第3話 彼女の出した回答は
「寿命な……古代王国時代の人間の寿命ってどのくらいだったの?」
「およそ300年かな」
彼女は「んーと……」と言うふうに指を唇に当てながら教えてくれる。
長いな。300年もあったんか。
「魔法で伸ばしてたの?」
「うん。そうだよ」
今は失伝してるけどね、とのこと。
なるほど……
「じゃあ3? 桁を足すんだろ?」
彫り込まれた文字から、俺がそう予想を言うと
「ん、まあ人間が正解だったらそうだと思うよ」
アキラの答えはなんだか淡々としていた。
「違うの……?」
「享年が書いてあるんだよね……26才」
享年……死んだときってこと?
26才……若いな。
早死にしたのか。
そう頭の片隅で思いながら
「じゃあ8?」
確か、寿命も享年も意味は同じじゃ無かったか?
そう思ったんだけど
彼女は
「いや、3だと思う」
……ちょっと待った。
混乱して来た……。
「……どういうことなの?」
本気で分からなくなったから、俺がそう訊ねると、彼女は
「この手帳の記録が、備忘録であると仮定したら、享年って書き方はしないと思うんだ」
予想を語ってくれたんだ。
備忘録……忘れたときのためのメモってこと?
彼女は見解を聞かせてくれた。
「だって言葉が同じでないと、混乱するでしょ」
……ああ、そうか。
確かにそれはそうかも。
言葉や単位がまちまちになるのは、読み手のための文章じゃない。
それはそうだ。
で、これは手帳のメモだからな。
書いた本人が分かることが最優先のはずだ。
だから普通の謎かけと違い「他人に解いてもらうことを前提とした作り」になってないのかもしれない。
でも、それって……
「奥さんが愛する者じゃないなら、何だって言うんだよ?」
「ヒクイムシ」
……即答された。
マジか。
彼女は続ける。
「奥さんの個人データ記載、あからさまにミスリードに思うんだよね。だから違うと思う」
彼女は自分の予想が正しいと確信してるみたいで。
「……これから正解を嵌めるから、ちょっと離れてて」
俺を振り向いてそう一言。
万一罠が発動したら危ないからか。
でも俺は……
「いいよ。やって」
冗談じゃない。
彼女がしくじったら、助けようが無いんだし。
そう返した。
彼女は俺の言葉を受けて、少し困ったような表情を浮かべ。
その後
「……あとで文句言っても知らないからね?」
そう言って。
嵌めたんだわ。
縦8、横3の位置に、3のパネルを。
すると
奥の扉が、ガコンッと音を立てて開いたんだ。
……まぁ、彼女のことは信じていたけど。
流石に少し、勇気が要ったかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます