あなたは私の月

けんじょうあすか

第1話

むかしむかし、夜の都に、1人の勇者が住んでいました。


勇者には秘密がありました。

どんなときも正解に導くお告げのような、誰にも聞こえない音が聞こえたのです。

勇者はこの力を使って勇者となったのです。


勇者といっても、この勇者は民衆の味方、いわゆる義賊でした。

悪事を働く貴族から金を盗んだり、貴族たちに言いがかりをつけられ捕らえられた平民を助けたり。


神話では、終末とされる時代。

格差は広がり続ける一方で、逆らったものは容赦なく静粛される。

そんな暗い世に現れた光を夜を照らす月のようだと、いつしか月の勇者と呼ばれるようになりました。


この階級社会の逆賊でもあった月の勇者は、貴族たちによって血眼になって捜されましたが、手掛かり一つ見つけることはできませんでした。


月の勇者が王都に現れて3年。

月の勇者は、ぱたりと王都から姿を消しました。






耳をすませても、全く鈴の音はきこえない。

いつもなら進むべき方に、音がなるはずなのに。


お願い、もう一度だけあの音を聞かせて。



そこでシャロンは目を覚ました。

そんなに暑い日でないのに、汗をかいているのに気が付いた。


もうシャロンは月の勇者ではない。

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