0|苦しみは今も
人通りの多い渋谷のスクランブル交差点。
人の話し声や広告の音、車の音が混ざる。
春のよく晴れた空の下を、ひっきりなしに人が通行している。
そんな中、植木に寄りかかりながら何もないはずの空間に話しかける男がいる。
そいつは突然、誰も気づくことがなかった真実を口にする。
「なあ、死神くん。君、僕だろ」
小さく下を向く。
「……ああ」
小さな返事を返す。
「そうだ。俺は、佐原蓮だ。なんでわかった?」
「理由は色々あるよ、証拠集め、たくさんしたからね」
俺の首あたりに人差し指を向ける。
「でも、何よりも証拠になったのは、その声だ」
「死神」ではない、俺という「人間」を証明する。
声か。意識したこと無かったし、気づかなかった。
「君の声は、声変わりしたばかりの特有の音だ。そしてその声は僕によく似ている。普通は声変わりの最中、咳をするからよく分かるんだけど、死神くんはそのまま時間が止まってるみたいだから、咳もしないんだよね?」
「へぇ、よくわかってるな。自分のこと」
「君のことが興味深くて、ずっと調べてたからね」
こいつは、昔からそうだ。知ることが好きで、徹底的に対象を調べあげる。その上生まれながらの頭脳の良さを持ち合わせているいわゆるギフテッドだ。
知るためなら、暴くためなら、その力を存分に使う。
「そうか。…よかったな。お前は、平穏に寿命を迎えて死ねる。俺の事を見抜いたおかげだ」
仄かに笑んだ。ずっと、この瞬間を待ってたから。
「どういうこと?」
「お前の魂は、何度も生まれ変わりを繰り返してきた。俺の仕事はお前達生まれ変わりの魂を正体がバレるまで元の時代に運ぶこと。そういう条件の下で成立した契約だった。俺は、契約を結んだつもりなんてなかったけど」
俺は死神になる前、少年院の檻の中で過ごしていた。でもある夜、死神と名乗る男が俺を死神にした。
一人目の生まれ変わりがまだお腹の中にいる時、母親が子守唄を歌っている状況から俺の死神としての人生が始まった。
初めは何が何だかわからなかった。
いつの間にかローブを纏っていたし、母親に俺は認識されていないみたいだったから。
「あのお腹の中にいる赤ちゃんが君の生まれ変わりだ。どんな気分だい?」
死神の男は生まれてすらいない子を俺だと言った。
「おい、なんだよこれ。…腹の子が俺?……違う…だって俺はここにいる!」
「混乱しているねぇ。残念だが、姿、形、声、全部君と同じだ。性格とか細かいとこは環境が違うからなんとも言えないけどね」
「……あいつは、幸せになるのか?」
「さあ?それは運命次第だけど。でも、唯一君も生まれ変わりも幸せになるとしたら、生まれ変わりが君を佐原蓮だと言い当てた場合だ」
「なんで」
「死神は正体バレたらその生まれ変わりの代で終わり、そう決まってるんだよ。で、生まれ変わりは老衰で人生を終えることができる。最後の生まれ変わりだからね。気づけなかった子は不幸な死が多いだろう」
「途中で俺がこいつに正体を言った場合は?」
「ああ、その場合は、規約違反で君は誰もいない真っ暗な世界に閉じ込められて永遠に出られず、死ねず、その世界を放浪することになる」
「なんだ、規約違反って」
「君が死神に転生した時点で契約が成立してしまっていてねぇ」
「俺は契約したつもりなんてない」
「残念ながらもう決まってしまったことだ。まぁ、いい勉強になるさ」
「おい!」
「じゃ、また聞きたいことあったら呼んでね」
そう言って、消えてしまった。
しばらく立ち尽くしていた。
男と同じようにフードを深く被った。
暗黙の了解とやらを感じたから。
そして、フードから透けて見える一人目の生まれ変わりを見つめた。
これからは、あの子を見守りながら生活するのか。
一人目の生活を静かに観察した。
生まれてくるまでは暇だったので学校の授業を聞くことにした。少年院にいる時、ずっと行きたいと思っていたから。
始めは理解できないことが多すぎて、子供ってすごいんだな、と感心したのが懐かしい。
三十人目くらいの時には難なく解ける問題が多くなって嬉しかったのも覚えている。
何人も、生まれ変わった自分を見続けてきた。
親とも、兄弟とも違う、ただ見守るだけの存在。
それが、死神としての人生。
死神の男は度々呼べばすぐに来てくれた。
「んもぉ、人遣い荒いなぁ蓮くんは…で?どうしたんだい?」
ぶつくさ文句は言うが、満更でもないようだった。
暇な時の話し相手にちょうど良かった。
生きていた俺はどうなっているのか、とか、生まれ変わりのこととか、わからないものは全部聞いた。
