サークルの闇
「仮名でお願いしますね、バレるとちょっとマズいんで……」
ここでは仮に彼女をBさんとしておこう。彼女が体験した恐ろしい出来事だそうだ。
あれは……そうですね、大学に入って夜遊びも増えてきていた頃ですね。大学に入ったと言うことで大いに遊ぼうとしていたんです。
そうなるとサークルのコンパを渡り歩きました。イマイチ活動内容はつまんなかったですね。タダ酒を飲むためだけに参加していた感じなんです。
もちろんサークルの全てを把握していたわけではないので、めぼしいところをいくつかマークしておいていた。その中の一つに漫研があった。よくあるサークルの一つだが、Bさんは都心で漫研ということでイベントの多さから飽きないのでは無いかと思った。
漫研に滑り込んだ後は順調だった。彼女はそれなりに優遇されたし、上手く立ち回ったのでサークルクラッシャーにもならなかった。アニメやマンガをそれほど読んでいたわけではないが、小学生の頃に少女マンガを読んでいたので周囲もそれに話を合わせてくれた。
「そこまでは普通だったんですがねえ……」
当然のようにサークルのメッセージアプリに入れられ、多少のセクハラじみた発言をするものも居たが、平穏なキャンパスライフだった。
ただ、部員たちの進めるアニメにはどうにもハマれなかった。問題は新しい女の子が入ってきたことから始まる。
その子はバリバリのオタサーの姫的ポジションに居座った。別にBさんは姫になるつもりもなかったので生ぬるい目でそのSという女学生を見ていた。
機嫌を取るのが上手いなあなどというくだらない感想しか浮かばなかったが、その子が入ってから空気が多少変わった。
Sはアニメに詳しいのか、部員たちでも知らないようなアニメをどこから持ってきたかDVDを部室のプロジェクターで流し始めた。『人を大切にしよう』『両親に感謝の心を忘れないようにしよう』などと言った説教臭い内容だったが、部員もSが持ってきたアニメということで熱心に見ていた。
それほど熱心でなかった彼女はしばらくサークルから距離を置こうとした。ほんの一月ほど、顔を出さないでおいてみようと決めて、しばしの間サークル棟に近寄らなかった。
しかしその一ヶ月に大きな変化が起きた。漫研の部員たちが爆発物を作ったということで警察沙汰になったのだ。その火種はSだった。伝え聞くところによると、Sは無難な内容のアニメを流しつつ、次第に自分の入っている新興宗教の教えを説く内容にジワジワと変えていった。
そこからSは一人一人に気のある振りをして宗教の会合に招き入れたそうだ。結局、漫研は解散となり部員たちは退学の憂き目に遭った。Sはもともと鉄砲玉を集めるために忍び込んでいたらしく、退学処分を受けたがなんとも思わず粛々と退学していったそうだ。
「確かに幽霊とかいうのも怖いですけどね、人を傷つけるのは幽霊より生きた人間の方が多いんですよ」
そうしみじみと語った彼女は今では大学も卒業して就職したが、未だに宗教は苦手なのだという。
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