第2話 ドラゴンに興味深々


「ところで君って女なの?」


「いや、ドラゴンだったらメスか。

 …メスなのか?」



タカツグはヴァレンに素朴な疑問をぶつけた。


ヴァレンは一瞬、目を見開いた。



「え?あ、あの…」



彼女の顔が赤く染まり

口元をもじもじと動かした。


その様子は、彼女がドラゴンであることを

忘れさせるほど人間らしいものだった。



「うーん、まあ…私は…」



ヴァレンは口ごもった後

急に大きな声で言った。



「ドラゴンには性別なんてないんだよ!」


「だから…そんなこと気にしなくて

 いいんだぞ!」



その声は少し震えていた。


少しして、ヴァレンがタカツグの目を

じっと見つめると

不意に笑みを浮かべた。



「私は、君にとってどんな存在でもいいさ。

 男でも女でも、ドラゴンでも人間でも」



「おー!ドラゴンって性別ないのか!」



それを聞いたタカツグは興奮して叫んだ。



ヴァレンは、タカツグの興奮に

少し驚きながらも

得意げな笑みを浮かべる。



「そ、そーなんだよ!」


「ドラゴンには性別なんてないんだ!」


「火を噴くのが好きで

 翼で空飛ぶのが好きで

 私はただのドラゴンなんだ!」



(空を飛ぶどころか

木にも登れてなかったじゃん)


タカツグは心の中で呟いた。



ヴァレンは一歩近づき

タカツグの顔を

覗き込むようにして続けた。



「でも、この姿でいると…なんだか

 人間の気持ちが少しわかる気もする…

 けど、性別って大事なことなの?」



ヴァレンの目はふと遠くを見つめる

その表情にはドラゴンとしての誇りと

人間としての戸惑いが交錯していた。



「でもさ?性別がないんだったら

 君たちはどうやって繁殖してるのさ?」



タカツグの素朴な疑問は続く。


ヴァレンは一瞬、目を丸くして

驚いた表情を見せたが

すぐに口元を緩めて笑みを作った。


彼女の長い灰色の髪が、そっと風に揺れる。



「そんなこと気にするなんて…」


「まぁでも、面白い質問だね」



ヴァレンは空を見上げて、こう続けた。



「ドラゴンは魔法で子供を作るんだよ」


「特別な魔法の力を使えば

 性別なんて関係ないんだ」



そう言ってヴァレンは一歩近づき

タカツグに視線を向ける。



「人間みたいに、愛情とか絆が絡むと…

 ちょっと複雑そうだよね」



ヴァレンの声にはどこか人間らしい

感情が混じっていた。



「まあ、そんな話より!」


「今度は冒険の話でもしようよ?」



ヴァレンは両手を振りながら

元気よく言った。



「いや、まだ君にはまだ興味がある

 冒険なんかよりも」


「魔法で子供ってどう作るのさ?」



タカツグはヴァレンの提案を

即、断って質問した。



ヴァレンの頬に赤みが差し

彼女は少し困ったように

視線を逸らした。


彼女の長い灰色の髪が揺れ

その動きに合わせて

古びた龍の鱗のペンダントがきらりと光る。



「うーん...どう説明したらいいのかなぁ」



ヴァレンは指先で

ペンダントをいじりながら

少し考え込んだ。



「魔法を使って

 自分の生命力を分け与えるんだよ」


「ドラゴンの力を使って

 新たな命を創り出すの」



ヴァレンはそう言うと笑みを浮かべて

タカツグを見つめた。



「人間みたいに愛情とか絆が

 必要ってわけじゃないの。

 だから、ちょっと不思議な感じだよね」



ヴァレンの目が遠い昔を

思い出すように細まった。



「でも、君に聞かれてみて

 なんだかちょっと恥ずかしいな...」



ヴァレンは照れたように笑う。



「ふーん」


「ドラゴンは、てっきり口から卵を

 吐いて子供を産むのかと思っていた」



タカツグは素っ気なく言った。



ヴァレンは、口をぽかんと

開けて目を丸くした。



「え?そんな誤解してたの?」


「まあ、ドラゴンにも卵を産む

 種族はあるけど、私のような

 魔法を使う種族は違うんだよね」



ヴァレンは少し照れくさそうに

髪を掻き上げた。



「それに卵を産むのも、一苦労なんだよ」


「場所選びとか、温度管理とか…

 うーん、考えるとめんどくさいな」



突然ヴァレンの目がふと光り

にやりと笑い軽く飛び跳ねて

タカツグに近づきながら言う。



「そうだ!」


「次は人間のことをもっと教えてよ。

 人間ってどんな風に子供を作るの!?」




タカツグは冷ややかな目をして


「はぁ…人間の話はいいよ

 俺は知ってるし

 それよりもドラゴンの話をしよう」


と、ため息まじりに言った。



ヴァレンの目がぱっと輝き

彼女は両手を胸の前で組み

興味津々に口を開いた。



「ドラゴンの話ね!」


「うーん、何から話そうかなぁ...

