ジャンク品に宿るもの

 古道具には付喪神が宿ると言いますが、藤田さんはそんな付喪神を見たことがあるそうだ。


「言うて、神々しさなんて欠片もないんやけどね、訊きたいなら話すわ」


 彼はジャンク品を集めるのが趣味だった。ジャンクと言えば機械やパーツが思い浮かぶが、彼にとっては人形から食器、プラモデルに至るまでジャンクショップで投げ売りされているものなら片っ端から集めていた。


 彼のコレクションはなかなかなもので、写真を見せていただいたが、部屋一杯に飾ってあるジャンク品は壮観だった。そのためだけに安いワンルームを借りているのだという。


 ある時のことだ、彼が新しく買ったフィギュアを軽く修繕し、飾るには問題無いレベルにしてその部屋に行き新しい仲間として飾っておいた。その晩に満足してから少しした後、不動産業者から連絡が入った。彼の借りている部屋で騒音が絶えないと言われる。


 騒音も何も、音源に思い当たりがない。稼働するものは飾っていないし、アンティークとしてレコードプレイヤーも置いてあるが、電源もレコードもないので音が鳴るはずがない。


 しかしクレームが出たものは仕方ないので、その部屋に向かってみた。そうすると部屋の中に違和感があった、設置した場所とずれている。誰かが勝手に弄ったのかと思ったが、部屋に入る前にクレームが来たのだから家主が覗いたはずもないだろう。


 いろいろと見て回ったのだが、どうやら新しいフィギュアの付近が何故か空いている。もっと密度を高めておいていたはずだが、何故かフィギュアがまわりを押しのけたように自分だけのスペースを確保していた。


 そんなことが……とは思ったものの、他に異常がないのでそのフィギュアくらいしか心当たりはない。試しにそのフィギュアを持って返ってみることにした。


 手に取ったときに気が付いたのだが、隣に置いてあった日本人形の衣装の欠片が付いている、丁寧に扱っているのだからそんな安易なミスなどするはずが無い。


 やはり怪しいのではないかと思ってしまうのでそれを持ち帰った。


 そして寝室のケースに収めて眺めてみた。確かに悪くない出来のフィギュアなのだが、そう言えばコイツは随分と安値で投げ売られていたことを思いだした。本来はジャンク品であることを考慮してももう少し高い値がつけられるはずだったし、その値段だったからこそ買ったのだ。


 考えるだけ無駄だろうと思いさっさと寝てしまうことにした。それ以来クレームは来ていないのだが、奇妙なことは起きる。


 そのフィギュアと同じケースに入れていたものが朝起きるとケースの外に落とされているのだ。『私以外要らない』寝起きにそんな声を聞いた。怖くなってそれは専用のガラスケースを用意して、まるで子供の五月人形のように単品で飾ってあるのだという。


 捨てようかとも考えたのだがジャンク品を集めているのだからこういったものが入ってくるのも面白い。


 相変わらず近くにものを置けないそうだが、そのフィギュアはまだ部屋にあって丁重に扱っているのだそうだ。


 彼はまだジャンク集めは続けているが、そう言ったおかしなものに出会うことはまだ無いのだそうだ。最近はジャンクに飽き足らず何に使うか分からないので投げ売りされているものまで集めるようになったらしい。

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