その男の話によると、少年院にいた俺はショック死扱いで、もうこの世にいないらしい。魂も俺のものを使っているから、死神としての魂は存在していないと言う。
生まれ変わりの仕組みは、一人目の生まれ変わりが誕生した時代からスタートし、生まれ変わりが死んだらまた一人目が誕生した時代まで戻るらしい。
「んー、例えば、生まれ変わりが二十歳で死んだとしよう。その場合は二十年前に時代が自動で戻る。リセットされるってことだね。わかりやすい形式だと、サイクルしてるって感じだ。」
人差し指をくるくると回し、空中に円を描く。
「……はぁ。」
「制限時間あるから、生まれ変わりが死んだら放置しないで直ちに大鎌で魂を回収してね。それが死神の仕事。……わかったぁ?」
にこやかに聞いてくるのに申し訳ないが
「……いや?わからない」
ややこしくて理解するのに時間がかかった。
「制限時間ってなんだよ」
「うーん、私も試したことないからわからないのだけど、神様が言うには魂が腐ってしまうらしくてね。腐ると二度と生物にできないみたいなんだ。腐らせると規約違反と同じ扱いをされるようだよ。ちなみに制限時間は百六十八時間、つまり一週間以内だ。仮に今の生まれ変わりの子が死んでしまったとしよう。そしたら周りの景色が灰色になる。灰色の世界になれば私たち以外の時間が止まるんだ。それから一週間以内ってことだからね。」
「そうか」
「僕は、何人目?」
目の前にいる生まれ変わりが問いかける。
「ちょうど百人目だ」
「百人か。君は含まれないのか?」
「俺はオリジナルと言われてる。百人は生まれ変わりの回数だ」
「そうなんだ」
「少し歩こう」
俺は目的地も決めずに歩き始めた。
「別にここでも話はできるじゃないか」
「ここだと人が多すぎる。お前、変な目で見られてること、少しは気にした方がいいぞ」
「えぇ、僕、結構見られてたの?気づかなかったな」
「今もだ。そうやって話し続けるならイヤホンでもしてろ」
「ん?なんでイヤホン?」
「電話してるように見えるだろ」
「おぉ、頭いいね、さすが死神くんだ」
こいつは頭がいいのに興味のある対象以外に関心が無さすぎる。
「お前は人の目を気にしなさすぎだ」
しばらく歩き、俺は無意識に閑静な住宅街に入っていたことに気がついた。
「……はぁ」
人気のないところを探してたせいで、無意識だった。大きくため息をつく。
小さな公園が目に入る。
ここは一度来たことがある、できるなら思い出したくない場所だ。
「まぁ、いいか」
「公園に、何かあるのかい?」
「……別に」
「その反応を見る限りはそんなことないと思うんだけど」
「気にするな」
公園の中に入り、ブランコに腰かける。正確には座ってるような体勢を取っているだけだが。
「…なぁ、死神くん。君の、オリジナルとやらの人生を聞かせて欲しい。」
そう言って、隣のブランコに腰を下ろす。
「やだ、って言ったら?」
あまり話したくない。
顔が自然と俯きがちになる。
「僕がしつこいの知ってるだろ」
「……聞いてもつまらないから」
「つまらない人生なんてこの世にはない」
顔が上がる。
真っ直ぐと見つめる澄んだ瞳があった。曇りも迷いもない。
こいつは言葉をよく知ってる。
表と裏が存在することも。隠された名前のない感情があることも。
それを知った上で、こんな綺麗事を言える。
それを、羨ましく思った。
「……いい話じゃない。胸糞悪くて、反吐が出るような話だ。」
「それでも君は、僕の人生の一部だ」
「その言葉、後悔しても知らないからな」
俺の親は、自称ゲイの男二人だった。
「自称」これは俺が感じたのではなく、そう公表しているだけで、中身なんかない建前の関係だったからだ。
俺は、母体を借りて作られた子供だった。
健康に産まれ、健康に成長した。四歳までは。
四歳まではベビーシッターに育てられた。温かい笑顔と体温をしっかりと感じ、物心着く頃には母親同然の存在になっていた。
リビングでしか過ごしたことがなかったけど、絵を描いたり、言葉遊びをしたり、たまにひらがなの練習をしたり、楽しかったことは覚えている。
けど、子供用のおもちゃも絵本も見たことは無かった。保育園なんて存在すら知らなかった。
シッターの顔も、もう覚えていない。
親は、金がないと言いつつ四年間ベビーシッターには金をかけた。その理由はあとからよくわかった。
突然シッターが来なくなって、俺は悲しかった。
親は、俺に優しい言葉なんかくれなかった。
「いやぁ長かった。四年だぜ?よく我慢したと思うわぁ」
「……?」
片方の親はハーフで、日本人離れした顔立ちだった。
あと一人の親は、会ったことがなかったから存在を知らなかった。
ハーフの方の親が俺と一緒に暮らしていた。
当時は理解できない言葉ばかり使っていて、何を言ってるのかわからなかった。
「本当はもう生まれた瞬間から犯したくてたまんなかったけど、下手したら死んじまうからなぁ」
「え…と……」
「蓮、今からパパとイイことしようなぁ」
にたぁ、と口が不気味な曲線を描く。
俺はその笑顔が子供ながらに怖いと思った。
シッターが向けてくれた笑顔とは真逆の印象だったから。
「い、いいことって、なぁに?」
「すぐわかるよ」
その後、初めて男の性器をくわえた。
くわえさせられた、が正しいのかもしれない。
気持ち悪い、よりも先に、何をしているのかわからない、と思った。
これの、何がいいことなのか、わからない。
親は、極度のペドフィリアだった。
親の性処理のために俺は作られたらしく、その日から何も知らない俺に拘束具をつけて奥の寝室に監禁し、毎日毎日意識が飛ぶまで性行為を繰り返した。
「蓮」
そう呼ばれるのが苦痛だった。
ある時は「おもちゃ」で何時間耐えれるか、試してみよう。
そう言っていくつも変なものを体に付けられて泣きわめく俺を見て楽しんでいた。
ある時は意識が飛んだ後どれくらいで目が覚めるのか、その後どれくらい続けられるか試してみよう、といった。
行為は三日続いた。死ぬかと思った。
性行為中に痛みで気絶しても、体内に注がれる液体が気持ち悪くて目が覚める。
目が覚めても、小さな体にねじ込まれるあらゆるものが痛くて、意識が途切れる。
その繰り返し。
痛くて、気持ち悪くて、毎日目を覚ましたくなかった。ずっと夢の中にいたかった。
親が食事や風呂でいない時は「おもちゃ」を体に付けられた。
何も食べずに、休憩もなしで。
死なない程度に水を飲まされて、死なない程度に呼吸を与えられる。
愛してる。その言葉になんて返せばいいのか知らないから、親が同じ言葉を返せと言うから、同じように俺もその言葉を繰り返した。
痛い。そう言って抵抗して大声で泣き喚けば、うるさいと殴られた。
それでも泣き止まないと、口にタオルを巻き付けられた。
生きていられるのは、親がリードを握ってくれてるからだった。
通常風呂は二日に一回しか入らせて貰えない。しかも監視付き。
食事は食べ残しみたいなものばかりだ。
そのせいで肌はボロボロになるし、髪も伸びっぱなし。毎日全身が痛かった。
これが日常になった。
小学校も中学校も、行けなかった。
出生届も、名前の手続きも、公式的な行政機関には一切俺は登録されていなかったようで、俺は世間に認知されなかった。
母体の女も、シッターの女も、親とグルだった。多額の金を積まれ、秘密を守ってくれればそれでいい。そんなことを言われたのだろう。それに釣られただけのことだった。
誰も、俺の存在を知らなかった。
傷が、一生消えない。
それは外傷以外のものも当てはまる。
寝室には、大きな姿見があった。
鏡で見る自分は、いつも親と同じ人間なのかと疑うほど、醜い姿だった。
そんな自分を見ながら、正常に人格が形成される方がおかしい。
全身あざまみれ、傷まみれ、体液まみれ、目は虚ろ、髪は女の子みたいに長いのにボサボサでベタベタ、筋肉なんてろくについてない皮と骨みたいな細い足と腕、あばら骨は浮き出ている。
服は親の使い古した白いワイシャツをワンピースみたいにして羽織ることしか許されない。
何度見ても、俺はみすぼらしくて、汚くて、気持ち悪くて、惨めだった。
シッターがいなくなってからは奴隷として育てられた。
気持ちいいね、いい子だね、可愛い、そんな言葉ばかりくれるわけじゃない。
その日の機嫌によって全く逆の言葉が出てくることもある。
無能、早く動け、下手くそ、汚ったな、他にもあるだろうけど。
可愛がられるために、どんな嫌なことでも受け入れて、自分じゃないみたいに振る舞った。子どもらしく、かわいらしく、歯向かわず、拒まないように。
そうすれば、少しだけ痛くなくなるから。そうやって、耐えるフリをした。
最初から、壊れていたのに。
十歳の頃、「ナイフ」というものを初めて見た。
それは、人を傷つけることができる道具だと。
「これ、気持ちよくなれるから」
そう言いながら、体の表面を何ヶ所も、何度も切られた。血が溢れて、ベッドのシーツは血塗れになった。
身体中の切り傷が熱くて、痛くて、でも手足はだんだん冷たくなっていって、苦しくて仕方なかった。
