神之原祈音の憂鬱②

「え、御兄様?私、初めて聞いたよ?」

「それは祈音が覚えていないだけだよ」

「うっ…」

ニッコリ笑顔で毒を吐く御兄様。

「…話を続けますね。今代当主である私を筆頭とした、神之原一族で話し合いをした結果、皆様方が相応しいとなり、この場所に集めさせていただいたのです」

「え?御兄様、私の意見は…?」

「…?祈音はそもそも知らなかっただろう?」

きょと…とする御兄様。

これほどまでに勉強をサボった過去の私を恨む事は無いだろうな……。

「僕は全然構しまへんよ。こないな可愛らしい女の子ぉ妻に出来るなんて、僕は凄い幸運の持ち主どすなぁ」

扇で口元を隠して微笑む、透き通った水のような髪色の人。

「ボクもだよ〜」

他の人達に比べ、だいぶ小柄な人が言う。

「僕は…兄様が幸せなら、それで…」

「ふふ、樂は優しい子だね」

「兄様…!」

兄様、と語尾にハートマークが付きそうな位甘い声を出す、弟らしき人。

兄らしい人も、よしよしと弟を撫でる。

2人とも、髪が燃え盛る炎のように紅い。

朱朔院すざくいんの双子は、いつまで経っても兄弟離れが出来ねェんだな」

ハッ、と嘲笑する黒と赤髪の人。

「…智溟ちうみ大虎やまと殿、口は慎んでもらいたい」

ギロリ、と睨む、朱朔院と呼ばれた兄らしき人。

「こらこら、2人とも。ここは他所様の御屋敷どすえ。喧嘩は止めたらええのに」

すいさんの言う通りです!喧嘩はダメですよっ!」

「曾根崎はんもおんなじ意見どすか?せやったら良おすなぁ。音憂ねうはん、話を再開しとぉくれやす」

「…かしこまりました。祈音、誰を本夫ほんぷにしたいか決めてね」

「ポン酢?」

「ほんぷ、だよ。正妻の夫版さ」

「いや、まだ名前も聞いてないし…」

そう呟くと、御兄様は「そっか」と言った。

「では皆様、簡単な自己紹介をお願いします」

「あ、じゃあ僕から!僕は曾根崎緋兎ひと!一応兎を司る神様の子孫だよ!好きな物は兎のぬいぐるみ!よろしくね、祈音ちゃんっ!」

「あ、はい…」

元気だなぁ……。

「ほな、次は僕で。僕は瑞佳みずかわ翠どす。水神の血ぃ流れてます。…あ、ちゃんと水神として継いでますで?祈音はん、僕を本夫にしとぉくれやすな。ほな、よろしゅうおたのもうしますなぁ」

なんか…妖しい……!!

「次は智溟はんどすえ」

「あ゛ぁ?…チッ、オレは智溟大虎だ。鬼神族の次期当主。仲良くはしねェからな」

怖……。

「じゃあ次、ボクが行くよ。ボクは藤原弥都みいと。4つ下…15歳の妹が居るんだ。よろしくね、祈音ちゃん」

爽やかイケメン…。

「樂、先にお言い」

「兄様…!」

お互いブラコン?この双子。

「コホン…僕は朱朔院樂。火の神を司る神の子孫です。…ささ、兄様!次は兄様の番ですよ!」

「うん、分かったよ。私は朱朔院こう。僕の式神は朱雀だよ。祈音さん、よろしくね」

式神が四神獣の朱雀…!?余程の霊力の持ち主なのね……。

「じゃあ次、祈音だよ」

「私!?」

「当たり前だろう?皆様が自己紹介されたのだから、祈音もするのが礼儀というものだよ」

「えぇ……?」

いきなりそんなこと言われても…。

「うーん……。…神之原祈音です。好きな物は、ばあやの作るわらび餅。よろしくお願いします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

八百万の神々に愛されし少女は天帝遣也 中太賢歩 @YAMI_SAKURA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