ゲーミング体験

「最近じゃPCの使い道にゲームが普通の事になったじゃないですか、それで奇妙な事があったんですよね」


 凛さんはそう切り出して奇妙な体験を話してくれた。


 アレは、初めてのゲーミングPCを買ったときのことなんです。3Dでグリグリ動くFPSゲームをプレイするために買ったんです。


 その時は量販店で言われるがままにゲームの出来るPCと書かれていたものを買ったんです。今思うと随分無謀なことをしたとは思っていますよ。


 で、当然ながらスペック低めで値段は高めなんですよ。後になってノートだとゲームをするには厳しいものが多いと聞いたんですよ。


 その時は某有名FPSをインストールしてプレイしようとしたんです。当時はその前にベンチを動かすなんて知識は無かったんですよね。


 その時プレイしようとしていたのはホラー系FPSだったんです。幸いネット回線は光りだったので多分動くだろうと思ってインストールしたんです。でもね、なかなかインストールが終わらないんですよ。当時はゲームがどれだけ容量を食うかなんて知識も無かったんで、ジワジワ進んでいくインストールを待っていたんです。


 ようやくインストールが終わってプレイをしようとしたんです。そうしたら突然画面に移ったのは到底人間には見えない顔だったんです。どうにもおかしいと思ったのが、人の顔が妙に歪んでいるんです。今ならスペック不足で自動調整が入ったんだなと思うんですが、当時は『これって人間なの?』と疑問に思いました。


 プレイしようとカチカチクリックしていくとストーリーモードと対人戦が出たんで、ひとまずストーリーモードをプレイしようとしたんです。


 始めに宇宙線が未開の惑星に墜落するシーンから始まるんですけど、まず主人公が人の顔をしていないんですよ。スペック不足ならまだ分かるんですけどね、それにしたってキャラの顔部分だけ溶けたようになっているのは怖かったですよ。


 どうもその中の一人が自分の操作するキャラだとは理解したんですが、FPSなのでプレイ中は自分の顔が視えないんですよ。だから仕方ないかと我慢してプレイを続けたんです。


 ストーリーは異形の怪物が巣くっている星で地球への帰還を目指して宇宙船の修理をしていくって流れなんですけど、敵も味方も異形の怪物状態でした。


 この際顔が崩れているのは無視してストーリーを追っていきました。最終的にはクリアできたんですけどね、そこからが問題なんですよ。エピローグで主人公が地球に帰還して終わりなんですが、地球で顔の崩れた主人公が迫害されるって終わり方だったんですよ。


 後味の悪いゲームだなとその時は思って、対戦モードをやる気にもならずプレイを終えたんです。


 話はそれから私が社会人になってからに飛ぶんですが、今度はきちんとスペックの高いPCを買ってゲームで遊んでいたんですが、たまたまあのゲームのディスクが掃除をしているときに見つかったんです。


 なんとなくプレイしてみようとディスクをPCに入れてインストールしてみたんです。そうしたら全員かっこいい顔のキャラでヌルヌル動くんですよ。これがスペックの差かと思いました。


 ただね……どうもおかしいんですよ。敵も味方もしっかりしたグラフィックになっていたんですが、そのまま記憶のままプレイしていくとエンディングになったんですが、主人公が宇宙から帰還した事を大いに祝福されるんです。前のストーリーと変わっているんです。


 もちろんそのゲームは選択肢でストーリーが変わるわけじゃないんですよ?


 見た目が肝心とは言いますけどね、PCのスペックが追いつかなかっただけでここまで変わるんでしょうか? どうも未だに納得していないんですよね……


 彼女の話は以上となる。いろいろなゲームを知っているが、PCのスペックでエンディングが変わるゲームなどは聞いたことが無かった。


 果たして彼女のプレイしたゲームは一体何が起きていたのだろうか? 今となってはディスクも処分してしまったので真相は闇の中だそうだ。

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