「いたい!痛い痛い痛い!これやだ…!やめて…!やだっ!」
体は親にのしかかられて手足も拘束されているせいで暴れることも出来なかった。
「うるせぇなぁ」
また、口にタオルを巻かれる
感じたことの無い痛みだった。
怪我をすると、痛い。
血が流れると、もっと痛い。
当時、怪我の認識はそんなものだった。
蹴られたり殴られたりのとは全く違う痛みを、その時初めて知った。
もう使って欲しくないな。
いつナイフを出してくるか、怯えながら過ごしていた。
いつの間にか十三歳になった。それは、親にとってはもう大人も同然の体で、都合が悪いことだったらしい。前よりも機嫌が悪い時が増えていた。可愛いなんて言わなくなった。
俺の身長は親より顔二個分小さいくらい。相変わらず細い体だった。
親は、それでも性行為をやめなかった。
いつの日か、暴力も前より過激になった。
子供の頃よりも頻繁に首を絞められるようになったせいで、首に濃い跡ができた。
腹を定期的に殴られたせいで少し体を動かすにも、呼吸をするにも痛かった。
タバコの火を押し付けられることが前よりも増えた。
酒を大量に飲まされてから行為をするようになった。
たまに薬を打たれるようになった。あまり症状が出ないように、少量。
幼少期よりも少し体が丈夫になっただけで、痛みは増える一方だった。
俺が使えなくなることの方が嫌だったらしく、どれも俺が死なない程度に、自分が気持ち良くなれる程度の量。
体がふわふわして、力が入らない、なんだか楽しい気分になる。酒も薬も、効果が続く間は俺もある程度楽だった。
朦朧とする頭を、意識が飛ばないように必死に保った。いつもより痛いという感覚が少なくて、逆に気持ちよくなっている自分がいた。
親もそれはわかっていたらしく、乱雑に扱われた。
首筋を始めとして全身を噛まれた。それすらも痛いとは感じないほど脳はおかしくなっていた。
行為が終わると、無気力感と吐き気が同時に襲ってくる。ろくに食べているものもないのに、胃液が食道を逆流してくる。誰も居ないのに大きな音が聞こえたり、得体の知れない何かが見えた時、帰ってきた親に泣きながら抱きつく。どうしようもなく怖くて好きでもないのに親にすがりつく。なだめてくれる時もあった。それでも不機嫌な時はストレスのはけ口として散々暴力を振るわれる。
頼れる人なんて、親以外にいないと思った。怖さを紛らわすことができるなら、誰でもよかった。
正常に育つことは無理だった。
「ゔっ…ぐ……」
腹を蹴られる。
機嫌が悪いのに、拒絶してしまったから。
床に横たわって呻き声をあげることしかできない。
「んー?気持ちいよなぁ?蓮」
また、蹴られる。何かが喉に絡む。目が見えない。痛すぎて、目を開けられない。
近くで聞こえる親の声が、怖い。
「なぁ?…聞いてんのかよっ!」
再度蹴られ、げほっ、と何かを吐いた。一瞬だけ、目を開けて吐いたものを見た。透明でも、白濁色でもなく、赤かった。
「…う、ん……蓮、これ、すき…」
高笑いする声が聞こえる。
小さく絞り出した声は、掠れていた。
口から出た液体が、血であることを知った途端に、気が遠くなる。
そろそろ、痛いという感覚も消えてくる。
鳩尾に何度目かの蹴りを入れられ、呼吸をするのが難しくなった。
いつの間にか気絶していて、また朝になれば蹴られて目を覚ます。
また痛みと気持ち悪さの伴う行為を受け入れる。
そんな日常が続くある日、いつか見たナイフを思い出した。
あれなら、親を痛めつけられる。
片足に付けられた拘束具は鎖状。
扉の近くにある杭とベッドまでの長さしかない。
俺はある程度の距離しか移動できない。
なら、利用するしかない。
「ねぇ、パパ?」
「あ?」
「今日はね、すっごく痛いの欲しい」
「珍しいなぁ。蓮からおねだりされるなんて」
「んふふ、良いこと思い出したの」
「へぇ?何されたいの」
「ナイフ…?っていうの?あれ、あれでいっぱい蓮の体切って」
「うっわ、お前も飛んだマゾだなぁ」
押し倒される。いつもよりも甘えてるフリをする。
ここまで、予想通り。
しばらくして、親がナイフを持ってきた。
小型の折りたたみナイフでもなく、通常の包丁でもなく、切れ味が良さそうなサバイバルナイフを。
「今日は可愛くおねだりしてくれたから特別に上等なやつだ」
嬉しそうに戻って来るそいつに、俺は自分の足に繋がれた鎖を使って転ばせた。
派手に転んだその体に一気に近づき、首に鎖を巻き付けた。
足一本ぐらい、どうにでもなれ。