 そうだ!私の鱗の話!

 きっと興味あるよね」



ヴァレンは首をかしげ

自分の長い髪を指で梳いた。



「鱗ってさ?」


「そのドラゴンの鱗で武器とか作れるの?」



タカツグは興味津々に質問する。



ヴァレンは目を輝かせ

両手を広げて話し始めた。



「うん!ドラゴンの鱗はね?

 すごく硬くて強力なんだ」


「武器に使えば、どんな魔法も

 弾き返すことができるよ!」



ヴァレンは灰色の長い髪を撫でた。



「でね、私の鱗は特別なんだ」


「私の鱗から作る武器は

 きっと見たことないほど

 強くて美しくなるよ」



ヴァレンは一瞬、遠くを

見つめるように目を細めた。



「でもさ?今のこの体じゃ…

 あの硬さや光沢のある鱗を

 感じられないんだよね...」



ヴァレンの声が少し寂しそうに聞こえた。



「でも、タカツグが興味を

 持ってくれて嬉しいな」


「もし戻れる日が来たら

 私の鱗で最高の武器を作ってあげる!」



ヴァレンは笑顔を取り戻し

タカツグに近づき頬を寄せてきた。



「おお、ホントに作ってくれるのか!」



タカツグはすごく喜んだ。


ヴァレンはタカツグの反応に

真紅の瞳を輝かせた。



「本当だってば!私の鱗は

 超すごいんだよ見せてあげたいなぁ…」


「って言っても今は体が

 違うからできないんだけどね」



ヴァレンは少し寂しそうに

髪をいじりながら顔を上げた。



「そうだ!私の吊り下げてるこれ」


「このペンダントは私の鱗で作ったんだよ」



ヴァレンは首にかけていた

龍鱗のペンダントを取り出し

タカツグの目の前にかざす。


灰色の鱗は、日光を受けて微かに輝いていた。



「触ってみて!」



ヴァレンの目は期待に満ちていた。


その表情には、自分がまた

ドラゴンに戻れる日を

夢見ている様子が垣間見えた。



タカツグは言われるがまま、

ヴァレンの鱗を触ってみる。


ヴァレンの顔がぱっと明るくなり

タカツグの手をそっと握り

龍鱗ペンダントを押し当てた。



「ほら、どう?」


「なんか特別な感じがしない?」



その鱗は冷たく

不思議と心地良い感触だった。


ヴァレンはまるで子どものように

興奮している。



「私の鱗、触ったことある人間は

 タカツグが初めてだよ!」



ヴァレンはやんわりと笑いながら言った。



「本当にこの鱗で武器を

 作ってくれるのか??」



タカツグはルンルンでヴァレンに聞く。



ヴァレンは目をキラキラとさせて

にっこりと微笑んだ。



「もちろんさ!」


「戻れたらすぐに作ってあげる。でも...」



ヴァレンは少し困ったように

眉をひそめた。



「まずは、私の力を解放する方法を

 見つけなきゃね。」



ヴァレンは不意にタカツグの手を握る。



「タカツグ手伝ってくれる?」


「もしかしたら一緒に冒険をすると

 何かヒントが見つかるかもしれないし」



ヴァレンの顔には期待と不安が混じった

表情が浮かんでいる。


彼女は時折、自分の手で

鱗のペンダントをいじりながら

どこか遠くを見つめていた。



「なぁーヴァレン?」


「ちなみになんだけどさ

 どんな武器を作ってくれるの?」


(武器種はなんだろ?竜の鱗かぁマジかぁ)



タカツグは嬉しくて舞い上がっていた。



ヴァレンの目が一層輝きを増し

彼女はゆっくりと立ち上がり

両手を広げて見せた。



「想像してみてよ、タカツグ」


「巨大な斧だよ!

