CASE2 幼馴染のツンツン生徒会長

第1話 なんか知らんが大変なことになってる

 俺の名前は普通の高校生、獅子院セイハ。幼馴染じゃない同級生の央瀬哀理と遊園地————には行ってないが、

 黒塗りの高級車の怪しげな衝突を目撃した!(してない)

 央瀬哀理を追い払うのに夢中になっていた俺は背後から近づいてきて……る奴はいないが。支配の力の暴発に気づかなかった!

 イラつかせられ、言葉を発し、ドアを開けたら……。


 央瀬哀理を支配してしまっていた!


 精神支配が存在していると世界に知られたら命を狙われ、とにかく俺の人生全般に被害が及ぶ。


 俺は俺自身の助言で支配を隠すことにした。

 初めての超能力の調査の際、超能力はなんですかと問われ、とっさに 「リラックスさせる超能力」と名乗り、ヤツら(誰?)の情報を掴むために、母親が昔住んでいた安アパートに転がり込んだ……(事実)。


 転生しても、頭脳は同じ。

 迷宮作る側の超能力者!

 真実はいつも1つ!(言いたいだけ)






「……なに考えてんのセイハ?」


 そんな感じの怒涛の勢いで過ぎ去った、俺と哀理の初まりの3日間を回想していると彼女自身に残念なヤツを見る眼差しを向けられてしまった。解せぬ。

 ちなみに今の俺たちは図書館にて、今日返却されたテストの復習中。ふむ、いつから俺らは真面目な高校生になったんだ?


「いや、早乙女のテスト結果がどうなってるのか考えてた」


「うがーっ!! 思い出させんなし! あんな出来じゃ、あの貧パイダサメガネに勝てない!! ……どーしてもっと勉強しなかったんだ当時のあたしは!」


 哀理と早乙女が次の中間テストで雌雄を決すると宣言してから数週間が経過。その間、彼女は早乙女を負かすためにえっちを禁止して猛勉強に励んでいた。

 その気概は凄まじく、赤点回避しつつ平均点取れればいいかな、と考えてる怠惰な俺すら触発されていつもより勉強し出すほど。


 その甲斐あって俺は過去最高の点を取れた。なんと全教科で60点オーバー。ちなみに得意な保健体育は100点だぜ☆ ……という冗談はさておき。

 一方の哀理は全教科で80点超え。なんで今まで6組だったん? と言いたくなる。超能力も優秀なんだから砂塵級ということを加味しても3組は行けるだろうに。(慣例として星座級が1〜2組、果実級が3〜4組、砂塵級が5〜6組という暗黙の了解がある。しかし飛び抜けて優秀な者はその限りではない。俺は逆、飛び抜けて落ちこぼれ(表向き)なので6組)

 まあ、地頭よくても勉強しないから6組なんだろうな。俺は表向きの超能力がカス以下だから、どんなに他で高得点を得たとしても6組なんだろうけどな、ははは。


「80点って別に低くないだろ。……まあ主席には勝てそうもないが」


「うごごごごご……!」


 そう、早乙女美鏡ミラはめちゃくちゃ勉強ができる。その証拠に彼女は今年、主席で入学した。座学も運動も超能力もダントツのトップだ。そしてその優秀さを見込んでなのか、1年生にして異例の生徒会長就任。どういう仕組みで選出されるのか分からんがすごいことなんだろう、知らんけど。