ナイフで刺されることを考慮して、鎖がつけられている方の足だけでそいつの首を絞め上げた。
最初は暴れてあっちこっちにナイフを振り回していた。
でもそれも長く続かなかった。巻き付く鎖を取ろうと、自分の首を引っ掻き始めた。
力が抜けてきて、ナイフを手放した瞬間、俺はそれを手に取った。
結構重いな。でも、振るうにはちょうどいい。
筋肉がしっかりとついている腹に、俺はナイフを刺した。
一刺しじゃ死なないことはよく知っている。
だから、何回も、何回も、体が血で染まって、冷たくなるまで、刺した。
もう動かない。それを確認してから拘束されている鎖の鍵を探した。足は無傷だった。
鍵は今殺したやつの服のポケットに入っていることは知っていたから、時間はかからなかった。
カチャッ、と鎖が取れた瞬間は、なんとも言えない感覚だった。
ずっと、こんなものに繋がれてたのに外れる時はこんなにもあっさりしている。
濃く残った足首のあざを数回さすって立ち上がった。
「風呂……」
達成感はなかった。
満足感もなかった。
呆気なく終わった事実に、ただ、空虚が残った。
シャワーを浴びた後、部屋を見渡した。
死体が床に落ちてて、いつも閉め切られているカーテンの隙間から、陽の光が漏れてる。
ベッドがいつもよりも大きく感じた。
ただ、それだけ。
長く腰まで伸びていた髪を切った。さっき殺したナイフで。ハサミよりも使い方がよくわかっていたから。
いつも着ていたワイシャツを脱いで綺麗な服を着た。さっき殺した男の服。
結構でかかったけど、俺がこいつに買ってもらった服は一着もないのだから、仕方ない。
ワイシャツと、ジーパン。
どちらもダボダボだから、まくりあげた。
カーテンを開いた。夕方に差しかかる手前の黄色い陽光が眩しく部屋を照らした。
外って、どんな場所なんだろう。押し殺されていた外への興味がようやく湧いてくる。
靴という存在を忘れていたせいで、裸足のまま外に出た。
外に出たのは監禁されてから十年後のことだった。
マンションの一室だったことを初めて知った。
目の前は見たことがない景色だった。
階段も、エレベーターも、見たことがない。というか、多分忘れていた。
それでも何とかしてマンションから抜け出した。
住宅街だった。
あまり人も車も通っていない道路にでた。
文字なんて、触れる機会がなかった。だから、そこら中に書かれた漢字やカタカナ、ひらがなすら何を意味しているのかわからない。
ふらふらと歩いていたら、小さな公園に着いた。
遊具が興味深かった。
ブランコに座ってみる。
どうするのが正解なのかわからないから、ただ座り続けた。
空は黄色く、夕暮れの時間を示していた。
「ねぇ、何してるの?」
「……?」
「だ、大丈夫?」
「ん…?」
小首を傾げる。
話しかけてきたのは、同い年位のセーラー服を着た女の子。
「え、と…言葉、わかる?」
こくり、と首を縦に振る。
「じゃあ、自分の名前は?」
「……れん」
「そう、どこから来たの?」
「わかんない…」
「そっか…」
少しその子は考える素振りをして、こう言った。
「蓮、私に着いてきてくれる?」
手を差し伸べられる。
綺麗な手だった。
どうするのが正解なのかわからない。
いつも掴まれてばかりだったから。
「……うん」
手を、重ねた。
連れてこられたのは、近くの交番だった。
「ここは安全な場所だから。私はここまでしか付いてあげられないけど、もう大丈夫だからね」
「…うん」
「私、広瀬里奈。もしまた会えたら、もし覚えてたら、私の事呼んでね」
少女は、そう言ってどこかへ行ってしまった。
俺は警官に取り調べ室へと案内された。
「君、名前は?」
「蓮」
「お父さんとお母さんの名前はわかる?」
「……パパしか、しらない。名前、わからない」
「どんな人かな?」
「髪が金色、おっきい」
「そっか。…うーん」
「あのね、蓮、今まで部屋にいたよ」
なるべく、声のトーンは下げないように話す。
「部屋?」
「うん。段がいっぱいあった。それ降りるの大変だった」
「段…?階段…のことかな?」
「わかんない」
警官はスマホで何かを調べ始めた。
「階段っていうのは、こういうやつ」
「うん、そう、これ。降りてきた」
「そうか、どれくらい降りた?」
「いっぱい」
「そうか、疲れたな」
「ここ、なに?わからない」
「もしかして、外国から来たのか?」
「がいこく…?蓮は、ずっと部屋にいたの。ちっちゃい頃から」
子供っぽく、可愛らしくする。
「他に一緒に住んでる人はいなかった?」
「いない」
「良かったら、一緒にさっき居たところまで案内してくれる?」
