私、今宵さんのことが好きだ。



 「そういえばさ」


 「は、はいっ」


 まだ出会って間もない今宵さんのことを好きになってしまった自分が、一番驚いている。

 初恋ってこういうものなのだろうか。胸がドキドキして、ぎゅーっと締め付けられて、ずっと頭から離れなくて……。

 “音のち君” のように、きっとそういうものなのだろう。何となく直感でそう思う。


 「失恋ソング聴いてるって言ってたよね。今何て曲聴いてるの?」


 そう聞かれて返答に困ってしまった。そのまま “音のち君” と答えても良いのだけれど、今宵さんがあまり好まない曲だったらどうしようと考えてしまう。

 好きな人の趣味に合わせたい、なんて思っているから。これも恋愛では普通のことなのだろうか。

 考えてはみたものの、結果私の好きなものをたくさん知ってほしい。だからまずは好きな曲を教えることからだろう。


 「“音のち君” という曲です! 本当にたくさん共感する部分があって」


 「……え、待って。今音里ちゃんが聴いてるの、“音のち君” なの?」


 私が頷くと、何やら焦っている様子だった。その言い方だと、今宵さんもたぶん “音のち君” を知っているのだろう。

 もしかして今宵さんも今 “音のち君” を聴いていたりして。だから驚いたのかもしれない。

 そう思っていた。この後の言葉を、私は想像することができなかった。


 「――俺、“音のち曲” の歌詞作ったんだよね」


 その言葉を理解するまで、数分かかった。いや、数分経った今でも、まだ完全に理解した訳ではない。

 ……つまり。私が大好きな “音のち君” の歌詞を書いたのは、目の前にいる今宵さんだってことだ。

 まさかこの歌詞を書いたのが今宵さんだとは思いもしなかった。動揺を隠せずにいる。


 「音里ちゃん、大丈夫? ごめん、俺もまさか “音のち君” だと思ってなかったから驚いちゃって」


 「わ、私のほうこそ……。私、“音のち君” 大好きなんです」


 知ったのはまだ最近だけれど、毎日こうやって夜道を歩きながら聴く曲は必ず “音のち曲” だ。そう胸を張って言える。

 こんな近くに “音のち君” の作詞者がいたなんて……。やはり世界は狭いものだなぁ、なんて思う。


 「あ、あの。私、失恋ソングは大抵振られた側の気持ちしか分からなくて。振った側は絶対に悪者だと思ってたんです。でも “音のち君” はそうじゃなくて、両側の気持ちも分かるんです。だから大好きで……!」


 突然、目の前にいる今宵さんが “音のち君” の歌詞を作った人だと知って、私の思った感想をそのまま伝えてしまった。

 ……何だか恥ずかしくなる。こんなに感想を言ってしまって、引いていないだろうか。

 そんな不安とは裏腹に、今宵さんはまた可愛らしい笑顔を浮かべた。


 「すごく嬉しいよ、ありがとう。音里ちゃんが “音のち君” を好きになってくれて良かった」


 その言葉が素直に嬉しかった。

 今更だけど、今宵さんは自分が経験したことをそのまま歌詞にしていると言っていた。

 ということはもしかしたら “音のち君” も今宵さん自身が体験したことなのだろうか。女の子視点の曲だけど。


 「……あの。“音のち君” も、今宵さんが経験した失恋を描いてるんですか?」


 「まぁ、そうだね。といっても中学時代の恋愛だけど。“音のち君” を歌っているアーティスト――otoが、俺が恋した人なんだ」


 “音のち君” を歌っている女性アーティスト、oto。そう、私と同じ名前の人だ。

 otoは透き通っていて心に響く、美しい歌声の持ち主。とても人気があるアーティスト。

 そのotoがまさしく今宵さんが恋をした人だったんだ――。


 「で、でも、辛くないんですか? 失恋した人と、曲を作っているなんて……。私には、考えられないというか」


 「うーん、そうだね、思い出すときはあるよ。でもだからこそ、曲に生かすことができるんだ。その経験した思いを込めて俺たちは曲を作っている。“音のち君” もその一つだよ」


 ――今宵さんはやっぱり、すごい。

 “音のち君” は、今宵さんだけでなく、otoさん本人も経験していること。だから聴いている私は、彼女側も彼氏側も共感できるんだ。


 少し雲に隠れていた満月が、顔を出した。

 とても輝いていて、消えかかっている満月が見惚れてしまうほど美しい。


 「ありがとうございます。私もっと “音のち君” を好きになれました。これからもotoさんと今宵さんが作った曲、楽しみにしています」


 「ありがとう。俺も音里ちゃんから感想を聞けて良かった」


 私の大好きな曲の歌詞を書いた人が、好きになった人。

 私は音楽も好きだけれど、その音楽を楽しんでいる彼のことも大好きだ。

 時計を見ると午前一時、数分前。あれから約一時間も話していたなんて思えない。


 「最後に一つ、いいですか?」


 「うん、いいよ。どうしたの?」


 「――私、今宵さんのことが好きです。だから私ギターを初めてみます。それで今宵さんに追いつけるように頑張る。そのときお返事をいただけたら嬉しいです」


 これが今精一杯、恋を知った私にできること。

 午前一時を上回ったその瞬間、今宵さんが微笑みながら私の頭をぽんぽんと軽く撫でてくれた。

 私は驚いて今宵さんを見上げると、少し頬が赤くなっていた。


 「ありがとう、音里ちゃん。待ってる」


 最後の “音のち君” の歌詞。


 “必ずまた きみに会いにいくよ

  伝えたい 「ありがとう」と「好き」を”


 私がギターを買って今宵さんに追いつけるような実力になれたら、必ずまた会いに行く。

 そのときは「ありがとう」と「好き」をもう一度伝えるんだ。


 午前一時。暗い暗い真夜中に浮かんでいる満月を見上げながら、私はヘッドホンで耳を塞いだ。

 そしてまた、大好きな人が作った大好きな曲を聴いていた。

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