 まさに伝説の超エリートだ。成績が高まる、溢れる……! とばかりにその優秀さは日を追うごとに増している。

 そして噂をすれば影とばかりに件の伝説の超エリート様が、図書館の端っこのテーブルに陣取る俺たちの前に現れた。


「80点……フッ。所詮付け焼き刃なんてそんなモノですね。こういうのは日々の積み重ねがものを言うのですよ」


 バン! と俺たち————主に哀理の前に、早乙女の持つ今回の中間テストの答案のが叩きつけられた。文字通りの意味での全てであり、そこに欠けは1ミリもなかった。

 その結果に哀理は戦慄する。


「な、なななななな!?」


「……全教科100点か。さすがは主席」


「当然の結果です。……そういえばなんでしたっけ? 『なら覚悟しなよ、鏡ちゃん。次の中間テスト、あたしが絶対に勝つから』でしっけ? ……ふふっ。よかったですね、なにか賭けをしていなくて。それにしても、正直あの時は笑いを堪えるので必死でしたよ。ふふっ、私はなにか特別勉強なんてしてはいないんですがねー……なにもせずに格の違いを見せつけてしまったようですねぇー。これも日頃の……ぷっくくくっ!」


「ぐっ、うぬぅ……」


 う、うわぁ、性格が終わっていやがる。

 そして勝利宣言とともに煽り散らかすその姿はまさに外道! というかあの時の言い合いの最中は「まだ笑うな」状態だったってことか。道理で口の端でニヤニヤしてたわけだ。


「ふふふ。あぁ、そうそう能力強度テストの結果はいかがでしたか? フッ……まあ、言うまでもありませんか」


 さすがに主席と比べるのは哀理でなくとも不憫だろうに、しかし彼女はそこを煽るのを欠かさない。全くもっていい性格だ。近寄らんとこ。


「……チッ。ところでセイハはどーなの? 本当は最強なんでしょ?」


「誤魔化すに決まってるだろ。バレたら指名手配どころか特殊部隊を差し向けられるに決まってる。俺は俺の植物の心のような人生の、平穏な生活のためにこの力を隠すと決めてるんだ」


「でもあたしとその貧パイダサメガネにはバレてんじゃん」


「それは全面的に哀理のせいだろ……」


 ちなみに能力強度テストとは、読んで字の如く超能力がどれほどの性能を持ってるかを調べるテストのことをいう。劣等生には地獄のイベントであり、こと、性格悪い優等生にとってはこれでもかと自身の優秀さを示せる絶好のイベントとなる。

 無論、俺は2位に圧倒的大差をつけてぶっちぎりの最下位ワーストワンだ。リラックスさせるだけの超能力に性能とかあるはずもない。某作品風に言うならレベル0。まあ、本当はレベル5なんだけどなワハハ!


 などと他愛もない話をしていると、複数の足音がこちらへと近づいてくる。もしや声の大きさでも注意しにきたのだろうか? そう思い視線をそちらに向けると、どこか見覚えがある気がする女子生徒と取り巻きらしき数人の男女。

 ……あれれ? これはもしや強制退去か?


「あれ〜? もしかしてそこにいるのはお姉様じゃないですかぁ。そんな6組の落ちこぼれどもと一緒にいたら、お里が知れますよぉ〜」


 なんだこのメスガキは? 分からせられたいのか?


「え、誰? この感じ悪い女」


「まあまあ、なんて品のない。まずは自己紹介から始めては如何ですかぁ?」


「あ゛? 知りたいならそっちから名乗れよ。あたしは別に知らなくても損なんてしないわけだし」


 うーん、もはや安心感すら覚えるなぁ、哀理のこの喧嘩腰は。……それにしてもこのメスガキ、どこかで見覚えが……あっ。


「……早乙女美夢レイサ、確か早乙女の妹で……妹で……まあ、妹だな」


 姉妹揃ってみょーにキラキラしてる名前だったから初見での印象が凄かったな。

 それにしても、「早乙女美夢は早乙女美鏡の妹」って印象しかなかったから特徴とか全然言えなかったな。当時から早乙女は性格クソだったから、普通の子どもだった早乙女美夢が相対的に印象薄くなるのは仕方ない。

 そんな彼女と最後に会ったのが小学生の頃。そして今再会を果たしたわけだが、どうしてこんな立派(?)なメスガキに育ってんだ?


「————は? ……私の特徴それだけですかぁ?」


「いやだって、幼馴染の妹なんてそんな距離感だろ」


「このッ……!」


「お、幼馴染……うふへへ」


 自意識過剰なのか知らんが、なぜかバチギレている早乙女美夢。

 そしてなんで早乙女はトリップしてんの?


「ふ、ふんっ! 私は貴方のような落ちこぼれに用はないんですよねぇ。用があるのは、お姉様の方なんですよぉ」


 じゃあなんで絡んできたんだ……? というか、なんで俺が知り合う美少女は全員性格終わってるんだ? もしや、そういう星の下の生まれなのか……?

 ……しかし、どっちも早乙女だと脳内で呼びにくい。いつもの早乙女は早乙女、メスガキな方は……どうしようかな、でも次会う機会とかないだろうし……まあ、早乙女妹でいいか。


「私に? 貴方が? 珍しいこともあるのですね」


「そうですよぉ。ご存知の通り、6月から7月にかけて御三家星誕祭が開催されます。当然、我が校も出場選手の選抜や調整で忙しくなります。……ところでお姉様は参加なされるのでしょうかぁ?」


「しませんね。生徒会の一員として選手団を率いるために同行はしても選手として出る予定はありません。……まさか、そんな当たり前のことを言うためだけに取り巻きを連れて大名行列作ってたんですか? 暇そうで羨ましい限りです」


「————ッ! おほほほほ、生徒会の一員として同行ですかぁ。……選抜や調整がつつがなく進行することを祈っていますよぉ」


 某美しい手で興奮する殺人鬼のような煽りをする早乙女に、早乙女妹は一瞬キレかけたようだが、すぐに微笑を作っては意味ありげに呟くと取り巻きを連れて図書館を去った。


「なんだあの意味深な発言は。まるで生徒会云々がうまくいかなくなると言ってるみたいじゃないか。やっぱメスガキだな」


「それな。あたしらには関係ないんだけど、あの言い回しめっちゃいやらしいんだけど」


「そうだな。いかにも上級国民って感じで俺の嫌いなタイプだ。時と場合が許すならそれもこれもグロリアの分! ってケツを叩いてドラミングしてやりたいくらいだ」


「分かるわー」


「……」


 俺たちが盛り上がる中、早乙女はなにか熟考しているのか黙ったまま。やけに真剣な表情だ。もうずっとそうしていてくれ。その顔つきなら普通に美少女にしか見えないんだから。


「……はぁ。全くあの愚妹、一体なにを企んでいるのやら。昔から親が同じとは思えないほどに頭が足りないと思ってましたが、久しぶりに会ったと思えば悪化してるとは。これはもういよいよ座敷牢にでも入れるべきですかね」


 あちゃー、美少女タイムが秒で終わった。


 だが、ここまでくると、まず間違いなく2人の親は同じだな。性格の悪さって意味ではこいつら本当に姉妹なのだから。

 





「……は?」


 放課後のことだ。職員室にほど近い廊下にて、やけに腰の低い態度の教師になにかを言われている早乙女に出会した。まあ、相手は早乙女家のエリートだし、腰が低くなるのも頷ける。星座級が相手だと木っ端の名家じゃ秒で干されて終わりだからな。

 そして件の早乙女は呆然としてるような、苦虫を噛み潰したような、そんな難しい顔つき。


「だ、だから、んです。早急に人員を集めなければ、信任がないとして生徒会長から解任されてしまいます。ですから今週末にはメンバーを揃えないと……。それに御三家星誕祭の調整や選抜に影響が……」


(たまげたなぁ……)


 これってまさかあの早乙女妹の仕業なのか? だとしたらなんのためなんだ?




===あとがき===


 中間テスト編をやると言ったな? あれは嘘だ。

 あとやってほしい諸々があったらコメントしてクレメンス、いやしてくださいお願いします! 毎日更新しますから!

 そしてCASE2が想像以上に長くなった結果、事前に完成しませんでした! なのでこれからはライブ感での毎日投稿になります、頑張りますので引き続き応援のほどをよろしくお願いします(土下座)

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