「うん」
うろ覚えな道を辿って、ようやくさっきまで監禁されていたマンションに着いた。
もう夜に差し掛かっていて、深い青色の空だった。
「金持ちの家みたいだな……」
管理人に話をつけたらしく、オートロックの鍵を開けてもらった。
エレベーターは使わず、階段を昇った。
二十階分の階段を。
「ここ、蓮のいた部屋」
警官二人は疲れながら、扉の前に立った。インターホンを鳴らすが、誰も出るはずない。
扉を開ける。玄関から洗面台の前を通り、寝室の扉を開けると、そこには死体が転がっている。
「っ…!本部に連絡してくれ!」
警官は死体を見た瞬間、もう一人の警官に指示を出した。
「はい!」
「蓮くん、これは、誰がやったかわかる?」
目線を合わせながら警官が俺に問いかける。
「……」
「蓮くん?」
「俺だよ」
フリを、やめた。
「え…?」
「だって、気持ち悪いんだもん。俺より気持ち悪い」
「蓮くん、だよね…?」
「そうだよ」
「さっきと雰囲気が…」
「うん。あれは、殴られないためにしてたフリ。お兄さん、ここ来ても殴らないから。」
「俺は、これだよ」
俺は真顔で告げる。
警官の顔は、恐怖に染まっていた。
そこから警察の取り調べを受けた。
今までの経緯を、何も隠さず話した。
自分のことを「蓮」と呼んでかわいこぶってる時のあれは二重人格ではなく、ただの演技だと言うことも。なぜそんなことをする必要があったのかも。いかに自分の親が酷い人間だったのかも。
警官から聞いた。俺の家のことを。
普通の人じゃなかなか住めない高級マンションだったこと。あの部屋は防音で全く音が漏れなかったこと。親のパソコンに、俺のビデオが大量に保存されていたこと。そのビデオがインターネットで高額販売されていたこと。もう一人の親は、別の家に住んでいて、俺のことは何も知らず、ハーフの親がずっと居候しているだけだと思っていたこと。
もう一人の親の苗字が「佐原」だということ。
たくさん聞いたし、聞かれた。
日本は、精神的な病気がある場合、不起訴になるらしい。いくら残虐な犯罪を犯しても。
けど、俺に精神疾患はないと鑑定された。
意識も、精神も、ある程度正常。そう医者に判断された。
医者は見たはずだ。
切り傷、痣、内臓の傷、痩せた体を。
薬の後遺症で幻覚や吐き気も日常的に起こっていたのに。
肉体も、精神も、こんなにもボロボロで、壊れていたのに、殺人罪で起訴された。
演技だと言わなければ、病気だと診断されたのだろうか。
虐待されることが普通だと思ってしまったから、正常なのだろうか。
それとも、大人にとって俺は、都合の悪い存在だったのだろうか。
裁判の時、罪の意識はあったのか、どうしてあそこまで酷い殺し方をしたのか、と問われた時、俺はわからないとしか言えなかった。
道徳、罪悪感、常識、知識、良心、人として欠落しているものが多すぎた。
判決は、七年間の少年院送り。
少年院は快適だった。美味しい食事が用意されて、ちゃんと風呂にも入れて、何も心配せず檻の中で睡眠が取れる。望めば本を用意してもらえた。
本は、知識をたくさんつけられた。
知らなかった言葉も、文化も、モノも。全部がきらきらして見えた。何もかも、この世にはないすごいものなんだと、憧れるものばかりが記されていた。
そんな時、死神を名乗る男が現れた。
もう十五歳になっていた。
トントン拍子でいつの間にか俺は死神になった。
一人目の生まれ変わりのことはよく覚えている。
赤ちゃんだった一人目はやがて成長して、言葉を話すようになった。
俺も一緒に言葉を学んだ。
一人目の親はとても温かく、優しかった。
どんなに覚えが悪くても、根気強くたくさんのことを教えた。
学校の課題も、遊びも、常識も、運動も…時間が空けばいつもそばに両親がいた。
ダメなことはどうしてダメなのか、暴力ではなく言葉で伝えた。
俺は、近くで一人目を見ているのが好きだった。
同じ姿だから、自分が両親にそう接してもらえてる気分になれた。
歳を重ね、一人目が中学生になるといじめが始まった。
一人目を見るのが嫌になった。
自分がされたことを思い出すから。
自分の過去が、また繰り返されてる気がしたから。
いつしか一人目は死にたがるようになった。
なぜ死にたがるのか理解できなかった。
親は変わらず優しい、可愛い妹もいる、手を差し伸べてくれる同級生もいた。
なのに、人生を捨てたがった。
恵まれた環境を用意したのに。
俺の監禁生活よりも楽なのに。
いじめられている時間は、俺が監禁されていた時間より短いのに。
