入れる禁足地
桑田さんは高校生の頃奇妙な体験をしたそうだ。今にして思い出すと怖いものなのかもしれないと思ってきたという。
「説明が着かない事ってのは嫌なんすよね」
彼が高校に通っているとき、受かった高校が家からそれなりの距離があったため、自転車通学となった。当時はその高校で原付を使っての通学は免許を持ってもできないルールになっていた。
しかし、自転車で通っては行けない場所もあった。下り坂の下の空き地なのだが、そこを直行すればかなり距離を稼げるはずだが、やはり権利問題だろうか、そこを通ることは堅く禁止されていた。
そうなるとお察しの通り、遅刻しそうなときにそこを通ろうとする輩が出てきてしまう。ただ、それは長く続かなかった。そこを通った生徒は授業中に頭痛や吐き気を訴え保健室に行っていた。
皮肉なことだが教師は口を酸っぱくして通るなと言うよりあの有様を見せた方が手っ取り早いと思ったのか言外に『ああなるぞ』という空気を出していた。
そこを通ったからといって死ぬようなことはない。ただ体調が悪くなるのは確実だったので、テスト期間にそこを通る蛮勇を持っているものは居なかった。
しばらく後、そこの歴史を調べた物好きがいた。ソイツが言うことには、そこは元々井戸だったのだが、戦中の空襲で火を浴びた者達が水を求めてそこに殺到したのだという言い伝えを見つけた。
なお悪いことにそこの地権者は、その井戸が不気味だと思ったのか空気穴も開けずに井戸を乱暴に土で埋めてしまった。それが原因であそこを通ると呪われる飲んだと評判になった。
次第に教師が何も言わなくても誰もそこを通らなくなったし、進級して新一年生がそこを通っているのを見ると、面倒見の良い生徒は通らないように注意をしていた。
そんな土地が何故囲われもせず、あえてやっているとしか思えない隙だらけの柵があるだけなのか疑問だった。それを教師にぶつけた生徒がいた、彼によると教師は『あそこの井戸の神様はもう人間に利益なんて与えない、祟り神になっちまったから生贄が必要なんだろ、都合の良い場所にあるからあえて塞いでないし、通ってくれれば神様が満足するんだろうさ、ま、分かったらあそこは通るんじゃないぞ』とあっさり言われた。
つまり地権者はあそこがまともな土地ではないことを承知の上であえて通りやすくしているということらしい。ぞっとしたが、それは荒ぶる神のせいではない、後始末をその辺に住んでいる住人に任せようとしている地権者に対してだ。
今もその土地はあるらしいが、今では工事がなされ、学校側にその土地からは入れないように壁を作ったため、今ではその土地を通る者は居なくなった。
ただ、いつも売地の看板が出ているのだが、定期的にそこを扱っている不動産業者が変わっているそうだ。業者もその理由は言わないため、それが霊的なもののせいかまでは今となっては分からないらしい。
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