ゲームの楽しみ方
山本さんはゲームが趣味なのだが、彼の楽しみ方は嫌なやつの名前をネームドのキャラにつけて、レベリングをしてからソイツをボコボコに倒すのが楽しいのだそうだ。
基本的に味方キャラしか名前を自由に決められないので、仲間を攻撃できるゲームが好きなのだそうだ。混乱のステータス異常を直すために攻撃を出来るようになっているゲームもある。そういったシステムを利用して仲間を攻撃して楽しむのだそうだ。
しかしある時不思議な事が起きたという。
いつも通り嫌なやつの名前をかぶったキャラを他のパーティメンバーでたこ殴りにしていたときのことだ。その時は該当キャラが混乱していたわけでもない、状態異常にもなっていないのにそのキャラが味方を殴ってきたのだ。
何故かそのキャラの行動の選択肢も出ず、いきなり味方に攻撃をしてきた。何故かやたらと攻撃力が高い。一撃でHPの半分ほどを持って行かれた。よく分からないのだが放置していると味方が倒されてしまうので、強力な攻撃を使用してそのキャラを戦闘不能にした。
とりあえずこれでいいだろうと一安心してその時戦っていたモンスターを倒そうとした。しかしその時は敵モンスターが攻略情報でも覚えていないことになっている蘇生魔法を使ってきた、それもこちらのキャラに向けてだ。
驚きつつもその場は敵を倒そうとしたのだが、何故か敵がやたらと固い。しかも味方からは攻撃が飛んでくる。こんなものどうしろって言うんだよと悪態をつきながら弱点魔法を使ったのだが、本来弱点であるはずの攻撃なのにさっぱりダメージが通らない。
その時はそのまま全滅させられた。攻略情報と違うというのに倒されたことにイライラしつつセーブデータで再開しようとした。ロードこそできたのだが、味方キャラが一人足りない。
あのキャラが自我を持ったかのようにパーティを離脱していた。控えに戻ったのかを確認したが、どこにもおらず、そのキャラが必須のイベントがあるのでそこで詰んでしまった。
釈然としないが、興が冷めてニューゲームを選んだ。しかし初期メンバーのはずのそのキャラがいない。序盤のイベントすら進められず、そのゲームのプレイは投げ出した。
翌日彼が学校に登校したときのことだ。その名前をつけていたクラスメイトが欠席している。担任から理由の説明があって、言葉を濁していたものの『少々錯乱した、見舞いには行かないで欲しい』という旨のことを随分婉曲に言われた。
関係無いとは思ったものの、どうしても昨日のゲーム内容が気になってしまう。ただ単に彼の名前をつけたキャラを殴っていただけとはいえ、この偶然には少々何かを感じずにはいられない。
結局、彼の見舞いには行かなかったのだが、噂が流れた。なんでも彼はクラスメイトに暴力を振るわれたといっているらしい。彼はクラスでもそれなりに嫌われていたものの、暴力を振るってくるような生徒はいない。ただ、こっそり彼を見舞いに行ったクラスメイトによると、彼は青あざを体中に作っていたらしい。
「ねえ、もちろん全て偶然で片付けることも出来るんですけど、偶然って事でいいんですかね、私は誓ってゲーム上で殴っただけで直接の暴力を振るったことはないんですがねえ……」
彼はそう言って話を終えた。今ではRPGでもそう言った歪んだ楽しみ方はしていないのだという。
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