いじめてくるくだらないやつらのために死にたいと思うことが、どうしようもなく苛立った。
二人目も、三人目も、それ以降の生まれ変わりも、皆死にたがった。俺に殺してくれと乞うようになった。
自分から死ぬやつもいた。
時々どうしようもない状況で事故や病気で死んでしまうやつもいた。でも、圧倒的に俺に死にたい、と首を差し出してくるやつの方が多かった。
大きな疑問が生まれる。
今の、死神になった俺からの疑問だ。
「俺と全く同じ体験を、したことがあるのかよ」
自分の手を強く握りしめ、大粒の涙を、いくつもいくつも流しながら、そう呟く。
百人目の生まれ変わりは、ただ、静かに耳を傾ける。
「言葉なんて、死神になるまでほぼ知らなかった。
俺が何で親を殺さなければいけない状況だったのか、誰も知らない。
死神になる前、知識を持っていればありのままの真実を伝えられたはずなのに。
言葉を知ったから、生まれ変わりに付きまとうだけの人生を心底恨んだ。誰も俺の人生を調べてくれない。知ろうとしてくれない。そんな俺とは裏腹に、生まれ変わりたちの人生は楽しそうだった。なのに、いつしか死にたがるようになった。
学校に行くという行為が、考えることができるということが、家族に愛されるということが、温かい食事を用意してもらえることが、友達がいるということが、自由に話せるということが、文字が読めるということが、呼吸ができて、生きることになんの不安もないということが、この国の人間としての普通なんだって…それを、痛いほど感じた。
一人目も、二人目も、それ以降の生まれ変わりも、みんなみんな、俺よりもいい環境にいる。
普通の中にいる、ちょっと不幸な人達だ。
いじめだって、精神病だって、毒親に育てられたって、いつだって、逃げるための選択肢はあった。なのに、揃いも揃って皆死ぬ方に逃げた。例外もいたが、犯罪に逃げるやつもいた。
生まれ変わりの人生を見る度、羨ましい、代わって欲しいって、いつも思ってた。俺の方が、もっと上手く人生を歩める、って。
ずっと、生まれ変わりを見るのが辛かった。
今でも苦しい。
お前が俺であることが苦しい。
俺には選択肢なんてなかったのに。
奴隷として生まれた俺に、信頼関係なんてものは無かったから。一般的な望まれて生まれた子どもとは、違うから。
監禁生活から逃げても、誰かが助けてくれる保証なんてなかった。警察なんて知らなかった。児童相談所なんて知らなかった。電話なんて知らなかった。部屋の外の世界なんて、知らなかった。
あの部屋が、俺にとっての世界だった。
死ぬことも、逃げることも、考えることすら許されなかった。
俺は「普通」を知らないのに、「普通」に過ごしている生まれ変わりはみんなどこかで死にたがる。みんな、大人になる前に死んでいった。
俺は、殺されかけてばっかりだったのに。
死にたいなんて監禁されている時は思えなかった。今、生きるか死ぬか、そんな時間を長く過ごしすぎた。
十五年間、普通に生きることは否定されてきた。
生まれ変わりが死にたがる度、腸が煮えくり返るほどの憤りを何度も何度も感じた。
一番惨めだったのは、死にたかったのは、俺なのに。」
死神の男が言った。
俺自身が救われることはないと。その言葉の意味をよく知った。人として、生きることも死ぬことも許されない。
これじゃあ、生きてる時と変わらない。
約千五百年の間、同じ時代に魂を繋ぎ続けた。
生まれて、生きて、死んで、戻って、生まれて、生きて、死んで、戻って……。
気が狂いそうだった。
本当はずっと、言いたかった。伝えたかった。誰かに、俺の人生の全部を聞いてほしかった。
誰も知らない真実を、知って欲しかった。
「……君は、僕ら生まれ変わりの原点だ。百人分の痛みを、君はたった一人で経験したんじゃないか?」
隣に座る生まれ変わりが続ける。
「辛かったね。警察に話したのに正当に裁かれず少年院に送られて、死神になってもずっと独りだったんだね。君の過去は僕がちゃんと聞いたよ。絶対に忘れたりしない。約束する。
生まれ変わりの話は、僕もその一人だからなんとも言えないな。
辛い経験なんてみんなするし、その度合いは人によって違う。受け取り方だって人の数だけあるんだ。
精神的にも、肉体的にも、自分の痛みは知ってたのに他人の痛みに関しては無知だったんだな、君は。
その人にはその人の痛みがあるんだ。それは誰も測ることが出来ない。
他人の痛みを理解できないのは自分の尺度で測るからだ。だから生まれ変わりの僕らにそんなに苛立っていたんじゃないか?