 ただの斧じゃないんだ

 私の鱗で作った特別な斧だよ!」


「きっとどんな敵も一撃で倒せるよ!」



ヴァレンの声は熱を帯び、灰色の髪が揺れた。


あたかもその武器を手にしているかのように

ヴァレンは妄想の世界に完全に没頭していた。



「でも、その前に力を戻さなきゃね」


「まずは封印を解かないと...」



ヴァレンはペンダントを握りしめ

それから小さくため息をついた。


「はぁ…」



「でもね、私は必ず戻る

 ずっと待ってたんだ、この時をね」



ヴァレンはふわりと微笑み

再びタカツグに向き直った。



「斧…かぁ。そうか…斧なんだ…」



今にも消えてしまいそうな声で

タカツグは呟いた。



ヴァレンは目を細め、微笑む。



「そうだよ!斧が一番似合うと思ったの!」


「私の鱗から作るんだ

 きっとすごく強くなるよ」



ヴァレンは少し考え込むように

空を見上げた。



「でも、その前に封印を解かないとね。

 でも、どうやって…?」



突然、ヴァレンの目が輝いた!



「あ!思い出した!

 古代の魔法書があったんだった!」



ヴァレンは急に興奮して

タカツグを見つめる。



「タカツグー!」


「古代の魔法書を使えば

 何か手がかりが見つかるかも!」



ヴァレンの口元は笑ってはいたが

やはり不安げな表情は

隠しきれていなかった。



「でも…怖いんだ…」


「本当に力を戻せるかどうか

 自信がないんだよ…」


「でも、タカツグがいるから大丈夫だよね…」



ヴァレンは不安そうに

タカツグのことを見つめている。



「うんうん、手伝うのは約束する」


「でも、作ってくれる武器は…斧なの?」



少し不満げにタカツグは言う。



ヴァレンの目が大きく見開かれ

すぐに嬉しそうに輝いた。



「やったー!タカツグありがとう!」


「斧って決めたのは、私の力が

 一番表現できるからだよ」


「でも、心配しないで

 見た目はちょっと荒っぽいけど

 使いこなせばすごく便利だよ!」



ヴァレンは首のペンダントを

指でつまんで揺らした。


ヴァレンの表情が一瞬憂鬱そうになるが

すぐに元気を取り戻し、立ち上がって

タカツグの手を握った。



「さあ、行こう!

 古代の魔法書を探しに!」


「新しい冒険が始まるんだ。

 タカツグと一緒なら、きっと大丈夫!」



ヴァレンの声には不安が混じっていたが

目は確固たる決意で輝いていた。



「待て待て待て!そう焦るな…」


「作ってくれる武器は斧以外は

 出来ないのか?」



ヴァレンはタカツグの言葉に

戸惑いを見せた。



「やっぱり、でもね、斧って

 すごくカッコいいんだよ!」



ヴァレンはそう言い、一歩前に出て

タカツグの目をじっと見た。



「それにさ、斧は…」


「私の象徴みたいなものだから」



ヴァレンは小さく息を吐き肩をすくめた。



「でも、本当にそんなに

 気に入らないなら…他にも考えよう」



ヴァレンはちょっと困ったように笑い


「ね、一緒に考えてみようよ

 きっといいアイデアが浮かぶよ!」


と、元気に言った。




「君の鱗で作った武器って

 大きくなるとやっぱり重たくなるの?」



タカツグは心配そうに質問をした。


ヴァレンはタカツグの質問に

一瞬きょとんとした後

くすっと笑った。


「うーん、確かに…」


「重くなるかもしれないね」


「でも、私の鱗は特別だし

 力の源だと思うとワクワクするでしょ?」



ヴァレンの目が輝き

その瞳には夢見心地が浮かんだ。



「それに重くなってもは問題ないよ

 だって、私が運ぶから!」



ヴァレンは笑顔を浮かべて

得意げに胸を張る。


その仕草は少し可笑しなほど

子供っぽく見えた。



「ねー?どんな武器がいいだろ…

 やっぱりタカツグが決めてよ」


「私はタカツグが決めたものなら

 何でもいいから」



ヴァレンの声には少しばかりの

期待と不安が混じっていた。



「俺さ…大剣が好きなんだよね…」


なんとも言えない表情で

タカツグはボソッと呟いた。



ヴァレンは、タカツグが

大剣を選んだことに

驚きを隠せなかった。



「えっ!?大剣?うーん…、意外だね」


「でも、いいね!大剣もカッコいいし

 私の鱗で作れば、最強の武器になるよ!」



ヴァレンは考え込み指先で頬をさすった。



「でも、大剣ってデカいし重いからなぁ…」


「まぁ私が運ぶからね。なんたって

 タカツグと一緒に戦うんだから!」



ヴァレンは期待に胸を膨らませ

その場でくるりと回転した。




「でもさ…?キミが運んでくれても

 重かったら俺、扱えないよね?」


「結局、素手で戦う羽目になるくない?」



タカツグは…すっごく不安になった。

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2024年11月30日 17:00
2024年12月1日 17:00

ドラゴンから人間の娘になっちゃった?! ガバメント50 @gaver50

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