スマホ黎明期
乾さんがスマホを初めて手に入れたのは最初期の頃になる。新しいもの好きの彼は早速セットアップをした。当時はまだまだスマホがメジャーではなく、メッセンジャーも無い、SMSでやりとりをするのが普通だった。
そうなるとスマホのメリットはそれほど多くない時代だった。一部の人が持っている変な携帯電話だったという時代があったのだ。
しかし、まだおおらかな時代だったのでそれほど多くの人が気にしなかった。そんなある日のことだ。
スマホを使ってネットを見ながら道を歩いていたとき、突然SMSが届いた。内容を確認するとケータイショップからのセールスだった。深く気にすることも無く、そのメッセージを一読して閉じた。
そんな時ふと思った。そう言えばこの電話番号は今届いたSMSの会社の回線ではない。間違いだろうか? そう思ったのだが気にしても仕方ない、回線を変えたばかりだし、そういったこともあるのだろうと思った。
さて、そのまま買い物に向かったのだが、そこでふと思いだした。さっきSMSを送ってきたショップは合併で無くなってしまっていたはずだ。ショップが自宅から少し遠くなったので不満に思い覚えていた。
それからも時々おかしな動作はあった。何故かもう亡くなった相手からメールが届いたり、地元をとっくに離れてしまった友人から急な電話があった。何がおかしいかと言えば、解約新規契約をしたのでメールアドレスも電話番号も変わっているのだ。どうしてこの番号が分かったのだろう? まだ教えているのは両親くらいのはずだったのだが……
しかし両親が教えたという可能性も否定できないので深く詮索しないことにした。確かに両親に聞けば一発で分かることだったが、それを聞くのはなんだか憚られた。怖かったというのが正直なところだ。
そんな謎現象が多発していたスマホだが、彼はゲームのために機種を変えなかった。某アイドルゲームをスマホの方が利用しやすいというだけの理由で使い続けた。
ある時のことだ、スタミナが切れたのでプレイを一休みし、スマホをスリープにする。そうしてゲームに貼り付いていたわけだが、そんな時スマホにメッセージが届いた。親からちゃんと寝ているかという心配のメールだった。
冷静に考えてもゲームを必死にプレイしていることは知らないはずなのに、酷い生活状態になっていることを見抜かれて驚くしか無い。
結局、そのゲームも最近になってサービスが終わったが、始めの頃は奇妙な現象が起きていたのに、スマホの進化につれて怪現象は消えていった。
「ほら、付喪神っているじゃないですか、多分アレがイタズラをしたんじゃないかと思ってるんですよ。何しろ当時は金欠で暇さえあればスマホでネットを見ていましたからね、機種変をしなかったので使い続けているうちに心みたいなものが宿ったんじゃ無いかと思っています、ちょっとだけ怖いですけどね」
そう言い乾さんは話を終えた。私の感想は付喪神も酷使されて大変だなと言うものだった。
今ではスマホを定期的に新機種に変えているのでそういった現象は起きないらしい。ただ、いろいろ起きた初めて持ったスマホは処分もできず家に置いているのだと言う。
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