百人分の人生を見てきたなら、十代の人が元の時代に戻っているのだとしたら、千五百年以上は軽く生きてるはずだ。
長く生きていれば、色んなことを学ぶ。今の君ならわかるだろ?耐えられる器の大きさはみんな違うってこと。」
「……ああ」
自分の人生と同時に、死神になってから感じていた生まれ変わり達への嫉妬も羨望も、全て吐き出してしまった。
「悪い。俺がお前らに思ってることは言わない方が良かった。」
「僕は、君の全てを知るつもりだったんだ、何も悪く思う必要なんてない。それに、君が救われないだろう?」
「別に過去の俺が救われたわけじゃない。ただ今の苦しみが少しだけ軽くなっただけだ。」
「……確かに君の人生、死神じゃない人間としての人生は、とても酷いものだ。
現代で起きた話とは、到底思えないほど。
親を殺したくなるのも、自然なのかもしれない。」
驚いて目を見張った。今まで、共感されることなんてなかったから、驚いた。
「…そうなのか?……そうだとしたら、俺が親を殺したことは、間違いじゃなかったのか?」
人を殺してはいけない、傷つけてはいけない。
そんなこと教えてもらわなかった。
ただ与えられる痛みに必死に耐え続けた。
「俺は、間違えてなかったのか?」
「さあ?それは僕でも悩む問いだ。どんな理由であれ、人を殺してはいけないと法律上決まっているからね」
共感はしてくれても、やはりこいつは中立を保つ。法律を出されたら言い返せることは無い。
……きっと正しい答えはない。
どうすればよかったのか、今でもわからない。
俺より酷いやつを、見たことがないから。
生きている時の俺は、どうするのが最善だった?
一生死ぬまで耐える?
いつか殺されるのを待てばよかった?
悶々とまた考え込んでいた時、突然目がくらんだ。視界が明るい。何が起きたか一瞬理解できなかった。
フードを、めくられた。
生まれ変わりに顔を見せるのは、こいつが初めてだ。
「ははっ、やっぱり、君は僕だ」
きっと、過去のことでも性格のことでもない、容姿の話だ。
「……あたりまえだ。俺は、お前なんだから」
「いいや、当たり前じゃない。君を死神にしたもう一人の人物に感謝しないと。僕はここにいなかったはずの存在だ」
それに…と、続ける
「僕は、君と同じ体験はできないが、一緒に可能性を考えることはできる。僕らは似てるんだ。だから、君は僕なんだよ、死神くん」
考えるの、君も得意だろ?そう付け足す。
今、俺はどんな顔をしているんだろう。
バカみたいにほおけた顔だろうか、涙でぐちゃぐちゃの顔だろうか、それとも、笑っているのだろうか。
長くフードを被っていたせいで、自分の表情なんて気にすることがなかった。
俺の考えを察するように、口が開く。
「今、君はとても人間らしい顔をしているよ。死神とは、程遠い」
また、涙が流れた。
「そうか」
フードは被り直さなかった。
もう、こいつ以外に顔を見せることは無い。
百人目がブランコから立ち上がる。
そして、俺の目の前に立った。
「死神くん、僕は君と生きるよ。何不自由なく死ねるのなら、一緒に人生を楽しみたい。最後なのだろう?君も、僕も」
最後。
そうだな…確かに、お前で最後だ。
手を差し出された。いつの日かの記憶が、また蘇る。
答えは、知っている。
迷うことなく手を重ねた。
「一つ、頼みたい事がある。お前にしか頼めない。」
「お?なんだい?期待してしまうね」
「広瀬里奈と会ってくれ」
「なんでだい?」
「広瀬がもし、今近くにいるなら広瀬と結婚して欲しい。」
半分冗談も混ざっている。
結婚まで行かなくても、会ってくれるだけでいい。
案の定、露骨に嫌な顔をされた。
「……えぇ」
「嫌そうだな。でも、多分お前のタイプだ」
「なんで僕のタイプ知ってるのさ」
「そりゃあオリジナルだからな、俺」
「……会ってから考えるよ」
「煮え切らないな」
「生憎、僕は妻を勝手に決められたくないものでねぇ」
「大体の生まれ変わりは会ったら付き合うか惚れてたぞ」
「…………」
「まぁ、惚れてなくても向こうからアプローチされることもあったな」
「……そんなことだろうとは思ってたけど」
桜が舞う。いつかのあの日とは、何もかもが違う景色だ。
同じ時代を生きているはずなのに、不思議だ。
「生きてくれるんだろ?俺と、最後まで」
呆れ顔から、笑顔に変わる。
「もちろんだ」
手を引かれる。
人気のない小さな公園のブランコから、立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます